【山形交響楽団 庄内定期演奏会 第16回酒田公演】

  アーノルド:4つのスコットランド舞曲(大井)
ドヴォルザーク: 交響詩「英雄の歌」作品111(大井)
------(休憩)-----
メンデルスゾーン: 交響曲 第3番 イ短調 「スコットランド」作品56(工藤)
2013.03.10(日) 酒田市民会館希望ホール

指 揮:工藤俊幸/大井剛史
コンサートミストレス:犬伏亜里


3人でのプレトーク
左から大井、佐藤、工藤各氏

三月になったけれども春はまだ遠しといった感じの天気である。
あの大震災からまる二年、この間に公私ともに実にいろんな出来事があった。人間黙っていても歳はとるもので、中年から老年へと移り変わる景色を穏やかに楽しみたいと願ってはいるのだが、いかんせん未熟者にはとうてい無理なこと、自分を顧みる余裕すらない日々に自己嫌悪する毎日である。
人間は心に余裕がないといろいろな弊害が出ることはわかっている。けれどもすべてを投げ出してリセットするなんてことは、病気や怪我で入院でもしない限り現実的には不可能だ…

やれやれ、冒頭からくどきの文面なんて本意ではないのだが、軟弱な中高年の自分にはこんな形でストレスを発散するしか思いつかないのが悲しいところ…
お許し願いたい(謝)

さて山響酒田定期も早いもので16回目となる。今回の指揮者のお二人は定期演奏会ではめったに聴けないが、確か工藤氏は2008年12月の第8回以来だと思う。大井氏は多分希望ホールは初めてなのではないだろうか。
工藤氏は2001年に山響指揮者に就任して今回で退任するとのこと、Tp奏者の佐藤裕司さんも定期公演のステージは今回がラストだそうで、今後はゼネラルマネージャーに専念するらしい。卒業という言葉を使っていたが皆さんの前向きな姿勢に勇気づけられる。

また、この日は客演奏者が多かったのだが、断然目立ったのがClの横川青児氏、言わずと知れた元N響の首席Cl奏者である。今回は山響首席Cl奏者の川上一道氏が、第81回日本音楽コンクールで1位を獲得したため、そのご褒美で全国演奏旅行に行っているため助っ人で出演されるのだそうだ。

今回の演目は工藤氏のメンデルスゾーンが初めに決まっていたそうで、大井氏は選曲に悩んだそうである。マルコム・アーノルドは名前も曲も初めて聴くが、20世紀のイギリスの作曲家だそうで映画音楽等も手がけているそうだ。代表作は「戦場にかける橋」でアカデミー作曲賞を受賞しているそうだ。元々はロンドンフィルの首席Tp奏者として活躍し後に作曲家に転身、晩年は認知症に苦しんだと言う…

曲自体初めて聴くが、あまり演奏されることが無い曲だそうだが、スケールの大きな曲で編成も大きい。特に第三曲は特筆もので、優しく穏やかな曲調は万人受けする美しい旋律であった。
2曲目のドボルザークは私ごときが敢えて書く必要はない曲であろう。
大井氏は次年度から山響の正指揮者として活躍されるそうである。期待したい。

大井、工藤両氏ともに以前は、仙台フィルの副指揮者として外山雄三先生の元で研鑽を積まれたそうだが、副指揮者のオーでションの際に自分のレパートリーを提出しなければならないのだそうだが、大井氏は博識ゆえに膨大なレパートリーを提出したら、選考の外山先生も知らない曲があったという有名なエピソードがあるそうだ。
本人曰く、あまり知られていない曲でも良い曲はいっぱいあり、是非機会があれば皆に紹介したいと思っているそうで、これも今から楽しみなことである。

休憩後はメインのメンデルスゾーンは、彼が最後に完成された交響曲で、言わずと知れた名曲である。工藤氏の地元でのラストコンサート、団員さんを初め観客も一体となったとても熱くて暖かい演奏であった。以前から感じていたのだが、工藤氏の指揮は実に無駄のない確実なもので、奏者も実に演奏しやすい指揮だと思う。派手さはないが見ていて確実にその曲の持つダイナミズムを的確にオケへ伝えていると思った。
終演後のカーテンコールは実に盛大なものであった。

卒業と言っても工藤氏は山響と縁が切れるわけではなくて、客演等での出演はあるとのことです。さらなる飛躍を期待したい。

   
交流会での様子