【山形交響楽団 庄内定期演奏会 第12回酒田公演】

  「霧につつまれた音楽」
@ヴォーン=ウィリアムス:トマス・タリスの主題による幻想曲
Aブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調作品26
-----(休憩)-----
Bウォルトン:交響曲第1番変ロ短調
2010.12.17(金) 酒田市民会館希望ホール

指揮:藤岡幸夫
ヴァイオリン:二村英仁
コンサートマスター:高木和弘


気が付けば師走も押し迫り慌ただしい日々が続く。気持ちも体も余裕がなく、ささくれ立った心を慰めるべく希望ホールに向かう。駐車場はほぼ満車だが客席はかなり余裕があった。
平日の午後七時開演とは言え、なかなか会場に足を運ぶには難しい時間帯でもある。しかし以前は六時半開演だった事を考えれば少しは改善されたのだろう。会員チケットの事前交換に並ぶ人達も少なからずいるが、そう言うのはコアな人達であって、このご時世の中でサービス残業もせずに会場に足を運ぶことは、ある意味贅沢な事なのだと思う。
でもそのくらいの楽しみがないと人間おかしくなってしまうのでは…

指揮者の藤岡氏は希望ホールでは二回目の登場、前回はショスタコーヴィッチをメインにマリンバの三村奈々恵さんと共演したものと記憶している。少し遅れて会場入りしたのでプレトークは始まっていた。
今回の公演は「霧につつまれた音楽」と副題が付いているが、藤岡氏は英国音楽を得意としており、また自身も英国でキャリアを積まれた方でもある。ヴォーン=ウィリアムス、ウォルトン共に英国の作曲家だが、ブルッフはドイツ人なれどウィリアムスとは師弟関係にあり、英国とは深い繋がりがある作曲家との事である。


一曲目のトマス・タリスの主題による幻想曲は、編成が変わっており初めて見るもの、管の入らない弦楽器のみの演奏だが、舞台上は左から1stVln、2ndVlin、Vc、Vla、Cbの通常の弦5部編成なのだが、変わっているのが通常管が並ぶ奥にも1stVln 2ndVln Vla Vc Cbが横一列に並んでいる。
これは音に遠近感をつけるという発想があったそうで、教会などの響きのある大きなホールが必要な訳で、希望ホールにピッタリの曲です。

事実、演奏は実に素晴らしいものであり、うまく言葉で表現できない聞いたことのないような音の響きであった。また同じオケでも指揮者が変わると音の色が違うのもよくわかった。飯森さんの音と藤岡さんの音…
終演後の交流会で、この曲の演奏中に事故があったと言う暴露話が藤岡氏からあった。
全然気付かなかったのだが…


二曲目のヴァイオリン協奏曲は、二村英仁氏の登場、えいじんと読む。
この曲はブルッフの作曲したヴァイオリン協奏曲三曲の内で一番演奏される機会の多い曲だそうで、とても有名なものらしく28歳での作曲と言う。
晩年にブルッフはベルリン音楽大学の教授になり、ヴォーン=ウィリアムズは彼のもとで作曲を学んだとのこと。

演奏はティンパニの静かなパンパンという音から始まる。
最近の山響の演奏会ではヴァイオリンのソリストは女性の方が多く、中年のおじさんには少し違和感があった(笑)
しかし演奏は素晴らしいもので、さすが世界を股にかけるソリスト、アクションも大きくオケとの掛け合いもGOODです。
山響の誇る首席奏者の独奏も素晴らしく、各楽器が絡み合うように時が流れていく至福の時間を楽しむ事ができた。
終演後には震えが来るほどの静寂が暫く続き、その後に盛大なカーテンコールが湧いた。生演奏の醍醐味を味わう瞬間である。たまらない…


休憩後のメインはウォルトンの交響曲第1番、今日は客演も多く編成が大きい。後列には5人のHr奏者がずらりと並び、Tpも3人並ぶ。またその奥には2人のTimp奏者とドラと大シンバル、Tubも見える。これらのことから相当賑やかな曲だと思った。
視覚的には賑やかだが、曲の出だしは静かなティンパニから始まる。前の曲もそうだが、これは偶然なんだろうな(笑)

ウォルトンは正規の作曲教育を受けなかった人だそうで、あちこちにパクリが伺えるそうだ。もっともそんなことは当時も今も特別珍しいことではないそうで、後年にはジョン・ウィリアムズなども、スターウォーズでウォルトンの作風をパクっているし、私たちの年代にはわかるサンダーバードの音楽も、この作品からパクっていると(笑)藤岡氏が申しておりました。聴いているとなるほどと思える箇所が…

また、不協和音を効果的に使った曲だそうで、私のような素人には聞きづらい音も確かにありましたな…
全体的に難しいイメージの曲なのかと…
しかしこの曲は聴く者をグングン引きつける魔力があります。藤岡氏の指揮も大きなアクションでオケや聴衆をアジテートします。静と動、散漫と調和、音楽とは何と素晴らしいものか、音という魔物が人々の心根を刺激し発生させるダイナミズムが、渾然一体となり会場に充満していく快感は、その場に身を置く者にしか理解できない素晴らしい感覚である。

藤岡氏の熱演に癒された有意義な時間でありました。
感謝!!


交流会での各氏