【山形交響楽団 庄内定期演奏会 第23回鶴岡公演】

  
2014.08.10(日) 鶴岡市中央公民館
指 揮:飯森範親
コンサートミストレス:犬伏亜里
クラリネット:川上一道
グリーグ/組曲「ホルベアの時代から」作品40
ウェーバー/クラリネット協奏曲 第1番 ヘ短調 作品73
【アンコール】
芭蕉布
------(休憩)-----
ベートーヴェン/交響曲 第6番 ヘ長調 作品68「田園」
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台風11号が列島を直撃している中に鶴岡へ向かう。
庄内は風が強く雨も混じってきた。田んぼの稲穂が揃い始めた頃、被害の無いことを切に願う。
鶴岡公演は今まで文化会館で行ってきたが、現在建て替え工事中のため中央公民館での公演となった。ここは若かりし頃に知り合いのバンドを聴きに一回来たことがあるような…
まあ300席くらいかな?それなりに人は入っているようだ。
プレトークで音楽監督は明日のヒコーキが飛ぶか心配していたが、この天気じゃ無理なような気もした。

今シーズンから庄内定期は鶴岡、酒田共に一公演だけとなり寂しい限りだ。定期公演というものはオケが日頃磨いた技術の発表会のような意味合いを持つものと勝手に解釈していた。山響でもテルサでやる公演はサブタイトルが付き、珍しい楽曲を独特の解釈で披露する場だと思っていたのだが、以前は庄内定期でもテルサでやる公演と同じプログラムが多かったように思うが、今シーズンは鶴岡のメインがベートーヴェンの「田園」、酒田のメインがモーツァルトの「ジュピター」である。まるで名曲演奏会のようだと感じるのは私だけだろうか?

もっとも楽団にしてみれば観客の集まらない庄内公演は、やるたびに赤字がふくらむ頭の痛いものなのだろうが、実際名の通った楽曲を演奏するときは観客が少しだけ増える傾向にあるのも事実、経営上まずは観客を増やすことに楽団が動くことは非難されることではない。でもね…
そんなことは抜きにして、とても素晴らしい内容の演奏会でした。

一曲目のグリーグはノルウェーの作曲家でホルベアとは「デンマークの文学の父」とも称される文学者の名前だそうです。1884年作者が41歳の時にホルベア生誕200年の記念祭のために依頼された楽曲だそうです。副題には「古い様式による組曲」とありバロック音楽の様式で書かれたものとのこと。全5曲です。
この日の山響の弦の配置は、左から1Vln、2Vln、Vc、Vla、Cbという感じ、この曲は弦楽器だけで演奏されました。

1曲目の前奏曲はどこかで聴いたことのあるような曲でしたな(笑)
2曲目のサラバンドはとても叙情的でVcが印象的なとても美しい曲です。
3曲目ガヴォットとミュゼットは何というかフォークダンスを連想させてくれました(笑)
4曲目のアリアはとても優しい音で始まり、悲しいドラマを見ているような印象を持ちました。これもVc首席の小川さんの力量が光ります。
5曲目のリゴードンは軽快なテンポで始まります。ステージ両翼の1VlnとVlaの首席奏者(亜里さんと成田さん)の見事な協演が続きます。
ホルベアの生きていた時代(18世紀)の舞踏曲風だと言うことでしたが、さすがの山響弦軍団、各曲共に首席奏者の力量が光るアンサンブルでした。いやあ見事です。

二曲目のウェーバー、彼が1811年にミュンヘンへ演奏旅行に行き、宮廷管弦楽団のCl奏者であったベールマンと知り合い、彼のために書かれた小変奏曲をバイエルン国王が大いに気に入り、すぐに2曲の協奏曲の作曲を依頼されたそうです。その中で華やかなClソロを用いた作品であるのがこの曲だそうです。
配置は先ほどの弦楽器群の奥にFl2、Ob2、もう一段奥にHr3、Fg2、Tp2、Timとなります。もちろんClソロは楽団員の川上一道さん、第81回日本音楽コンクール・クラリネット部門の優勝者です。

細かいことは抜きにして実に素晴らしい演奏でした。超絶技巧の連続でワクワクしながら聴きました。カデンツァも見事でHrとの協演も実に素晴らしかった。さすがです。
川上さんは華のあるClプレーヤーですね。彼の流れるような演奏が目と耳に焼き付いてます。当然終演と同時に「ブラボート」と叫んでいました。カーテンコールが止まなかったです。
アンコールもありまして初めて聴く曲でしたが「芭蕉布」という沖縄の曲だそうです。沖縄は川上さんの出身地だそうで、この曲は後で調べたら夏川りみさんもカバーしているようです。

休憩後のベートーヴェンの「田園」は超有名な名曲中の名曲です。この曲は1808年の作曲でベートーヴェンが37歳の時だそうです。有名な5番「運命」も同じ年に書かれたそうで同時に初演されたそうな…
マエストロの話では「田園」は作者自らの命名なのだそうですが、「運命」は和製、つまり日本でつけられたもの、それが今では海外でもそう呼ばれるようになってきたそうです。
ベートーヴェンの耳が聞こえなかったのは周知ですが、その作曲過程についてマエストロなりの説明もありました。まあピアノをかじって音を拾ったなんてのは有名すぎる話ではありますが、絶対音感があれば作曲は可能みたいですね。指揮者というものは音が聞こえなければやることは不可能だと言ってましたが…

ベートーヴェンの交響曲を生で聴くのは実に久しぶりで、というか恥ずかしいことにあまり聴いたことが無いのが実際です。「運命」も生ではありません(汗)
で実際生で聴いてみて感じたのですが、この楽曲を聴力のない人間が作ったこと自体信じられないと言うのが本音ですな。
配置は弦は同じで、Picc1、Fl2、Ob2、その奥にHr3、Cl2、Fg2、さらにTim、Tp2、Tb3といった感じです。

中身については私如きが感想を書くべきでないと思いますので控えますが、素晴らしかったです。中でも管楽器のトライアングル、つまりCl、Fl、Obの首席(川上さん、足達さん、麻咲さん)の演奏が印象的でした。
やはり楽聖ベートーヴェンの音楽は格が違う気がします。音の広がり、印象的なメロディーライン、唯一無二のオーケストレーション…
名曲と呼ばれるだけあって全ての音が完璧な繋がりを持っています。何度聞いても飽きないし感動しますよ本当に…

こぢんまりしたこのようなホールでは、大きな編成のオケより、山響のような小編成の音の方が、聴き手に訴えるものが大きいように感じました。私はこの曲が終わるまで胸の前で神に祈るように手を組んだまま動けませんでした。今の山響は世界に誇れる音を生み出す集団になっていると思います。実に素晴らしい演奏会でした。



PS
佐藤裕司さんの姿が見えないことに一抹の不安が…