【NHK交響楽団演奏会 山形公演】

2013.07.02(火) 山形市民会館
指 揮:小林研一郎
コンサートマスター:篠崎史紀
ピアノ:小山実稚恵
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番ト長調 作品58
【アンコール】
エリーゼのために
------(休憩)-----
ベルリオーズ 幻想交響曲 作品41
【アンコール】
カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲


クラシックを聴き始めてから填った曲は数あれど、幻想はかなり聴き込んだ。キチガイ交響曲などという口の悪い人もいるが、生まれついての偏屈者ゆえその奇想天外な展開に心引かれること甚だしく、生演奏を聴きたいとずっと願っていたのだが…
できればN響の演奏を、さらにできればシャルル・デュトワの指揮でと…
そんなに聴きたければNHKホールに行けばいいじゃないかと人は言う。
しかしながら片田舎から出ることが年月の経過に比例して困難になる不遇の身を嘆いても始まらないので半分諦めていた。
そんなときに今回のコンサートの情報が入ってきた。

N響は何回か生で聴いたことがある。NHKホールにも行ったし、以前の山形公演(県民会館)も聴いたはずだ。当時の指揮者は誰だったかな?
指揮者の小林研一郎氏も何度か聴いたことがある。サントリーホールでの日フィルと希望ホールでの新日だと記憶している。この人の演奏は大好きである。
ピアニストの小山実稚恵さんの演奏は何度か聴く機会はあったのだが、上手くタイミングが合わず初めて生で聴く、楽しみだ。
ただホールがちょっと気に掛かるが、できれば希望ホールで聴きたかったなぁ〜…

会場は予想に反して大入り満員、1000名ほどの聴衆が入ったそうな。山響団員さん達の姿もチラホラと、ステージは大編成のオケに対応するため前方の客席を撤去しステージを広くしている。
盛大な拍手の元、小山さんとマエストロが入場し1曲目のピアノ協奏曲4番が始まった。弦の配置はVlnは1stと2ndが仲良く並びVcを夾んでVlaが右側に各4ブルト、その奥にCbが4台、ステージ中央にピアノが鎮座し、奥のひな壇に管楽器群が並ぶ。これでもN響にとっては小編成なのだろうが、山響では通常の編成だよね。

小山さんの演奏は初めてですが、何というか実に上手いなと思いました。オケとの連携も実にスムーズで繊細な箇所の音も実にきれいに響き、かつクリアーな感じ、おとなしいピアノ弾きかなと思った瞬間、パワフルな音がドン、ドンと迫ってきます。ピアノコンチェルトのお手本のような演奏です。
この曲のイメージとして私は軽やかでクリアなものを持っていましたが、コバケンさんの構成はそれに日本人的発想の重さが加わります。テンポも少しゆっくり目で(私のイメージですが)5番の皇帝のような重厚さも感じました。これは指揮者の個性なんだよねと一人納得していましたが、それにしてもN響はベートーヴェンが上手いですね。コンマスのマロさんこと篠崎さんが大きな体でぐんぐん引っ張って行きます。

盛大な拍手が鳴り止まずアンコールの催促はマエストロが、小山さんをピアノ席に誘導します。そしてマエストロは1stVlnの酒井さんの席の半分にちょこんと座り一緒に聴きます。この辺の仕草が実にチャーミングなのですよこの人は…
エリーゼのためには小山さんのアンコールの定番らしく楽しく聴くことができました。この人の演奏は絶対生で聴くべきですね。素晴らしい。

さて休憩後にお目当ての幻想交響曲、団員さんが続々入場します。すごい数です。周りの観客も、お、お、お…と、大編成に驚いています。いやあ実にわくわくしますね。
マエストロは拍手の中入場すると一礼しすぐにタクトを振り下ろします。過去にも何度かマエストロの指揮姿を見ましたが、暗譜で振ることが実に多いのですこの人は。
第一楽章が始まり暫くすると私は感極まり震えが来ました(笑)
こ、これです、この感覚が楽しくてコンサート通いを続けているのですよ。(決してホールが寒かった訳ではありません)あの憧れていたN響の幻想が今目の前で実際に演奏されているのです。うれし涙がじわっと湧き上がってきます。これは夢か幻か、頭の中が混乱している内に第1楽章が終わります。

そしてマエストロが客席に向かいはっきりと一言、「皆さんお寒くございません?」
自身は熱演のあまり汗をハンカチで拭いていますが、指揮台を降りてなんだかんだと誰かに指示している様子、私の席は後ろの方なので結構高くて暑い位なのですが、最前列辺りの低い位置では空調が上手く効かず寒いのかなと思いましたが、私は1曲目からこの時まで実は気になっていたことがあったのです。それは空調の音です。ゴォ〜という低音が耳障りでVlnなどの音が濁って聞こえていました。多分マエストロも同じ感覚だったんではないかと思っています。だからわざわざ楽章間で中断し空調を切れと指示したのでしょう。そして何事もなかったように「それでは美しい第2楽章をお楽しみ下さい」言われてから演奏を再開しました。実に心憎いフォローです。

空調を切ったためか耳障りな雑音が無くなったおかげでここからの演奏はさすがN響といった感じで素晴らしかったです。弦パートの音は実に深みがあり安定してます。さすがです。
第3楽章ではステージ上のイングリッシュホルンと客席下手の入り口付近のオーボエが会話するような演奏でした。この辺もCDだけ聴いてもわかりません。立体感のある演奏です。
実際このくらい大きな編成のオーケストラはなかなか聴く機会がないので、音の深みというか立体感というか三次元的な音は特に素晴らしいです。このホール古くて狭いですが、NHKホールのような巨大ホールで聴くのとはまた違った響きを身近に聴ける楽しみがあるように感じました。

で第3楽章が終わってからまたまたマエストロが一言、「今度は暑くございません?」
会場は大爆笑です。私も一つの楽曲でマエストロがこんなことを二回も発言するコンサートは経験無いです(笑)
オケというのは楽器のコンディションを保つのが大変なのだそうで、早く新しいホールを建てて下さいよと仰いました。ここでも一同大爆笑、会場には再度空調が入ったようですが、耳障りな雑音は聞こえませんでした。

ここからが最後の盛り上がり、日本が誇るN響ここにありと言うような迫力あふれる素晴らしい怒濤の演奏が終楽章まで続きます。もうこの辺になると私は感動のあまり気がふれそうでした。
打楽器群が大活躍で大太鼓2台がドカドカ気持ちよく鳴り響きます。面白かったのがTimp2台を4人の打楽器奏者で演奏するんですね。初めて見ました。これらもCDではわかりません。
最終楽章では2台の鐘?をこれでもかと言わんばかりにガンガン打ち鳴らします。もう観客は興奮の坩堝、最後はシンバル2台をジャンと大きく叩いて終わります。当然ブラボートと無意識のうちに叫んでいましたよ私めは(笑)大好きですこの曲…

さすが天下のNHK交響楽団、あんた達は偉い!!
もとい、炎の指揮者コバケン、あんたはすごい!!

大興奮の観客を諌めるかのようにアンコールは、カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲、N響の弦セクションだけでの演奏はため息が出るほど美しく優雅でした。
わざわざ酒田から会社をサボって聴きに行った価値は十分あるコンサートでしたね。とても楽しめました。