【雲の平・高天原と名山周遊】その2

*7月25日(水) 水晶、鷲羽を経て黒部五郎小舎へ


高天原小屋(5:25)---(6:03)水晶池---(7:32)岩苔乗越---(7:45)ワリモ北分岐(7:50)---(8:23)水晶小屋---(8:52)水晶岳山頂(9:20)---(9:48)水晶小屋---(10:12)ワリモ北分岐(10:22)---(10:43)ワリモ岳---(11:17)鷲羽岳山頂(11:30)---(12:22)三俣山荘(13:15)---(14:11)黒部乗越---(15:00)黒部五郎小舎


今日は行程が長いので気合いを入れて歩き始める。高天原山荘の入口に温泉沢の情報が張り出されていたが、あまり歩く人はいないようだ。水晶岳に行くのに一応検討してみたが、タイム的にもあまり変わらず、少々危険なようなので岩苔乗越に向かい空身で水晶をピストンすることにした。

樹林帯の緩やかな道を登り始めると、すぐに水晶池分岐が左手に現れるが、今回はパスし先を急ぐ、この道は刈り払いが為されていなくて朝の早い時間は露でズボンが濡れる。
岩苔小沢付近(2500m付近)から、ハクサンフウロ、クルマユリ、ホソバトリカブト等のお花畑が広がる。しかし立ち止まると蚊がブンブン寄って来て、そこここを刺しまくりたまったものではない。逃げ足早く通り過ぎる。

  
     水晶小屋付近からの水晶岳 こちらから眺めるとまた違った雰囲気だ


最後の登りはしんどかったものの何とか岩苔乗越へ到着、水晶へは、ここからもう少し登り、ワリモ北分岐に荷物をデポし向かうようだ。
女性二人のグループと相前後し出発、なだらかな稜線を水晶小屋に向かう。水晶小屋付近から山頂まではいろいろな花が目を楽しませてくれる。印象的だったのが山頂直下の東側斜面にへばりつくような群落を作っていたミネウスユキソウ、後にも先にも今回はここでしか見なかった。

水晶岳頂上は絶景である。ここで去年登った穂高の全貌が初めて見渡せ、遠く焼岳、乗鞍、御岳まで確認できた。ここでも笠と槍はとんがって見えた。
鷲羽岳にどうしてその名が付いたかここで初めて納得した。双六方面からしか見たことがなかったからだ。
残念ながら後立山方面は雲の中に隠れて見えない。

これから歩くルートを目で追うが、あまりの遠さとアップダウンの多さにうんざりしてきた。いくら景色がよいからと長居は出来ない。
水晶小屋は本当に小さな小屋だった。裏銀座と読売新道の合流点にあり、その役割も少なくはないのだろうが.....
硫黄尾根の赤茶けた色がひときわ目を引く。北鎌の鋸の刃のような稜線がはっきりわかる。そっちは未知の領域だ。私には手が届くまい。
水晶岳の名は山頂付近に水晶の結晶を含んだ岩が露出しているからと言うが、確かに一部ではあるがそれらしき物があった。またの名を黒岳とも言う。これは付近の他の山と違い山頂付近が黒いからと言う単純な由来によるものだと言う。
赤岳から野口五郎に続く稜線を見ていたら、よこしまな雲が心の中に沸いてきた、先を急ごう。


  
                                 水晶岳山頂からのパノラマ
                             左手遠方に槍穂高、手前に鷲羽岳、三俣蓮華その彼方にひょっこり笠ヶ岳、右手は黒部五郎岳



荷物を拾い鷲羽に向かう。一旦下り、ワリモ岳に登り返すと又大きく下り、鷲羽に登り返すと言うコース、辛かったが何とか到着、山頂には数人が休んでいた。ガスが急速に上ってきて景色もあんまりだったので、記念撮影後すぐに三俣に下るが、何とも嫌な下りだった。登るのはもっと辛いだろうが.....

三俣山荘の前のベンチで昼食大休止、どっかの団体さんが大勢だ。話を聞くと雲の平に向かうという、かなり年輩の人から若い人までいる、皆疲れた様子だ。この辺は水が豊富でよい。
ザックからコッヘルとストーブを出し、ゆっくりとラーメンを作る。まわりの人達が興味深げに観察している。もっともラーメンが食べたければ山小屋に行けばよいのだが、何故か自分で作らないと気が済まないのだ。

小屋の前にはパラソル付きのベンチがあり、日差しの強いときには助かる。そこで靴を脱いで十分休養させてもらった。冷たい水が山荘の前に引かれており助かった。あまり天気が良いのも考え物である。日焼止を塗ってはいるものの首筋の辺りがヒリヒリする。もっともこれは贅沢な悩みか。本当はここで泊まるつもりでいたが時間があるので黒部五郎小舎まで行くことにする。三俣蓮華の頂は今回パスすることにした。いつか又来るときがあるだろう。

巻道には未だ雪が残っている箇所があるものの通行には支障無い。所々に冷たい流れがあり、時々喉を潤す。途中の路傍に真新しい黒々とした大きな糞塊があった。どうも熊五郎がその辺にいるらしい。一声大きく咳払いし先を急ぐ。以前どこぞの山でご対面したことがあるが、あまり気持ちの良いものでなかったのでここでは遠慮したい。

黒部乗越の辺りから行き交う人が増え始めた。皆三俣泊まりか、ここからの下りがとても長かった。足場も悪い、這々の体で黒部五郎小舎に辿り着く。早速受付をしたら別館に通された。どうも本日は満員御礼のようである。食事も2回戦まであったようだし、夜遅くまでスタッフが働いていたようだ。それでも一人畳一畳は確保出来た。




