【初めての槍穂高】その2

続きです。

*7月26日 難所越え


南岳小屋(5:45)---(6:19)最低コル---(7:10)A沢のコル---(8:20)北穂高小屋(8:46)---(10:00)涸沢槍(10:10)---(10:56)涸沢岳(大休止)---(12:30)穂高岳山荘


天気は良い。皆早々と出発していく。朝食をたっぷりお腹に詰め込み出発、まだ体が目覚めてないらしく調子が上がらない中、大キレットへの急な下りを慎重に歩き出す。途中2箇所の梯子をクリアし、最低コルに辿り着くと大キレットの底部をゆっくりと眺めながら進む、全然怖くはない(^^;)。

朝一番、南岳小屋からのシシバナの下り
ビビってへっぴり腰になった。
大キレットの始まり
途中2箇所の梯子を降りた所より
シシバナを見上げると圧倒的な
高度感に汗々
とても怖い思いをして通過してきた
長谷川ピークを振り返る。
誰がこんな所に道を開いたんだ?


うわぁ、なんだここは、長谷川ピークの頭で突然しゃがみ込んでしまう。牛の○○コみたいな太い鎖はあるのだが、どのように足を運べばいいのか、いろいろ試行錯誤、何度もやり直してやっとのことA沢のコルへ降りられた。さすがに足が震えた。
ここから一気に北穂まで登り、いや崖は続いてる。ここまで来たからには行くしかない。戻る勇気と人は言うけど、あんなとこ二度と通りたくない。

ペンキマークを追いながら進むとガイドブックにも載っていた飛騨泣きの有名なトラバース地点、思わずここだと手を打つ。でも全然怖くはなかった。岩は硬く安心感がある。上を見ると遙か彼方に北穂の小屋が見えた。一体何を考えてあんなとこに建てたのかなあ、私が通過したらすぐに、ガラガラと音を立てて崩れていきそうな気がした。山では建築基準法なんて法律は存在しないんだろう。
ここからは水平にトラバースして後は小屋までひたすら登るだけ、気がついたら小屋のテラスに立っていた。

  
最低鞍部より北穂高方面                          苦労している登山者
やれやれである。                                母子連れだった。
手前のピークが長谷川ピーク  
                                    


        
A沢のコル付近から北穂を見上げる。                有名な飛騨泣きの鎖場
                                    この辺になると感覚が
果たして自分はあの頂まで                  ほとんど麻痺状態で
辿り着くことができるのかと言う                あまり恐怖は感じなくなった。
疑問が沸々とわき上がる。                              


緊張から解放されてなのか、太い鎖を見て思い出したのか、朝の生卵が効いたのか、突然差込が.....(^^;)事が終えて、やっぱり、ここに小屋がなければいけないのだと妙に納得したのである。

北峰で小休止をしていると、小屋のスタッフがヘリが来るので待避して下さいと言う。大急ぎで支度し少し下って、せっかくだから見ていこうとヘリを待つことにした。明神岳の方から爆音が近づいてきたかと思うと頭上を通過しすぐにターン、ホバリングして荷を吊り上げるとすぐに元来た方へ飛んでいった。真下の風圧はさすがに凄かった。考えてみるとあれだけの重量物が宙に浮くんだから団扇でいくら煽っても間に合わないよね。

北穂から涸沢岳までのコースの方が大キレットより私は悪いと思います。と言うか私の体には合いませんでした。TRKと言うよりALPの範疇だと思います。コースマークは明瞭だけど、足と手の使用頻度が同じではないのかと思った。全く大キレットからこっち側は「エゲツナア山ヤワ!」



奧穂から前穂の吊り尾根
とても憧れていた景色である。

やっとの思いで辿り着いた涸沢岳には、先行していた南岳小屋で同宿の人が荷物を広げていた。前日の雨で濡れたのを天日干しして軽量化を図っているという。すぐに真似をする。さすがにお日様の力は強いし逞しい。見る見る乾いていく。今日は穂高岳山荘泊まりなのでゆっくり山談義、明日は恐怖の奧穂、西穂間に挑戦と言うから凄い。でも一人じゃ心細いのでガイドの人と山荘で待ち合わせているらしい。そのまま一緒に穂高岳山荘に入った。

