【中年登山隊第1次忘年登山】
                      Part1 イーハトーブの牛形山へ
 


しろっこ森付近から望む見事なブナ林

【日 程】2006年10月21日(土)
【山 域】焼石連峰
【山 名】牛形山(1339m)
【天 候】曇
【メンバ】4人
【コース】夏油温泉→牛形山→白子森→鷲ヶ森→丸子峠→夏油温泉
(概 略) (夏瀬温泉泊)


夏油温泉(7:43)---(10:05)牛形山(10:33)---(11:25)白子森---(11:41)レスト(12:10)---(12:31)鷲ヶ森---(13:20)丸子峠---(14:29)夏油温泉


秋も深まり、錦秋に彩られた山々が最後の輝きを見せてくれる時期は、過ぎ去るのも早い。純白のベールに覆われるまでの貴重な時間を共有する仲間は、多いに越したことはない。それぞれの網膜に焼き付けた光景がセピア色にあせるときがいずれ来ようとも、貴重な記録として永久に魂に記憶されるものだと信じる。

様々な人々との出会いや別れ、人生の縮図を見ているような濃密で深い山の時間を共有できる仲間というものは、ある意味人としてこの世に生まれ出た時から、目に見えない不思議な糸で結ばれていたのかも知れない。
山というある意味限定された狭い世界で、感性やイデオロギー、果ては身体能力や生活環境までまるっきり異なる個性が集うとき、自分の中から自然に沸き出す感情が「和」であることがありがたい。

それは、もしかしたら自分だけの思いこみかも知れない。他の人間の心の中なんて覗ける筈もなく、極端な言い方をすれば正反対な感情を持っているかも知れないのだ。でも、それはそれで仕方のないことだと思う。
人間の感情なんてそんな単純なものでないことは百も承知だが、ある共通の目的や嗜好を持つものが集うときに、得られ、また自然に発する感情はある意味人生のダイナミズムだと思う。

前置きが長くなってしまったが、中年登山隊秋の定期山行は、岩手夏油三山の一つ牛形山である。
牛形山は焼石連峰の主稜からは少し外れているが、去年初冬の縦走時にその雄姿をしっかり瞼に焼き付けていた。今回higurashiさんの起案により第一次忘年会登山と言うことで実現したわけである。一次があれば当然二次もあるのだろうが、東北百名山の一つでもあるし、変化に富んだとても充実した山行であった。

コースは夏油温泉から時計回りに牛形山(1339m)、白子森(1229m)、鷲ヶ森山(1207m)とアップダウンを繰り返し、丸子峠の十字路を夏油温泉に戻るというものである。

紅葉は温泉付近がピークでよい感じ、準備を整えすぐ出発する。隊長命令で地元のhigurashiさんがトップで案内役を兼ねる。この日は体調がすこぶるよろしいのか最初からガンガン飛ばす。後続は息が上がり気味で辛いものの何とか着いていく。枯れ葉の降り積もったブナ林は、時折ゴオ〜と不気味な風音が響くも、一歩毎にカサカサと鳴る踏み音が心地よい。我ら中登隊はその中を、箸を転がしても笑い転げる女の子達のように、賑やかな叫声を上げながら馬鹿話に花を咲かせて通り過ぎる。


   
           白子森  と  紅葉の中の秘湯、夏油温泉

段々急になる登路にトップがバテ気味になると、山頂では地元の立派な隊員様が、きっと前沢牛の高級ステーキをお昼に御馳走してくれるんだろうと期待を込めてつぶやくと、やにわにスピードが上がるのだった。
暫くしてまたスピードが落ちてくると、重いフライパンとコンロを折角持ってきたんだから御フランスのワインなど誰か持ってないかとつぶやく、すると不思議なことにまたまたスピードが上がる。

中年登山隊は、自分に都合の悪い話になるとスピードアップする集団らしい。

登路は時にフィックスロープのある急登や、トラバース気味の緩い登りを繰り返す道が分岐まで、途中季節外れのウツボグサが咲いていた。これには皆、目を丸くして驚くと同時に、一つ場所に長く根を張る健気な姿に目を潤ませて感動するのだった。


   
牛形山山頂  と  遠景

分岐からの急登はフィックスロープに頼り、ソロリソロリと一登りで目指す牛形山に到着、山頂は風が強くとても寒い。しかしそこは中年登山隊、各自のザックから冷たいビールを取りだし即座に乾杯となった。
展望は焼石本峰の上部は雲に隠れて望めないものの、去年登った経塚山が殊の外大きく見える。去年通った縦走路を懐かしく思い出しながら、天竺山からの稜線を目で追う。
ぐるり360度の展望は見ていて飽きないのだが、お腹も空いてきたので隊長の銀マットに皆で重なり合うように座り昼食休憩とする。

   
山頂付近からの白子森

白く輝くブナ林


食事後、寒さに追われるかのように白子森を目指して出発、ギャグに悪酔いしたのかトップが度々バランスを崩し転倒を繰り返す。やれやれだ。
道は良く刈り払いされ快適だ。関係者のご努力に感謝し先を急ぐ。
振り返ると牛形山がどっしりと大きい、その山容は鹿島槍に似ていると誰かの声、急斜面に白く輝く一本のダケカンバが印象に残った。

白子森の頂では天気が少し回復し、遠く鳥海や岩手山も確認でき、焼石連峰の頂上も良く見えた。いつ見ても北上盆地の景色には心が躍る。頂には二体の石仏が奉られている。higurashiさんが語り継がれた歴史を説明してくれるも、馬の耳に念仏とは我の事也(温泉のことしか頭にないという意見もあったが・・・)
葉の落ちたブナ林に陽光が差し込むと白い枝が陽差しを反射するかのように光り輝く。夏油温泉の建物が眼下に望まれ秘湯を実感するも、寒さにだんだん温泉が恋しくなる中年の一行であった。

   
白子森山頂の石仏

急な山頂からの下降路


白子森の下りは傾斜も強く難儀する。登山者が少ない為か道は草に覆われ滑りやすい。鷲ヶ森山付近のトトロのトンネルを通過し頂上では最後の展望を楽しむ。
丸子峠の分岐で最後の大休止後夏油温泉目指してブナの大木を縫って下る。途中熊棚やキノコを捜すも見つからないが、太いブナの原生林は、十分見応えがあり気持ちよかった。
夏油温泉野営場からは車道歩きが少し辛いが、目の前の温泉恋しさに足取りも軽く小走りに進む中登隊であった。


   
鷲ヶ森山   と   御馳走

時間があったので夏油温泉は去年と同じ元湯夏油へ、一人400円を払い露天風呂巡りを楽しむ。この日の山は結構寒かったので、合計三つの湯を梯子して体の芯まで温まる。


この日はすぐ下の瀬見温泉に宿を取り少し早い忘年会である。何時まで盛り上がったかはご想像にお任せする。


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