飯森&山響 モーツァルトシンフォニーサイクル
   「アマデウスへの旅」 第2年
   交響曲全曲演奏 定期演奏会 Vol.6


2009.02.28(土) 山形テルサホール

指 揮:飯森範親
ピアノ:田村 響
コンサートマスター:高木和弘
ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488

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交響曲第6番ヘ長調K.43

交響曲第27番ト長調K.199

今シーズン最後のモーツァルト定期、会場に着くと、らびお氏と中爺氏が仲良く外で一服していた。実に微笑ましい光景だ。
今回のプログラムは秀曲揃い、個人的にも好きな曲ばかりだ。後半2曲は、めったに生では聴けない曲だそうな。

1曲目のピアノコンチェルト23番は、故郷ザルツブルクで大司教とケンカ別れし、ウィーンでの独立生活を始めた頃に作曲されたもので、全3楽章からなる。
この日のピアニスト田村氏は若干22歳、2007年ロンティボー国際コンクールの優勝者で、どんな音を聴かせてくれるのか非常に楽しみにしていた。

過去に山響と共演したピアニストは(私が聴いた限り圧倒的に女性が多いと思われるが)皆かなりインパクトのある演奏だったような記憶が残っている。
今回の演奏は、良く言えばオケと上手く釣合の取れた協奏曲らしい演奏、変な言い方をすれば、男性の演奏とは思えない実に穏やかで、やわらかな演奏と言った感じ…

これは決して田村氏の演奏を否定しているのではない。この曲の曲調に合わせて細部まで配慮の行き届いた、実に優しく美しい演奏だったということである。

ピアノコンチェルトでのピアノ演奏は、オケをグイグイ引っ張っていくようなイメージが私の中にはあったのだが、今回の演奏は、ピアノがオケの中の一つのパートとして完全に調和していた。少し物足りなさを感じる方も中にはいたかも知れないが、このような演奏もまた実に良いものである。

特に第2楽章での哀愁を帯びたタッチは、女性でもなかなか表現出来ないような、叙情性豊かなとても素晴らしい演奏だったと思う。
飯森氏も絶賛されていた。
鳴りやまぬ拍手にアンコールを一曲、メンデルスゾーンとのこと。


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続いての6番は、アマデウス11歳の時の作曲で、天然痘にかかりながらの作曲だったらしい。以前やったK.76と同じ時期の作曲なのだろう。
前回の飯森氏の解説では、K.76は常識では考えられないような和音や曲調に、とまどうようなことを言っていたが、聴いてみたらとても自分好みのメロディーだった記憶が残っている。(筆者の感覚が変わっているのだろう…)

6番も同様で、11歳での作曲などとは到底信じられない。
楽器編成もシンプルで、管楽器はオーボエとフルートのみ、打楽器はない。
小規模な編成ながら構成は随所に工夫も見られ、今聴いても斬新と思える箇所もあった。全4楽章の構成である。

この頃の作品は、演奏される機会も非常に少なく聴く方にすれば実に貴重な経験、いくら天才の作品といえども後期の作品と比較すればシンプルで、私のような素人耳にはかえって聴きやすい。逆に言えば編成が小さいため、演奏者もごまかしが効かず(喩えです)難しいのだろうが…
この日の山響の演奏は非常に明確でわかりやすかった。弦楽器の音はピリオド奏法が非常に美しく素晴らしかったです。

続いての27番は17歳での作曲とのこと。ちょうどイタリア旅行から帰ってすぐの作曲だそうで、思いっきりイタリアの影響を受けているものだそうです。
編成はオーボエとホルンが入れ替わっただけで、この曲も非常にシンプル。しかし前曲と比べれば六年の歳月の重みを十分に感じさせてくれるものだった。モーツァルト独特の速いパッセージが印象的で、構成もかなり複雑になっている。全3楽章の構成である。

今回でモーツァルト定期は二年目が終了、6回のコンサートを聴いたわけだが、35年の生涯で残した膨大な作品から見たらほんの僅かな曲しか聴いていないのだろうが、飯森氏のバランス良い選曲のお陰で、全体的な流れがつかめたように思う。
天才による膨大な作品群とはいえ1人の作曲家が年々成長し変貌していく過程が、飯森氏の解説により少しずつ見えてくる面白さは、今後6年続くのだが、どのような展開になっていくのか実に楽しみである。


交流会では半袖姿のマエストロ、来シーズンから作曲家の西村朗氏が山響コンポーザーインレジデンスに就任されるそうだが、今から「あまり難しくない曲」を作曲してくださいとお願いしているそうだ(笑)
尚、西村氏は4月からN響アワーの司会も担当なさるそうです(まだ公にはなっていないそうだが…)

この間買ったCDにあわよくばサインを貰おうと思っていたが、事務局から巻が入りインタビューが終わると飯森氏は逃げるように走って会場を後にした。(身軽である)
何でもその日の内に東京で予定があったらしい。

次回飯森さんの指揮を見れるのは7月の酒田定期かな?


田村氏へのインタビューも彼の人柄がよく判り実に良かった。今もまだ海外留学中の身、今後の活躍を大いに期待したい。


   
交流会での田村氏(左) と 飯森氏(右)