飯森&山響 モーツァルトシンフォニーサイクル
   「アマデウスへの旅」 第2年
   交響曲全曲演奏 定期演奏会 Vol.4


2008.08.02(土) 山形テルサホール

指 揮:飯森範親
ソプラノ:飯田みち代
合 唱:山響合唱団(仮称)
コンサートマスター:高木和弘
交響曲ト長調K.Anh.221「旧ランバッハ」

アリア「私は、あなたに明かしたい。おお、神よ」K.418
モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K.618
アリア「ああ、情け深い星たちよ、もし天にいて」K.538
アンティフォナ「レジナ・チェリ」ハ長調K.108

        ---- 休 憩 ---

交響曲第33番変ロ長調K.319


この企画も二年目に突入した。七年後のサプライズを期待しているわけではないが、今シーズンも会員権を購入し出かける。
が、公私ともに要領が悪く効率的な仕事ができないワタクシメは何にも予習できなくてぶっつけ本番の失礼極まりない観客となった。

1曲目の旧ランバッハは、Anhが付いている。
1923年オーストリアのランバッハにある修道院で発見されたパート譜写譜に、1769年モーツァルトより贈られた旨の記載があり、その後お父さんの作との説もあったが結局今はアマデウス作と言うことになっているらしい。今後また紆余曲折があるかも知れない作品だと言う。

アマデウス10歳の時の作品で全3楽章の構成である。もちろん私は初めて聴いた。弦楽器群にオーボエ、ホルンの楽器構成、特筆すべきは第2楽章、本当に心地よい曲調で催眠効果があるように思われた。同行の友人も気持ちよい睡魔に襲われたと証言している。退屈で眠くなるのでは決してなく、曲が穏やかで本当に心地よいのだ。音楽の不思議な力を改めて思い知る。

続いてステージの配置換えが行われ山響合唱団(仮称)が後列に並んだ。
この合唱団は山響専属で、音楽監督に岩手大の教授である佐々木正利氏、合唱指揮者に渡辺修身、山大准教授を迎え、お二人がオーディションで選考し今回のデビューとなった。
初回でこんなにレベルの高い合唱団に仕上がったのも両氏のお陰と、飯森氏はいたく感激しておられた…

本日の独唱はソプラノの飯田みち代さん、少し経歴が変わっていて、京大を卒業後NTTに就職され、その後プロの歌手になられたそうで、クレバーな歌を歌われる方と飯森氏から紹介があった。
このシリーズで歌唱が入るのは今回が初めて、モーツァルトはオペラも多く作曲しており、このシリーズは今後7年も続くので、交響曲だけではなく歌唱も多く取り入れて飽きない構成にしたいと音楽監督が申された。合唱団もこれからますます活躍する場が増えるのだろう。

ステージは飯田さんのアリア、合唱団のモテット、再度飯田さんのアリア、最後に合唱団との一緒のアンティフォナと続いた。アンティフォナとは合唱団を二つに分けて交互に唄い交わすスタイルの聖歌のことだそうな。
更にモテットとは、ミサ曲を除く多声宗教声楽曲とのことだそうな。(←オラには良く理解できないf(^^;) )
ちなみに今回演奏された「アヴェ・ヴェルム・コルプス」は今秋発売予定の山響CDに収録予定とのこと。

今回テルサのバルコニー席で初めて聴いたのだがなかなか良かった。が、このホールの特性で、肉声が妙にこもる感じは否めなかったのが正直な感想、録音は問題ないと思うが少し残念だった。
しかし、合唱は素晴らしくオケとの息もぴったりで今後の活躍が本当に楽しみだ。
もちろん飯田さんの歌唱も素晴らしく、久々に聴いた生のソプラノは鳥肌が立ち、改めて人間の声の素晴らしさを実感した。

休憩を挟んでメインの交響曲33番、1779〜81年の間にザルツブルグで書かれた3曲の交響曲の一つで、この辺の作品からモーツァルトの交響曲はかなり複雑な構成となっていったのだそうである。33番は恥ずかしながら初めて聴いた。
飯森氏の解説によれば第2楽章は特に深く、当時のモーツァルトの様々な想いが読みとれるそうだ。

編成はオーボエ、ファゴット、ホルンの木管に通常の弦楽器群、非常にコンパクトな編成である。第1楽章は結構インパクトのある出だし、3/4拍子のリズムが心地よい。問題の第2楽章は明らかに今までこのシリーズで聴いた曲調と違う印象がした。
モーツァルトの前期の作品は楽器構成も和音もそんなに複雑ではなく、ましてや今シリーズは弦楽器はピリオド奏法、さらにナチュラルホルンなどの古楽器の使用と現代のオケの音とはかなり違った音造りなのだろうが…

そんな中で聴いた第一印象は、深い霧に包まれた森の中を歩いてるような感じ。
異空間で暮らす人間が同じような感覚を共有できる音楽の素晴らしさと不思議さ、モーツァルトが生きていた当時、どんな想いの中でこの曲を創りだしたのだろうか、天才とは言うものの人間であることは間違いなく、様々な葛藤や喜び、恋する者への切ない想い、あるいは怒り…
人生とは戸惑いながら手探りで進んでいくもの、明日の事なんて誰にもわからない。
そんなことをぼんやりと考えながら聴かせていただいた。

今回の演奏会はチェロと第2ヴァイオリンの首席が客演であった。
なんでだろう…?

終演後の交流会は結構の人だかり、合唱団参加の山大の可愛い女の子たちが指揮者のサインを貰いたくて並んでいた。その後に続くのも結構勇気のいることだったけど、売店でブラームスのドイツレクイエムのCD(レコード芸術誌特選盤)を仕入れ、厚顔にもサインをいただく、握手していただく際に「響ホールでお待ちしてます」と言ったらニコッと笑顔の返事、庄内国際ギターフェスティバルでの素晴らしい演奏を楽しみにまだ明るい中(笑)酒田への帰路につく、そう言えばこの日は酒田の花火大会、余目の辺りで大輪の華が見えた。