【山形交響楽団 庄内定期演奏会 第18回酒田公演】

   
  
2013.12.06(金) 酒田市民会館希望ホール
指 揮:ミハウ・ドヴォジンスキ
コンサートミストレス:犬伏亜里
チェロ:遠藤真理
ドヴォルザーク: 交響的変奏曲 作品78
マルティヌー:チェロ協奏曲 第1番(1955年改訂版)
------(休憩)-----
ショスタコーヴィチ: 交響曲 第9番 変ホ長調 作品70


師走に突入し何かと気忙しい日々が続くが、雑事に対して焦っても良いことはなく、逆に手戻りが多くなるのはわかっている。が、未熟者の自分にはなかなかどうして達観した日々は送れそうもない。
北を見上げれば鳥海の純白の衣もだいぶ下まで降りてきた。朝夕には最上川の中州に白鳥の賑やかな鳴き声も響き、確実に季節は移ろいもうすぐ白一色の世界がやってくる。
初めて聴く指揮者に期待しながら希望ホールの二階に陣取る。

ミハウ・ドボジンスキ氏はポーランド出身の若手指揮者、山響の首席客演指揮者に今シーズンから就任された。恒例のプレトークも通訳付きで行われ、この日の作品について簡単な解説を聞くことができた。
1曲目のドボルザークの交響的変奏曲は、初期の作品で演奏される機会も希な作品だそうだ。
出だしは少し緊張されていたようで違和感があったが、途中からは素晴らしい演奏が続いた。私自身初めて聴く曲であったが、コミカルであり、スリリングであり、かつ重厚さもあり良い曲だと思います。
山響の演奏も実に良く洗練され素晴らしかった。マエストロの指揮も実にわかりやすくて好感が持てましたし、楽団員との信頼関係もすでに堅く結ばれているように感じ、実に良い指揮者を迎えたなと思いました。

2曲目のマルティーヌのチェロ協奏曲のソリストは遠藤真理氏、彼女は某国営放送のFM番組でパーソナリティーも努めていて、私も車中で良く聴かせてもらっています。
実はこの曲、大震災のあった当日に山響の鶴岡公演で演奏予定だったそうですが、ゲネプロを終え待機中に地震が起き公演中止になった曲で、遠藤氏もまた絶対に山響と一緒にやりたいと願っていた曲だそうです。今回はヴィオラのトップで倉田さんが頑張っておられたのが印象的でした。

遠藤さんのチェロはもちろん初めて聴きましたが、ホールの影響もあるのでしょうがソフトに聞こえました。マエストロも言ってましたが実に美しい曲です。中でも第2楽章は鳥肌が立つほど美しかった。山響との相性もばっちりで素晴らしいチェリストです。超絶技法のカデンツァも決まってましたし再演が待ち望まれます。
盛大なカーテンコールが続きましたがアンコールは無し、残念でした。

休憩後のショスタコの9番は、2007年の山響酒田定期で藤岡幸夫氏の指揮で一度聴いたことがあります。この作品の作曲当時の時代背景を頭に入れて聴くべき作品だと思いますが、以前聴いたときのイメージが少しだけ残っていて、それがあまり良いイメージでないのが正直なところです。
まあ、きれいなイメージは皆無の曲ですが、マエストロは好きな曲であるとプレトークで仰っていたのが印象的でした。

そんな気持ちで演奏に臨みましたが、はっきり言ってイメージが変わりました。マエストロの奏でる音には何というか「嫌み」がないのです。曲自体は権力者に対するオチョクリの極みのような印象はあるのですが、コミカルでありシニカルでもあるのです。全体的に殺伐とした音には凛とした気高さが漂います。けれども美しい旋律など決して現れません。ただただ淡々と時が流れて行きフルートソロの泣き囁くような曲調には、森の奥深くで権力者に静かに抵抗する作者の気概を感じます。

高橋さんの奏でるファゴットソロの何とも悲しげな音色は沈鬱な悲しみを見事に描ききっています。まるで絵画の前にいるような錯覚を覚える自分がいました。時々聞こえるコミカルなメロディーがせめてもの救いのような気がしますが、私には滑稽に聞こえるのでした。しかしながらマエストロが山響から引き出したこの日の音に、私は心底心躍らされました。各パートのソロの連携、アンサンブル、まるっきり無駄のないクリアな音質、あの楽器からこんな音が出るのかと言った驚きに似た思いを持ちながら気分良く聴くことができました。ブラボーです。

それからプログラムノートによると、来年の庄内定期は酒田と鶴岡で1公演ずつに減っていました。興行的に合わないのでしょうなやっぱり…
残念です。


  
交流会の様子



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