響おしゃべりクラシック vol.5

【三村奈々恵 マリンバ&ヴィブラホンコンサート】

第1部
・シンコペイティッド・クロック(アンダーソン)
・タイプライター(アンダーソン)
・子供の領分より「ドクターアドパルナッスム」(ドビュッシュー)
・ガナイア(マティアス・シュミット)
・Colombia Tierra Querida
・El Grito
・剣の舞(ハチャトウリヤン)
-----(休憩)-----
第2部
・グラシアス(三村奈々恵)
・オペラ「カヴァレリアルスティカーナ」より間奏曲(マスカーニ)
・24の狂詩曲より(パガニーニ)
・てぃんさぐの花
・プラーナ(三村奈々恵)
・リベル・タンゴ(ピアソラ)
・バイ・バイ・ブラジル(カチューリス)
アンコール
・???(三村奈々恵)
・ラ・カリファ(エンリオ・モリコーネ)
2008.05.09(金) 響ホール

マリンバ&ヴィブラホン:三村奈々恵
ピアノ:塩入俊哉
パーカッション:菅原裕紀



2007年冬に山響と共演した際の情報で、この日のステージを知り心待ちにしていた。チケット発売初日に買い求めたのは、このホールの特等席のつもり。だが当日受付でチケットを見たら「あー8」

ありっ???

何と最前列中央であった。たぶん販売窓口の人が渡す際に間違えたのだろうが、その場で確認しなかったこちらにも非がある。
しかしながら、美人の誉れ高きマリンビストを目の前で見れて私はとても嬉しかった。

マリンバと木琴の違いを実は私も良く知らない。この日のパンフレットによれば、一言で言えば木琴の巨大ヴァージョン、しかし木琴よりかなり低い音までカバーしているそうで、三村さんが使用している楽器は5オクターブあるそうだ。幅は3mくらいとのこと。
まだ日本に入って来てから60年位しか経っておらず、原型はアフリカで生まれ、中米のコロンビアやグアテマラ?の辺で発達してアメリカに入ったそうである。

マリンバの演奏で皆さん知っているフレーズは、NHKの料理番組「今日の料理」のオープニングテーマで♪タッタカ タカタカ タンタンタ〜ン♪と、坂本九の「上を向いて歩こう」のイントロ、実演入りで解説していただいた。

三村さんは3歳からマリンバを始め25歳でデビュー、その間ずっとクラシックオンリー、アメリカに留学してからジャズを含めた色々な音楽に出会い目覚めたそうである。この日のメニューは実に多国籍で変化に富んだ選曲構成であった。

第一部はアメリカの有名な曲を初めに持ってきて、ドビュッシーで一息入れ、アフリカ、中米のトラディッショナルな音楽を聴かせてくれた。
マリンバという楽器のルーツから発展過程、そして現在に至るまでを楽しいトークを交え紹介してくれたのだ。

ステージ最前にはマリンバとヴィブラフォンが二つ仲良く並び、向かって左奥にピアノの塩入さん、右奥にパーカッションの菅原さんの配置、三村さんは白のパンタロン?姿で颯爽と登場、ご自慢の長い黒髪はアップでセットしていた。額の露出度が高いと笑顔がとても眩しくクラクラする。
まあ音にはあまり関係ないことだが・・・

最前列では息遣いまではっきり聞こえる。一応クラシックコンサート(おしゃべりシリーズ)、ステージは何の装飾も無し、ただ三人が離れているためかモニタースピーカがあり、最前列からは少し視界を遮る。
トリオ編成でのプレーのベースは多分ジャズだろうか?
いやいやそんな生やさしいものではない。貪欲にアクティブに、そして軽やかに、全てのジャンルの音を見事に奏でる。

第二部でのマスカーニやパガニーニのマリンバソロでの演奏は、さすがに彼女の表情は別人(ストイックな演奏とは本人談)
ヨーロッパの音楽は貴族社会で磨かれたもの、それに対して中南米や沖縄のものは、全てではないにしても庶民の生活の延長線上に成り立っているように思うが、どっちが優れているかなんて考えること自体ナンセンス。音楽は実際聴いて心に響く何かがあれば何でも良いと個人的には考えている。

中南米の人達は我々日本人とは音楽に対する感覚が全然違い、とにかく賑やかで明るくリズミカル、独特のテンポのノリが心地よい。演奏時の彼女の表情は実に生き生きしており、クラシックとの差異を上手く現しているなと思った。

クラシックのコンサートで演奏者から「何でもいいから大声で叫べ〜!」と指示されたことは私の少ない経験では一回もないこと、竹刀で脳天をポーンと一本取られたような気がした。
何でもグアテマラか何処かの国民的楽曲だそうだが、大声で叫んでみると以外に気持ち良い。何と叫んだかはご想像にお任せする。

アルゼンチンタンゴのピアソラも良い感じ、最近というか以前に、小松亮太さんのバンドネオンとのコラボもあったような気もする。ラストはブラジルの曲、鳴りやまぬ拍手にアンコールは三村さん作曲のノリノリのピアノ曲、塩入さんとの連弾だ。
そして締めは冬に希望ホールでもアンコールでやった「ラ・カリファ」、この曲がこの人の真骨頂だろうな。

マリンバの魅惑的な音を言葉に替えるのは困難だ。実際自分の耳で聴くしかない。4本のマレットから放たれる響きは信じられない程の音の広がり。低音部は除夜の鐘のような響きと言ったら怒られるかな?・・・ 
実にまろやかで優しい響きだ。
私見だがアンコールでの他の音(pやper)は、なくても十分楽しめたような気もするが、いやいや、決して美人目当てで言っているのではないです(汗)
P&perがあったればこそのこの日のステージ、そしてアンコールですね。
とてもとても楽しいステージでした。