たまたま部屋もまた一緒だったのでガイドの人の話も聞けた。プロガイドの山田繁さんという方であった。なかなか豪快な人で彼の独演会が夕食まで続いたのだが、山田氏の言によれば、奧穂、西穂間は北鎌尾根より難しく、日本で一番難しいルートだという事である。その他、冗談の中に時折きらりと光る真実が興味深かった。





7月27日 上高地へ


穂高岳山荘(5:32)---(6:13)奥穂高岳(6:35)---(7:34)紀美子平---(8:05)前穂高岳(8:35)---(8:55)紀美子平(9:05)---(9:58)カモシカの立場---(10:30)岳沢ヒュッテ(11:50)---(13:15)河童橋---(13:20)上高地BT(13:30)==バス==(15:10)新穂高温泉BT


今回の山行も終盤、北ア最高峰の奥穂高岳を目指して早朝白出のコルから梯子を登り、ふうふう言いながら歩いていると、先行のおじさん二人に道を譲られた。
「お兄ちゃん、若いんやから先行きいな」「そんなに若くはないですよ」
「そんなん66歳から見たら若いやんけ、はよ行ってえな」
関西の人に絶対口では、かなわないと思うので素直に先行する。ジャンダルムが間近に迫り暫し見とれる。ゆっくりと歩いて奧穂頂上の祠が見えてきた。暫く景色を楽しむ。先行した山田氏等の姿を追うとジャンダルムの直下に腰掛けているのが確認できた。その手前、馬の背を怖々通過している人達の姿も見えた。

   
ジャンダルム馬の背の高度感が実感できる。                いつか行きたい西穂への道

奧穂山頂も360度のパノラマ、歩いてきたルートを目で追う。いつまででも見てられるのだが、後ろ髪を引かれながら吊尾根を紀美子平に向かうと、先行パーティーが鎖場で渋滞していて後続が次々と並んでいる。奧穂周辺は明らかに人が多い。緩やかな勾配の吊尾根を進むとやがて紀美子平に到着、皆ここにザックを置いて前穂に登っていく。私も空身にカメラだけ持って取り付くが、なかなか登りごたえのある急登だ。けっこう多くの人がルートを外して行き場を失っていた。頂上は思いの外広く、縦に長い。奧穂のどっしりとした姿が印象的だった。日頃の行いが良いのか視界は良好で、ここも360度のパノラマ、下山するのが惜しくなってきてぐずぐずする。何度見ても飽きない景色だ。出来ることならここに家を建てて住んでみたい。


奧穂高岳からのパノラマ
今回辿ってきたルートが一望できる。
文句無しに感動できる景色だ。


   
前穂高岳からのどっしりとした奧穂高岳、まさに岩の塊である。                                    
                                          前穂高岳山頂からの涸沢カールと北穂高岳
                                                            こうやって見るとたいしたこと無いんだけどなあ・・・


意を決して下山に掛かる。ここから岳沢ヒュッテまで標高差で860m程を一気に下る。
水平距離が1300m 程だから単純計算でtanθ= 33°29′だ。
重太郎新道の下りは膝が笑う。時に鎖場あり、梯子あり、岳沢ヒュッテの赤い屋根を目標にして下るが、いくら下っても近づかない。本当にすぐそこに見えるのだが、えいやっと飛び降りたい心境になる。逆にこのコースを登りに使う気はしない。笠新道とどっこいかそれ以上か......
しかしすれ違う登山者の数はそこそこいる。


急峻な明神岳T峰の眺め。重太郎新道の下りから望む
この辺はバリエーションの領域、私には手、いや足が出ない。


岳沢ヒュッテ手前に雪が残っていた。振り返ると覆い被さるような穂高の稜線が圧巻だ。こんな所に登山道を造るという先人の努力に頭が下がる。
ヒュッテの木陰のテラスで昼食がてらゆっくりしながらぼんやりと感慨に浸る。
自分では感じないが相当臭うのかハエがうるさい。隣の人と苦笑する。

上高地河童橋付近は平日だというのに人の波でごった返している。気が向けば上高地に一泊して散策しながら帰ろうかと思ったが、そんな気にはとてもなれずBTに直行しすぐバスに乗る。
発車と同時に大粒の雨が落ちてきた。観光客は我先に軒端に逃げ込んでいく。それをあざ笑うかのように雨足は強まる。

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