飯森&山響 モーツァルトシンフォニーサイクル
   「アマデウスへの旅」 第2年
   交響曲全曲演奏 定期演奏会 Vol.5


2008.10.10(金) 山形テルサホール

指 揮:飯森範親
フルート:足達祥治
ハープ:内田奈織
コンサートマスター:高木和弘
交響曲ヘ長調K.76
フルートとハープのための協奏曲ハ長調K.299
アンコール:アルルの女からメヌエット
        ---- 休 憩 ---

交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」


私事、公私とも何かと忙しなく過ごしている。平日のテルサへ酒田から通うのもかなり辛い物があるが、人間働いてばかりでは息も詰まる。一緒に行く予定の友人はすったもんだのあげく結局ドタキャン… ああ、もったいない。
何故かしら私の友人達には、なにかにつけドタキャンする人が多い。

最近気に入っているバルコニー席を受付で希望したら幸いにも前の方が空いていた。かなりステージに近く演奏者の表情もよく見える。客席は空席が少し目立つ、平日だもんなぁ〜
恒例の飯森氏のプレトークが始まる。

1曲目の交響曲ヘ長調は、5番と6番の間アマデウス11歳での作曲らしい。今もって贋作の説もあるそうで、飯森氏曰く「常識的なところがない作品」、相当変わった曲だという。
ウィーンで天然痘に冒されながらの作曲だったと言うことだが、普通の人は天然痘に罹ったら作曲なんかしないでおとなしく寝ているものだと思うが、やっぱりそこは天才なのだろう…
通常の和音構成から外れたような箇所を今回は敢えて強調して演奏するとのこと。

続いて2曲目の奏者お二人が舞台に登場しお話を聞く。ハープの内田さんはバンビのような細いおみ足が… もちろんとても美しい方です。
足達さんは山響の誇るフルート首席奏者、いつも大変素晴らしい演奏を聴かせていただいている。作曲当時の楽器は現在の物とは比較にならないほどお粗末で、音程も音量もかなりひどかったらしく、もしアマデウスが現在のフルートやハープの音を知っていたならばきっともっと素晴らしい曲になっていただろうみたいなことをおっしゃっていた。

3曲目の「リンツ」はハイドンの影響をかなり強く受けた作品、1783年にザルツブルクへの里帰りの途中立ち寄った街リンツで、たった4日間の短時間で仕上げたものだと言う。
信じられない…
個人的にはかなり好きな曲で、CDでは何回も聴いたが生は初めて、今回非常に楽しみにしていた演奏である。

いつものように艶やかなドレスに身を纏った女性奏者達が華やかに登場する。今日もコンマスは高木氏、すぐに1曲目が始まる。プレトークのイメージで聴いていたのだが、この曲初期の作品では珍しく全4楽章からなる。確かに不自然かなぁと感じる箇所はあるものの意外とすんなり入ってきた。
んんん… この曲良いよ。
実に聴きやすい。私は好きですね。

続いてステージの編成が代わり巨大なハープが大の男二人に抱えられ指揮者の上手に据えられる。
ハープの演奏は以前響ホールで吉野直子さんを聴いたことがある。あの時はベルフィルのバボラーク氏のホルンとのデュオだったが、本番中にハープの弦が突然切れると言うハプニング付きであった。

若い頃、知り合いの子がアルパを習っていて、演奏会を聴きに行った事を懐かしく思い出す。ハープはかなり高度な演奏技術を要する物との認識がある。ペダルがいっぱいあり手ばかりでなく足もひっきりなしに動かす。美しい女性が優雅につま弾くものとのイメージが強いかも知れないが、実際はかなりハードな演奏スタイルなのだ。

演奏が始まると足達氏の流れるようなとても素晴らしい演奏に鳥肌が立つ。バックのオケも弦楽器群が極端に少なくなり寂しいが、ソロ二人の音が実に心地よく絡み合いとても見事な演奏だった。カデンツァも素晴らしかったです。
鳴りやまないカーテンコールにアンコールを一曲、名曲アルルの女からメヌエット…

この名曲は、小学生の頃に給食の時間になると決まって校内放送で流れたのを今でもはっきり覚えている。その頃は音楽なんて特別興味もなく、何を考えていたのか全然覚えていないが、この曲のフレーズだけは今でもはっきり記憶に残っている。
パブロフの犬とおんなじかなぁ…(^^;)

アンコールが始まった途端、なんか例えようのない不思議な気持ちになった。
いろんな記憶が巨大なダムからあふれるように心の中が濁流状態。
いやいや悪い意味ではなく…
現在中年として生きている自分を幼い日の自分がどこかから覗き見しているような変な感覚…
うまく説明できないけれど、偶然とも言える「メヌエット」との再会は、心に残る大変素晴らしいものでした。(← なんのこっちゃ(汗))


(休憩)--- (休憩) ---(休憩)


この日の飯森氏は全曲指揮棒を持たずに指揮した。素人目にはこっちの方が良い感じ、どんな感じで使い分けているのかわからないが、小編成の時だけかしらん?
なんか指揮姿が優しく感じられる。んでも今回かなり近い所(真横上)から飯森氏の表情を見てたら、かなり険しい表情が時々…
凄みと言うか、変な喩えで恐縮だが恐怖感を覚える場面もあった。

「リンツ」はCDで何度も聴いたとても好きな曲である。山響の「こだわり」でもある古楽器、特にトランペットとホルンの音色は、あれっと思わせる箇所が随所にありとても新鮮に聴けた。
真上に近い視点でオーケストラを見るのも新たな発見があり楽しかったが、いつもは見ることの出来ない指揮者の表情もつぶさに見れとても勉強になった。

以前一度だけゲネプロを拝見したこともあるが、奏者への的確な指示と見事な構成、、グイグイとオケを引っ張っていく強力なカリスマ的統率力、そして全てのパートを聞き分けながらの繊細なボディランゲージ、改めて指揮者というものの難しさと素晴らしさをきっちり見せつけられた演奏でした。

いやはやホントに冗談抜きですごいものです。



   
演奏後の交流会で 内田さんと足達さん


   
飯森さんと 何故かYBCの金本アナウンサーが…