【ジャン=マルク・ルイサダ ピアノリサイタル】


ショパン:3つのノクターン Op.9
ショパン:2つのノクターン Op.27
ショパン:ノクターン Op.48-1
ショパン:2つのノクターン Op.62
バッハ:フランス組曲 第5番 ト長調 BWV.816
--- 休憩---
シューマン:子供の情景 Op.15
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番ヘ短調「熱情」Op.57

2009.06.10(水) 希望ホール

Piano : Jean-Marc Luisada





久しくピアノのソロ演奏を聴く機会がなかったので聴いてみた。もちろん、ルイサダは初めて聴く。非常に個性的な演奏家という前評判もあり楽しみにしていた。
今回の来日公演は当初ショパンのノクターン全曲演奏と言うプログラムだったらしいが、気が変わりバッハ、シューマン、ベートーヴェンを入れたらしい。これにはルイサダ自身が”聴衆にメランコリーで悲痛な音楽を強いることになる”と変更理由のコメントを書いている。

この日の演奏会は地元金融機関が協賛しており、招待席がかなりの比率を占めていたように見受けられ、一般客は良い席を取ることが難しく私は一階のかなり前での拝聴となった。
このホールに何度か足を運ぶと好みの席が出来てしまい、我が儘になった自分を意識して苦笑したのだが、でも折角の演奏会は多少お金が掛かっても良い席で楽しみたいと改めて思った。

にこやかな笑顔で会釈しながら譜捲りの若い男性と共にルイサダ氏が登場する。椅子に座るとすぐに演奏が始まる。ショパンのノクターンはほとんどの人がどこかで耳にしている程有名な旋律である。耳が音に馴染むまでかなりの時間を要したのは、普段の怠惰な生活の証左であろう。曲間に挟む聴衆の無意味な拍手に客層のレベルを窺い知ることが出来たのだろう、始めは愛想笑いで制していたルイサダ氏も何度目にかはムッとした表情…
まあ、仕方ないのかなぁ〜

演奏は実に多彩であり何と言うか…
その細くしなやかな指先から放たれる音の魔術に完璧に填る。
ちょっと聴いたことがない優しく美しいタッチからくり出されるショパンの音は、感嘆と憧れが入り交じり目を閉じて聴き入る。何と言う表現力だろう…

スゴイ!!

バッハの音はまた違った感じ、何が違うのか言葉では…
JW-CADがバッハで、AutoCADがショパン、なんて喩えでは誰もわからないだろうな(笑)
作曲家が音を紡ぐときの時代背景や生活環境も当然影響しているのだろうが、人間の個性というのは面白いものである。などと具にもつかぬ事を考えながら聴いていた。

休憩後のシューマンとベートーヴェンも、これが同じピアニストかと思うほどある意味独特な音を聴かせてくれた。中でもベートーヴェン独特の特徴あるメロディーラインを奏でる表現力は、今までに聴いたどのピアニストとも違う感性を感じた。
生身の人間が奏でる音楽の可能性は無限であると、改めて感嘆せずにいられない素晴らしい演奏会であった。