*7月26日(木)  遙か折立は遠し


黒部五郎小舎(5:34)---(7:13)北ノ又岳分岐---(7:24)黒部五郎岳山頂(7:53)---(9:05)中俣乗越(9:13)---(10:27)北ノ又岳---(10:34)神岡新道分岐---(11:41)太郎平小屋(12:35)---(12:59)五光岩ベンチ---(13:40)三角点---(14:35)折立


この日は一般的なカールルートを黒部五郎岳へ向かい出発。お花畑が多いという話を道々聞いてきたのだが、どうもそんなに多くは咲いてないようだ。まだ早いのかも知れない。
巨大なカールの中を緩やかに道は続く。所々に清らかな水が流れとても良い。最後の水場付近で大勢の人達が三脚を構えていた。その横を通り過ぎ最後の水場でフルボトル、急登に向かう。約千歩で肩に到着、荷物を放り投げ山頂に向かう。

黒部五郎の頂には誰もいなかった。初めは景色も見えたがすぐにガスに覆われた。神岡方面は雲海、下界はほとんど見えない。ここのカールも見事なものである。暫し俯瞰していると後続者がやってきた。昨日小屋で一緒だった人だ。記念の写真を取り合い彼は稜線ルートを小屋まで戻るという。最後のピークでゆっくりしていた私も我に返り、この先の長いルートを目で追う。

太郎平小屋が遠くに望まれる。隣の人は北海道の山に似ていると言う。俯瞰するとそんなにアップダウンがあるようには見えないのだが、たおやかな優しい曲線を描いて稜線は続いている。
意を決して下山に掛かる。いきなり300m近くの急坂を下り、振り返ると五郎が思いの外大きく感じる。そこから中俣乗越まで何箇所かのアップダウン、登り返して平らになったかと思えば遙か北ノ又岳は遠い。


  
       最終日、中俣乗越付近から 振り返ると黒部五郎が高い


ひたすら我慢して歩を進める。途中かなりの人達と行き交う。今日は何処まで行くのやら.....
おおよそ一時間に一度小休止を取りながら進むと何とか北ノ又岳に到着した。五郎山頂で会った人が休憩していた。彼の下りの何と速いことか、この後私を抜き去ると、あっという間に見えなくなった。太郎山まではまだまだ遠い。

神岡新道分岐から暫く進むと、一面ハクサンイチゲの大群落があった。本当に見事なものである。暫く見とれる。

これまでの道にも言えることだが、登山道がこういったお花畑を分断し、浸食している。人は理屈ではわかっていても、いくらかでも楽をしたいと言う本能を持っている。ガレた道より歩きやすそうな道があればそちらを歩く。結果的にその行為がお花畑を浸食していく。

最近木道を整備し復元を試みている場所も時々見かけるが、これだけ登山者の数が増えるとマナーの向上をいくら訴えても限界がある。この美しい風景を後世に残すためにも大変困難なことだろうが、関係機関の一層のご努力を切に願う。

やっとの事で太郎平小屋に到着昼食とする。巨大なザックを背負った若い男性がやって来てザックをベンチにおろしたら、テーブルの上の荷物が一瞬跳ね上がった。びっくりして何キロあるのか聞いてみたら23s位という。これでも随分軽くなったのだと言うのでさらに聞いたら、今日で入山8日目、12日間の予定だという事、世の中には凄い人もいるものである。学生かと思ったら社会人だという。またまた驚いた。

時間はまだあるので、無理をして折立まで下ることにしたものの、又、車の中で寝るのはいやなので、どうしたものかと小屋の登山相談所に相談したら、ありがたいことに麓の宿を紹介してくださった。感謝、感謝、感謝、m(_ _)m
安心して折立に下ることが出来た。
それにしてもこの道は長い、折立に着く頃には足が痛くてしょうがなかった。
途中かなりの数の登山者と行き交う。この週末はかなりの賑わいとなることでしょう。




*下山後と帰郷

折立に下山したら製も根も尽き果てた。とにかく顔と体を濡れタオルで拭き荷物を何とか車に積み込むとすぐに出発した。未練も何もあった物ではない。
早朝5時過ぎから午後の2時過ぎまでひたすら歩き通し、それもアップダウンの繰り返し、さすがに山には当分登らなくても良い気持ちになったと言って誰が責めよう。ひたすら宿を目指す。
本日の宿は極楽坂スキー場麓のロッジ太郎、太郎平小屋の紹介で泊まることになったのは以前書いた。一泊2食付きで8000円、温泉付きである。夕食までの間にゆっくりと温泉に浸かる。全く極楽坂で極楽である。
極楽坂というのは立山の麓、





【総 括】

・天候に恵まれとても充実した山行であった。
・初日に太郎平小屋まで下ったことにより計画を一日短縮できたが、その分余裕のない山行になってしまったように思う。
・この山域は水場が豊富でとても助かった。特にテント持参の人達には好評だった。
・中年と言う範疇に属する私でも、何とかコースタイムに近い時間で歩けた。
・次回からは日頃のトレーニングを真面目に行い山行に備えたい。
・山小屋は皆親切で、美味しい食事を提供していただき大満足。
・携帯電話は主な山頂では通話可能であった。
・高天原の温泉はとても素晴らしく再訪したい。
・雲の平もきっと再訪したい場所だ。

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