【懐かしの早池峰へ】
                   ヒメコザクラに会いたくて・・・


蛇紋岩の山肌


【日 程】2006年6月4日(日)
【山 域】北上山地
【山 名】早池峰山(1917m)
【天 候】晴
【メンバ】単独
【コース】小田越から山頂往復
(概 略)


小田越(6:40)---(8:20)山頂(9:21)---(10:37)小田越


6月11日より交通規制が始まり、休日に小田越まで車で行くのは困難との情報を得たからではないが早池峰山に向かった。なんと実に十三年振りである。
上記の情報及びその他現地情報は、中年登山隊(中登隊)岩手支部長のhigurashiさんから提供していただいた。感謝申し上げる。

前夜岩手入りし花巻PAにて車中泊し早めに就寝、明けて4日4時半起床、朝食を傍らのベンチで作り身支度をし河原ノ坊を目指す。花巻ICで高速を降り、宮沢賢治ゆかりの花巻農高を過ぎると北上川の悠然たる流れに出会う。大迫の町並みを過ぎ田園地帯を抜けると段々山懐奥に入っていくのが心細い。以前来たときの記憶を辿るが一向に思い出せない。大きな早池峰ダムを超えるが、果たして以前にそんなものあったかしらん・・・
道路も立派でこの辺の記憶も曖昧だ。

早池峰神社のある岳集落は少し記憶に残っている。ここから細く曲がりくねった道が延々続く。
キャンプ場のある河原ノ坊は記憶に残っていたとおりで安心?した。そのまま通り過ぎ小田越の登山口までこの日は楽に入れた。地元ナンバーの車がすぐ後に到着し身支度を急いでほとんど同時に出発、最初はゆっくりだ。

うっそうとしたオオシラビソの樹林帯を暫く辿ると残雪が現れた。木々の隙間から屏風のような山肌が見える。あれ?こんなに急な山だったかな?
考えてみると以前訪れたときは、ガスの中で最期まで視界の効かぬ行動であった。
樹林帯を抜け視界が開けると鶏頭山の裾野が雄大な雲海に吸い込まれている。下界は雲に隠れ何も見えない。遠くに高い山だけがポッカリと雲の上にその頂をのぞかせている。振り返ると薬師岳の端正な姿が良い。


   
雲海に吸い込まれる鶏頭山の裾野

特産種のナンブイヌナズナ


行く手には覆い被さるようにゴツゴツした蛇紋岩の山肌が圧倒的な迫力で迫る。ふと視線を下に向けると捜し物がやっと見つかった。一人歓声を上げながらその可憐な姿に舞い上がる。そう、この山でしか見ることの出来ないヒメコザクラが私を待っていたのだ。
有名なハヤチネウスユキソウに憧れ以前は7月に訪れた。その時にこの花にはお目に掛かっていないと思うのだが、higurashiさんのブログでヒメコザクラの写真を見たとき強烈に引きつけられた。それが今回の山行の本当の目的である。

この花には不思議な魅力がある。同類のヒナザクラは鳥海にもあり好きな花ではあるが正直これほど強くは引かれない。自分でも何でこれだけ強烈に引かれるか上手く説明できないのだが、ひときわ小さく可憐で気品のある清楚な姿はいくら見ていても飽きることはない。写真を撮りまくる。当然このあたりからガクンとペースが落ちたことは言うまでもない。


   
憧れのヒメコザクラ


上に行くに従い花は少なく、急な梯子を登ると傾斜は緩やかになり山頂も近い。木道の先に残雪があり助かる。山頂では360度遮るもののない視界で、見事な雲海に名だたる名山が浮かんで見えた。南から栗駒、焼石、和賀山塊、秋田駒、岩手山、八幡平と少し霞んではいるものの風もなく穏やかな陽差しの下、キンキンに冷やしたビールで一人祝杯を上げる(毎度これだけ(^^;))

山頂の祠の側には剣や石仏が祀られ、周辺の人々の信仰を集めた山だと容易に想像できる。周囲はゴツゴツとした大きな岩が乱立し異様な雰囲気だ。資料によれば氷河期の浸食を耐え抜いて出来た山と言うから火山ではないのだろうが、粘度の高い熔岩が冷えたような形の岩柱が多い。
シーズン中は大勢の登山客で賑やかであろうが、この日は風も喧噪もない静かな山頂であった。それにしても北上山地の広大さには目を見張るものがあった。


   
山頂付近の巨岩群と早池峰剣ヶ峰

雲の上で憩う登山者



景色を十分堪能した後ゆっくり花を愛でながら下る。特産種のナンブイヌナズナも少し咲いていた。このころから団体の登山者と結構行き交う。這いつくばってヒメコザクラの写真を撮っていたら、その白い花はなんと言うんですか?という質問を多くの方から受けた。丁寧に説明申し上げたが、皆さん先が忙しいのか大した関心も示さずに通り過ぎていった。

小田越の登山口では大勢のボランティア?が一生懸命に雑草を取り除いていた。尾瀬とかでも問題になっている登山者の靴に付着した種が、本来の植生を乱す問題がここでも発生しているのだろう。ご苦労様である。

一旦車に戻り軽い靴に履き替える。当然缶ビールも補給し、時間が早いので折角だからと薬師岳にも寄っていくことにした。


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