飯森&山響 モーツァルトシンフォニーサイクル
   「アマデウスへの旅」 第7年
   交響曲全曲演奏 定期演奏会 Vol.19


2013.06.01(土) 山形テルサホール
指 揮:飯森範親
ヴァイオリン:松田理奈
コンサートミストレス:犬伏亜里
交響曲第16番ハ長調 K.128
ヴァイオリン協奏曲第1番変ロ長調 K.207
【アンコール】
イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番の第1楽章
------(休憩)-----
交響曲第23番ニ長調 K.181
交響曲第28番ハ長調 K.200

慌ただしい田植えも好天の内に何とか会社をサボり終わしたが、何かと気忙しい日々が続いている。残雪豊富な月山や葉山、おなじみの朝日連峰の山並みを眺めながら山形テルサに向かう。そう言えば久しく山に入っていない。
モーツァルト定期も7年目に突入しこの日を含めて残り6ステージ、中年にとっては年月の移ろいは夢幻のようだ。

移動の車中では主に昔のカセットテープを聴いている。今時そんな再生装置を積んだ車があるのかという突っ込みが入りそうだが、骨董品の部類に入る人格がなせる技であろう。
以前の愛車は20年以上乗り、去年未練たっぷりだったが涙ながらに更新した。その際に販売店に無理を言って備品をそのまま積み替えてもらったのだ。故に大昔にレコードからカセットにコピーした(この辺も死語だろう…)BEATLESなどの懐かしい音がまだ聴けるのだ。

先般真偽の程は定かではないが、山下達郎がJOYと言うアルバムのレコードを復活させたと言う話を聞いた。CDでは意図的にある周波数で音がカットされているので不自然な感じがしてどうも気に入らないというマニアは結構いて、CDが世に出てから不平不満を言う輩を多く見てきた。自分のような鈍感な人間でも結構わかるもので、30年前に買ったレコードプレーヤーを捨てることができない自分を誇りに思っているのだが、家人の視線は冷たい。

当時の貧乏青年にとって貸しレコード屋は大変ありがたい存在で頻繁に通っていた。レコードからCDに音源が変わっても、何故かカセットにコピーして聴いていたのだが(今考えると不思議なことをしていたな…)当時からある意味音の違いは明白であった。
私のような古い人間にとって、レコードの音というのは何ともいえない「ぬくもり」があり「息吹」を感じるのだ。それゆえクラシックのコンサートに向かいながら昔のテープに熱中するのだろう。Bill Evansの「Walts for Dabby」などCDでなんて聴けやしない…

音楽に対する感覚も当時と今では違って当たり前なのに、当時の可愛らしい女性歌手のカセットなどもとても楽しく聴ける自分は当然変な部類に属するのだろうが、視覚や音質的に見ても今の女性歌手の方が当時よりは洗練されているのだろうが、いまいちピンと来ないのは歳のせいばかりではないと密かに考えているが、傍から見ればどうでも良いことなのだろう…
と言うことで偏屈なおじさんの戯言はこのくらいにして本題へ進みます。

開演までに一時間少しあったので二階の最前列の席を確保し暇つぶしに山形駅の辺りを散歩して会場に入ると恒例である音楽監督のプレトークが始まる。
今回の4曲は1772年頃の同時期に作曲されたそうで、交響曲16番が1772年5月、Vln協奏曲1番が1773年、交響曲23番と28番も1773年の作曲だそうな。

16番はイタリア旅行の後に作曲され第2楽章は弦楽器のみで演奏され、輪唱のような手法が用いられている。第3楽章は6/8拍子でとても明るい曲調とのこと。
VlnCon1番はあまり演奏される機会の無い曲だそうで、今回のソリスト松田理奈さんのソロが素晴らしいとのこと。彼女が演奏する楽器は名器だそうで、記憶が曖昧だが「ニコロ・アマティ」作だという。会場の空調も通常よりドライに設定し、楽器が最高に響くよう配慮したとのことである。

23番は3楽章通して演奏するそうで、アマデウスはオペラの序曲としての発想があったのではないかと音楽監督は言っておられた。全体的にとても美しい曲で、第2楽章は特筆物だそうな。
28番は16番と似たような出だしで今回はTimpを入れないで演奏するとのこと。
さて本番が始まる。

16番は第2楽章が特に美しく、Vlaの音が特に優しく響いていた。Fgの高橋さんが一人だけ、通奏低音のためだろうか、この曲は全体的にたおやかでとても美しい曲でした。
続いてハッとするような真っ赤なドレス姿の松田理奈さんが登場、会場が華やいだ雰囲気になる。弦は1st&2ndVlnが3ブルト、Vlaは2ブルト、と非常にコンパクトな編成だ。しかしさすがは山響、見事な演奏だ。ソリストの松田さんも気持ちよさそうに時折ビブラートを効かせながらの熱演(M定期ではピリオド奏法のためビブラートを効かせると目立つ)、音は何というかソフトなイメージで、キンキンしたVlnの音とはちょっと違う気がした。でもそれはそれでこの曲にはぴったりのイメージで楽しめました。

アンコールのイザイは全然違った曲調で、同じ奏者の演奏かと耳を疑う響きでした。盛大な拍手で聴衆は気持ちを表してました。
休憩後の23番はリズミカルに3楽章切れ間無く演奏されました。ほんの9分ほどの演奏でしたが、とても軽やかで美しい曲でした。Obの真咲さんのソロがリリカルでとても良かった。
メイン?の28番は、いつもの聞き慣れたモーツァルトのイメージが戻ってきたような演奏でした。
3月いっぱいで高木さんが抜けて心配だった弦パートは、有里さんの奮闘で上手くまとまっています。今回の演奏会は2ndVlnとVlaが頑張ったと思います。素晴らしいアンサンブルでした。



交流会での松田さん