【山形交響楽団 庄内定期演奏会 第13回酒田公演】

  「帝政から社会主義国家へ」
@ボロディン/歌劇「イーゴリ公」より
  だったんの娘達の踊り・だったん人の踊り
Aプロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調作品19
  アンコール
  バッハ/無伴奏ヴァイオリン・パルティーダ3番から「プレリュード」
-----(休憩)-----
Bグリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
Cストラヴィンスキー/3楽章の交響曲
2011.05.15(日) 酒田市民会館希望ホール

指揮:飯森範親
ヴァイオリン:シュロモ・ミンツ
コンサートマスター:高木和弘

落ち着かない日常から異空間へのワープとでも表現しようか…
生演奏を聴くのは随分久しぶりな気がする。

日曜の午後4時開演なので、午前中の農作業で掻いた汗を近くの温泉で流し、3時20分からのプレコンサートに合わせて希望ホールへ向かった。開場前の入口には列が出来ておりびっくりしたが、ホワイエには既に椅子と譜面台がセットされていた。運良くベンチに座ることが出来たのが嬉しかった。
プレコンサートのメンバーと演奏曲を以下に記しておく。

@エルガー/弦楽セレナーデより第1楽章
Aグリーグ/悲しき旋律より第二曲『過ぎし春』
Bチャイコフスキー/弦楽セレナーデより第3楽章
C見上げてごらん夜の星を

1Vln:高木和弘、犬伏亜里
2Vln:ヤンネ舘野、蜂谷ゆかり
Vla:成田 寛、倉田 譲
Vc:小川和久、渡邊研多郎
Cb:柳澤智之


ホワイエでのプレコンサート

山響が誇る最強の弦軍団である。
チェロの小川さんがMCを務められていたが、少し緊張気味なのが伝わってきた。
私はビオラのすぐ後ろで聴かせていただいたが、目の前でプロ奏者の演奏を聴く機会はあまりないのでとても新鮮だったのだが、耳と言うより体全体で(音の振動も含めて)聴く、いやいや音を感じる感覚が楽しめた。

また演奏自体もとても素晴らしく、渇いた心に潤いが戻って来て、こみ上げてくるものを押さえるのが大変であった。
演奏は実に叙情性に富み、じわ〜〜っと心に響き渡り温もりに満ちたものであった。
やっぱり音楽は良いなぁ〜〜


さて、本番のプログラムは表題にもあるが、全てロシア人の作曲家によるもの、音楽監督がプレトークでロシアの5人組と言っていたが、ボロディン、キュイ、バラキレフ、ムソルギスキー、リムスキーコルサコフがこれに当たるそうだ。また日本にも3人組と言うのがあるんだそうで、黛敏郎、團伊玖磨、芥川也寸志なんだそうである。共にその国の音楽界を引っ張った存在なのだという。

この日の編成は1&2Vlnが仲良く並んだ配置で、Cbが4台で編成も大きく客演がかなり入っていた。またピアノとハープも入っており演奏前から楽しそうな雰囲気がした。
1曲目のボロディンの「だったん人…」は、有名な曲ではあるが生では初めて聴く。
早いテンポで始まり圧巻の演奏である。クラリネットのソロが印象的だった。楽団名簿によれば川上一道氏とあり、今回は客演首席奏者となっている。

2曲目のプロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲」は今年のさくらんぼコンサートでも演奏されるようだが、この日のソリストはミンツ氏、練習では「ファジーに」をテーマにしたそうだ。またミンツ氏からも、演奏がそろいすぎないようにとの注文があったそうで、今までとは違ったアプローチのよう…

演奏はヴィオラの繊細な音から始まる。(トレモロと言う技法らしい)そしてすぐにミンツ氏のソロが入る。恥ずかしながら初めて聴いた曲なのでよく分からないが、何というか決して美しい曲ではないし、むしろ不協和音の連続のような曲調で素人の私にはちょっと難しい曲であるが、良く聴いてみると時折はっと思うような綺麗な和音が響き渡る。そしてまた難解な音が…(笑)
これがファジーな音?…  そろいすぎない演奏?…

バルコニー席から見ていたら飯森さんの左手が一生懸命スコアのページを捲り続けていた。
後の交流会でお話しされていたが、演奏中にスコアがバラバラになりあわてて立て直そうとしたのだが、結局無理だったらしく暗譜で振ったとおっしゃっていた。いわゆるトラブルな出来事だったらしい。

そんなことより、特筆すべきはやはりミンツ氏の演奏、はっきり言ってこんな演奏聴いたこと無い。と言うか凄すぎる。ヴァイオリンという楽器のポテンシャルの高さを思い知る。
アンコールのバッハなんてホントにさらっと軽く弾いてくれた感じなのだが、その演奏たるや背筋がゾクゾクするほど美しかった。

3曲目の「ルスランとルドミュラ…」は、良く耳にする曲だが、この日の演奏はテンポが通常よりかなり速い感じがした。疾走感と言うか躍動感あふれる演奏で、弦楽器群のボウイングもばっちり合っていて小気味よい演奏だった。クラリネットのソロがGoodでした。

4曲目の「3楽章の交響曲」、これも初めて聴く曲だった。ストラヴィンスキーはあまり馴染みがないのだが、バレエ音楽、「春の祭典」とかは聴いたことがある。飯森さんの解説によれば作風を頻繁に変えた作曲家だったというが、今回の作品は1945年の作曲だそうでアメリカ在住時の作品だ。
ピアノが冒頭から活躍する作品で、後にハープが絡んでフルートも大活躍する。

素人にはちょっと難しい作風で最初戸惑ったが、聴いている内にだんだん楽しくなってきた。何と言うか各パートの首席奏者の活躍が嬉しかった。
聴いている内に、やっぱりストラヴィンスキーの曲だなと言うフレーズが、何回か聞こえてきた。

終演後の交流会にはミンツ氏の姿はなくちょっとガッカリ、体調がイマイチのようでお帰りになったとのこと。飯森さんのQ&Aコーナーのような感じ…
来年は山響設立40周年の記念すべき年なのだそうで、今からその準備というか企画に奔走しているそうだ。楽しみである。