【中登隊、浅草岳偵察山行(敗退記)】


鬼ヶ面山展望台付近からの浅草岳 と まるちゃん

【日 程】2007年8月12日(日)
【山 域】福島県
【山 名】浅草岳(1585m)
【天 候】晴れ
【メンバ】二人
【コース】田子倉登山口→中先尾根途中→田子倉登山口
(概 略)


(8:00)田子倉登山口---(8:44)大久保沢水場---(10:40)中先尾根1100m地点---(13:12)登山口


早朝6:30の約束した時間の少し前に道の駅「会津柳津」の駐車場に着く。
入口に山形ナンバーの車があった。多分まるちゃんの愛車「テリオス号」であろうが中に人影はない。側に停めしばらく待つ間に何の気無しにホゲーと眺めていたら何と未だスタッドレスタイヤを装着してるのに気付く。
これは間違いなく豪雪で名高い残雪豊富な米沢の地から来たものと確信した。
実のところまるちゃんとは、一度偶然朝日の龍門から大勢で下った時しかお目もじしたことがなく、ご尊顔をはっきり記憶していたわけではないのだ。

待つこと暫し、ノッシノッシと何者かが近づく気配(ウソですf(^^;) )
素早く車から降り挨拶すると、何なんだこのオッサンは?と怪訝な表情ありありのまるちゃんでした(汗)
実は彼女も私の顔はうろ覚えで確信が持てないまま来たとのこと、そのまま防御体制をとる閑もなく、彼女の置賜なまりのマシンガントークの攻撃に遭う。
彼女は「置賜弁VS庄内弁」のバトルを期待してたようだが、残念ながら私は庄内の地を一歩出るなり関西系標準語会話の人となるのである。もうこれは生涯直せない癖となったので、まるちゃんの期待には沿えないのである。

ちなみに米沢からここまで1時間15分で到着とのこと、私の経路を聞いたら・・・???
絶対米沢経由の方が近いと言うことだった。(帰路確認するが…)
その後田子倉登山口までおよそ1時間のドライブ、山懐奥へ曲がりくねった道を延々と進む。

拍子抜けするほど閑散とした田子倉登山口では誰も先行した形跡がない。準備を急ぎ予定通り8:00きっかりに出発、のっけから話題が豊富で何を話したのか読者のご想像にお任せするが、賑やかないつもの中登隊山行と同じで拡声器を使ったような嬌声が山中鳴り響いた。

まるちゃんは山を始めた頃に浅草岳は制覇していると言う。そのときは中先尾根を詰め、入叶津口に降りたようで、今回も本当は周回したかったようだが、計画立案者(私)の無知故ピストンとなる。

登り出しこそ快調だったもの、樹林帯を抜けると恐ろしいほどの炎天で汗が大量に噴き出す。少しでも風があればずいぶん楽なのだろうが、残念ながらまったく持って無風ときたもんだ・・・(ゼイゼイ)
晴男の面目躍如は良いのだが、時と場合による。十分汲んできた水も次第に底をつき足が上がらなくなってきた。



途中唯一いっぱい咲いていた花


高度が上がり田子倉湖の眺めも良く、湖面を疾走する船の軌跡が涼しげだ。
見渡す山々もとてもクリアで、しょっちゅう歩を止めては、あの山は何と山座同定を繰り返すのだが殆ど山名は分からなかった。でも蒲生岳だけは確信を持って分かった。
まるちゃんは新調したバイザー(¥105+???)の使い勝手が良いと嬉しげ、でも、河童の皿を露出状態ではまずいのではと言ったら、手ぬぐいを"あねちゃかぶり"、
まあいっか・・・

痩せ尾根が現れ目指す浅草岳の山頂も見えてきた。喜び勇んで先を急ぐが気ばかり急くも足が着いてこない。もう直射日光を遮る樹木もなくジリジリと照りつける陽差しに恐怖さえ感じた。
鬼ヶ面山の展望台手前でほんの僅かな日陰を見つけ大休止、シャリバテで動けないとは誰かさんの弁、このまま登り続けても風が吹く気配はなく、更なる気温の上昇が予想される。当然熱中症のリスクがかなり大きくなる。

空身で少し登り展望の良いところまで行くことにした。先行していたまるちゃんが突然「ほぇ〜〜〜!!」と絶叫した。
続いて「かっこえぇ〜〜〜!!」とまたまた大絶叫。
すかさず「俺のこと?」と聞いたら
「・・・・・???」
・・・正直な子である。

その後に私もその場に辿り着くなり
「うぉ〜〜〜!!」と絶叫し立ちつくした。
正面にゴツゴツした鬼ヶ面山の岩壁がスンゴイ迫力でそびえている。その景色を初めて目の当たりにした私は暫く動けなかった。
鋸の刃のような稜線上には登山道が開かれ縦走できるそうだが、かなりの恐怖感を味わえそうで、猛暑のこの日には最適のコースのようだが、いかんせん遠すぎる。
光線の加減も良い感じで、歓喜の雄叫びを上げながら二人でしばらくの間バシャバシャと撮影に没頭する。



鬼ヶ面山のパノラマ


一段落して今後を協議、無理して熱中症になっても誰も褒めてくれないだろうし、登頂経験のあるまるちゃんによれば、上に行ってもこれ以上の景色は望めないとのこと、まして冷たい水場もないと聞けば、とたんに冷たいビールをゴクゴクやる自分の姿が頭に思い浮かんできた。
こうしてなんかいられない、一刻も速く檜枝岐のキャンプ場に行かねばならぬ。

中登隊は、暑さと冷たいビールにはすごく弱いのである。

そうと決まれば山頂になど未練もへったくれもあったものではない。冷たいビールのイメージを鼻先にぶら下げ、我先にと急登を駆け下りる中登隊であった。

「好天のため登頂を断念し敗退」というのは、我が登山史の中でも特筆すべき記録となるであろう。
まあ、これもまた楽し・・・

私にとって浅草岳は、またまた遠い遠い山となってしまったのだ。



鬼の足を上から・・・
わっかるかなあ〜?







その後およそ1時間を掛け檜枝岐村へ移動、ある程度想像してはいたが大した混みようで、やっとのことテントサイトを確保すると、温泉で汗を素早く流し待ちに待ったとおっても冷たいBeerで乾杯・・・、
五臓六腑に染み渡る超快感的瞬間であった。

檜枝岐の標高は1000mあり夜になるとかなり冷える。ふと見上げれば、手が届くかのように近い満点の星空がキラキラと煌めき、俗界のしがらみや殺人的な暑さを忘却の彼方に放り投げ、尽きることのない山談義に時を忘れ花が咲く。

それでもふと現実に帰り考える。こんな綺麗な星空では、きっと明日の平ヶ岳も、この日同様の暑くて辛い登行となるであろう。しかし最悪敗退でも仕方ないなと半分諦め、ええぃままよと冷たいBeerをガバガバ呑む。

この日、このとき、この瞬間は、今ここに身を置く者にしか感じられないものという、隊長得意のフレーズが頭をよぎる。
とても楽しく賑やかで、だんだん脳髄がアルコールと置賜弁訛りに侵されて行く夜の語らいは、いつ果てるかわからぬまま更けていくのであった。



続きを見たい人はこちら → 続き

戻りたい人は ← ここを

同行したまるちゃんのサイトは → こちら