4.主な神社仏閣 (概要)


ここでは庄内地方の中でも弁慶山地に関係すると思われる神社仏閣を記す。と言っても筆者の勝手な思い込みによるものではあるが…

明治以前の人々の信仰には、現在の神道や仏教などと言うような明確に区別した概念は存在しなかったようだ。その証拠に殆どの村の神社と寺は、差別なく神仏習合として地域に受け入れられている。各家には神棚と仏壇が今でも並んで祀ってあるが、このことに抵抗を感じる人は私の住んでいる地域では少ないと思う。

山岳信仰にとって神社や寺は重要な要素であろうし無視できないものである。少ない数ではあるが実際訪ねてみると意外な発見もあったりするから面白い。
尚、以前に拙サイトにアップした「鳥海山麓漫遊」にも、弁慶山地とあまり関係ないものだが概要が記してある。


まずは何と言っても吉野沢(下青沢)にある鷹尾山宝蔵寺、鷹尾山信仰全盛の頃は、別の場所にあったというが、鷹尾山信仰の中心的寺であったと思われる。
この寺の現在の住職氏は地元の歴史家でもあり著書も多いと聞いている。


吉野沢宝蔵寺
小さいが立派な造りの寺院である



観音寺にある飛澤神社(とびざわ)は、かつては来生家の絶大なる庇護を受けていたと言う。現在の社務所の前の由来記には貞観十三年(871)創建とあり、豊受姫命、稲倉魂命、月夜見命の三柱を祀っているとある。何故飛澤大権現のことが書いてないのか不思議だ。

  
奥行きがあり立派な神社である


これは旧社の甍だそうな


生石にある延命寺は庄内でも有数の古刹であり古い板碑が多く残っている。鷹尾山信仰とも深く繋がっているものと思われる。
また、胎蔵界、金剛界の両界曼荼羅図がこの寺に伝わっている。ここの本尊は不動明王であるそうだ。
もっと書きたいことはあるのだが、詳細は後日にする。



旧平田町の海ヶ沢にある愛沢神社は、鷹尾山宝蔵寺の奥の院とされ愛沢大権現が祀られている。かつては鷹尾山信仰の中心であったと考えられるが、今はひっそりと小さな社が残るのみである。境内には樹齢400年ほどの大杉がそびえている。

  
今はひっそりとした愛沢神社本殿
しかも額が傾いてる(悲)



境内にあるなんか、おどろおどろしい板碑
愛沢大権現だろうか?



旧平田町新山地区にある新山神社は、かつて新光山最勝寺と呼ばれ開基は建長4年(1252)とされている。
かつては修験九坊があり新山大権現を祀り相当栄えたらしい。
かつての伽藍は焼失したが、愛沢神社との縁は深いものと思われる。ここも後日詳細を記すつもりだ。

  
長く急な石段の先には立派な社があった


かつて観音寺城があったすぐ隣の蕨岡には大物忌神社がある。ここは鳥海信仰の総本山と言っても過言ではない。
鷹尾山信仰には縁が無い気もするが、今後避けて通れないような気がする。


旧八幡町一条にある八幡神社も相当古いものと言われているが、八幡太郎義家公に由来するもので鷹尾山信仰との結びつきは少ない気がする。
近くに矢流川(やだれがわ)と言う集落があり小川が流れている。ここには流れ矢で片目を負傷した義家公が、この流れで目を洗ったら傷が癒え、代わりに川に住む魚全てが片目になったと言う伝説が残っている。


旧平田町飛鳥にある飛鳥神社も古い歴史を持つ。ここには飛鳥大権現が祀られている。
砂越氏とは深い関わりを持つのだろうが、山岳信仰にはあまり縁が無さそうである。


その他、各集落には必ずと言っていいほど神社と寺はあるので、きりがないのでこの位にしておくが、詳しく調べればもっともっと楽しい(汗)事実が分かってくるのかもしれない。


位置図を添付してみた。




素人の浅はかな考えではあるが、これらの位置をぼんやりと眺めていたら、鷹尾山というのは本当に不思議な山だなと思う。
今はゴルフ場になっているので私など出入りできる場所ではないが(ゴルフはしないので)、庄内平野の北端に近い場所で、里も近いのにゴルフ場が出来るまで開発されなかったのも不思議だし ( まあそれは共有地ゆえに所有権の問題もあったのだろうが…)
上杉が鷹尾山を滅ぼしてから、かつての大伽藍を再興しようと考えた者はいなかったのだろうか。もっともそんなことは、当時誰も恐ろしくてできなかったであろう…

また地図を眺めて改めて感じたのは周辺神社仏閣のほぼ中心に鷹尾山が存在することだ。当時そんなことを意図して神社を造った訳ではないだろうが、偶然にしては出来過ぎている気がしてならない。
また、東方には主峰弁慶山の前衛として胎蔵山や経ヶ蔵、太平山がある。太平山の頂には朽ちた社の残骸が残っているのを筆者は確認している。

史実を調べるのは困難だが、妄想は膨らむばかりで、寝ても覚めてもあれやこれやと空想する毎日である。

次回は少しだけ鷹尾山信仰について書いてみたいと思っている。



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