【山形交響楽団 庄内定期演奏会 第13回鶴岡公演】

ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37

-----(休憩)-----

ドボルジャーク:交響曲第8番ト長調作品88

2009.08.22(土) 鶴岡市文化会館

指揮:阪 哲朗
ピアノ:田部京子
コンサートミストレス:犬伏亜里



カラッとした夏が来ないうちに秋の雰囲気が漂う今日この頃、運転中何気なく見上げた青空に伝書鳩の群れが見えた。すぐに少年時代に飼っていた鳩の姿が脳裏に浮かんだが、不思議なことに、懐かしさとは裏腹に感傷的な気分になっている自分に気づき苦笑した。
世話した鳩達が大空を飛翔する姿を当時の自分は、無事に鳩舎に戻ってきてくれるのか、不安な気持ちを抱えたまま見上げていた記憶がある。

山響の庄内定期は鶴岡の方が最初に始まり、希望ホールが完成してから酒田公演も始まった。残念ながらこの日まで鶴岡公演は聴いたことが無く、文化会館も恥ずかしながら初めて訪れた。長く庄内に暮らしているが、不思議なことに鶴岡には縁が薄く、訪れる機会もあまり無い。友人知人も多くはないので今もって地理不案内なのだ。

以前から言われていたのだが、鶴岡公演の観客は実際少ない。この日もステージ最前列から8列目まではほとんど空席、回れ右してもかなりの空席が目立つ。これではさすがの団員さん達もモチベーションが…
いやいや、それは杞憂であった。

この日の指揮者は首席客演指揮者の版哲朗氏、私は初めて聴く。コンミスは亜里さん、高木さんがフォアシュピラーを努める珍しい配置である。弦はヴァイオリンがステージ両翼を担う対向配置、ヴィオラのトップは倉田さんだ。おやっと思ったのがオーボエ、いつもの美女二人はどこに行ったのか見えない。男性二人の内、一人は以前団員だった竹屋智さんだ。
おおお、懐かしい。というかお帰りなさいだよね(笑)

阪氏のプレトークが始まる。今回の作曲家は皆イギリスに縁が深いとのこと。私は全て初めて聴く曲ばかり、でも皆超の字が付くほどの名曲だ。
阪氏は京都の出身だそうだが、両親共に山形県の出身、鶴岡も幼い頃に訪れたことがあるそうで非常に懐かしがっておられた。

演奏が始まり阪氏の指揮を堪能する。指揮棒を持たないスタイルを私は非常に好きなのだが、有名どころは世界のオザワ…
阪氏の体全体を使った指揮も実に流麗であった。もちろん演奏も素晴らしかったのは言うまでもない。
ただ残念なことに、この日の演奏会をもって阪氏は山響の首席客演指揮者を降りるとのことであった。ヨーロッパでの活動が忙しくなるのがその理由らしいが…
1曲目のウェーバーはとても綺麗な曲であった。

続いてステージ上にピアノが運び込まれる。古いホールなのでステージも狭く、スタインウェイのグランドピアノが縁ギリギリに置かれた。続いてブルーのドレスが鮮やかな田部さんが登場、演奏が始まる。
ベートーベンのピアノコンチェルトは、恥ずかしながら5番くらいしかまともに聴いたことがないが、3番も実に良い。

田部さんのピアノも初めて拝聴したが、オケとの相性も抜群で実に気持ちの良い演奏だった。特に第2楽章の美しさは鳥肌が立った。


休憩後のドボルザークの8番は有名な曲だがこれも生では初めて聴く。ドボルザークは優れたメロディーメーカーでもあり、いっぺん聴くと忘れられないフレーズが多いと言う。
阪氏の指揮は優しい人柄(多分?)が実に良く現れており、団員さん達に信頼されているのが良く理解できた。
ホールの音響は決して誉められてものではないが、山響の演奏クオリティーは高くとても素晴らしいものだったと思う。

ドボルザークの作品は9番の「新世界より」があまりにも有名だが、8番だって決して負けていない良い作品だと思う。以前は「イギリス交響曲」と呼ばれていたそうだ。何でかな?と調べてみたら、出版社の変更によるものらしい。つまりイギリスの出版社(ノヴェロ社)から出版した初めての作品なのだそうだ。ドボルザークはチェコの人だから、まあ色々トラブルがあったんでしょうな…

鶴岡公演は会場の都合か終演後の交流会は行われない。これはファンとしては非常に残念なこと、県民会館での定期でも、行ったことはないが多分無いのではなかろうか。唯一行ったことのある第九の演奏会の時は無かったよなぁ…

開演前の指揮者によるプレトークでの楽曲解説や、終演後の指揮者とソリスト等による交流会、そしてサイン会は演奏者にとっては非常に負担が大きいものと思う。でも現音楽監督の飯森氏の強い要望で始まったものと聞き及んでいる。日本中の、いや、世界中のオケでこんな素晴らしい事をやっているのは、我らが山響だけだと思う。
是非鶴岡公演でもお願いしたいと思うのは、私の我が儘なのだろうか…