【沖仁・渡辺香津美ギター・デュオコンサート】

  

2014.08.23(日) 響ホール
ギター:沖仁
     渡辺香津美



久々の響ホールでのジャズコンサート、いやいやジャズなのか?
渡辺香津美は日本を代表するジャズギタリスト、方や沖仁は世界を股にかけるフラメンコギタリスト、ジャズコンサートという感覚で来場された方々も多いだろうが、当方は沖仁目当てが本当のところだ。
香津美さんは1953年生まれ、方や沖さんは1974年、まあ親子に近い歳の差だが…

沖仁を初めて知ったのは何年前だろう…
庄内国際ギターフェスティバルのゲストギタリストとして、ここ響ホールの大ステージで演奏した時だと思うが、すさまじい衝撃を覚えたのを記憶している。その後も響ホールでリサイタル等をしているはずだが、残念なことに見逃してしまったのだ。
当時はクラシックギターの祭典のためそっち方面の人と思っていたのだが、フラメンコギターはまるっきり異次元の音だったのを記憶している。

福田進一さんの招へいによるものだと思われるが、余目には何かと思い入れがあるみたいで、特に響ホールはお気に入りのようだ。
冒頭の挨拶でも「やっと庄内に帰って来ました」なんて言っていた。
ジャズとフラメンコの融合などと言うありきたりの表現はよそう。この日のコンサートは二人の天才ギタリストの競演、あるいは真剣勝負のようなとてもエネルギッシュで情熱的な演奏会であった。

1曲目は沖さんのソロで「禁じられた遊び」を彼なりのアレンジで熱演、いきなり度肝を抜かれた。いつもクラシックのコンサートばかりなので拍手で反応していたら、
「もっとドーンとした大ノリの反応があると思ってたのに…」だってさ(笑)
クラシックのコンサートでないから、どんな反応しても良いんだった。
後はどうとでもなれ!(笑)
と言うことで、後はお祭り騒ぎ状態、曲が終わるたびに中年の哀愁漂う怒号、いやいや歓声を盛大に叫んでいる自分…

セットリストなんて記す余裕なんてなし、次から次へと文字通り湯水のようにホールに溢れる独特のサウンドは、本当にギター二本だけで演奏しているとは信じられない刺激的かつ情熱的、いやいや創造力溢れる音楽空間で、その場に身を置く幸せを噛みしめながら楽しめ、休憩なしの二時間半は本当にあっという間に過ぎてしまった。

ギターは小さなオーケストラと呼ばれるが、まあこの二人にかかったらベルフィルとウィーンフィルを足して100を掛けたような芳醇極まる音である。
クラシックギターのコンサートは通常PAを使わないが今回は使っていた。香津美さんは私のイメージではエレキギターなのだが、今回はアコギ二本(一本は12弦)で通していた。二人の違いは弦だけかな、スチールとガット弦はやはりかなり音が違う。

音の強さは何故かガット弦が強い。と言うかフラメンコギターとの奏法の差だとは思うが、二人ともピックは使用せず(香津美さんは12弦の時は使用)いくらプロとはいえ、あんなに指を酷使して大丈夫なのかなと心配するほどの激しい演奏であった。
二人の掛け合いは限界がないようで、無限に続くようなインタープレイに観客は熱狂し、はっきり言って下手なロックコンサートより激しく感じる音楽であったと思う。
残念ながらホールは満席でなかったが、観客の反応は満席以上の盛り上がり。

沖さんが修業時代スペインに単身渡る際に持っていった数少ないCDの中に、香津美さんのCDが一枚あったという。渡辺香津美という大先輩は沖仁にとって神様に近い存在だったそうで、現在こうして二人でデュオを演る事になるなんて夢のようだと。
決して交わることのない音楽性であるがゆえ、二方向から光り輝く音がホールに放出され接触した時、とてつもないパワーを生むことを二人の天才は本能的に知っているのだろう。我々観客は大荒れの大海に放り出された小舟のようなもの、為す術もなく身を任せるしかない。

アンコールでは客席を回るサービスもあり、観客は総立ちでこの興奮をどう静めるのか心配する。会場の販売ブースも終演後は人だかり、サイン会には長い列が出来ていた。
いやはや何とも刺激的な体験をしたコンサートでした。