オラ家の田んぼ Vol-2


たわわに実った刈り取り前の「はえぬき」の稲穂


実りの秋である。
田んぼの稲穂も頭を垂れ黄金色に色づき収穫の時を待つ。
物心付いてから中年になる今日まで未だ庄内を長く離れたことはない。我が家の生業はご先祖様からの百姓、先代が残してくれた遺物が今も物置を我が物顔に占領している。

若い頃は百姓なんてやる気も継ぐ気もさらさら無かった。幸か不幸かこの地に会社勤めの職を得て現在に至っているが、いわゆるどっちつかずの兼業農家と呼ばれるのが今の我が家である。

最近先祖伝来の田畑を守ってきた老親にも衰えが現れ、否応なしに農作業に駆り出され、訳も分からず農業に取り組んできたが、昔からの農業経営が時代遅れとなり様々な改革の波が我が家にも最近押し寄せてきている。
もう少し若かったら全て専業農家の方に委託(丸投げ)し、もっとバリバリ稼げる職業を選択し家を出ていたかも知れない。

が、もう既に中年真っ盛りの自分にはそんな元気などあろう筈もなく、もう少しまじめに今後の農業というものを考えてみようかと、殊勝な気持ちになったこと自体、昔の自分を知る人達から見れば驚愕に値することであろう。つまりは超の字が付く程いい加減な人生を私はこれまで歩いてきたのだ。
かといって、これからは心を入れ替えてまじめに家業に専念しようと言うことでもない。そんなに簡単に人間変われるものではないのだ。

我が家で収穫された米は、これまで全量をJA(農協)に出荷してきた。つまり、JAとの出荷契約に従い米を作ってきたのだ。当然栽培技術もJAの指導?に従い行ってきた。以前は米の販売は食管法の縛りがあり、全て政府に管理されて横流しは犯罪であった。しかし現在は農家自身が販売しても違法ではない。米余りに手を焼いた政府は政策を180度変え、勝手に自分たちで売ったらいいと言う。

まあ、御代官様の時代から、お上のやることは、弱いものいじめと相場は決まっている。

独自に販売すると言うことはそれなりのリスクを伴うことは商取引では常識、昔の農家は法律に守られ、良い米を作ることに専念していれば何とか暮らせたのだろうが、今の現状で専業農家で家計を維持するのは我が家の規模では困難である。つまり外に弁当を持ち働きに出て合間に農作業する訳だが、最近の地方の景気は惨憺たるもので外で働く場所も少なく、中年ともなると新規の職を得ることは非常に困難だ。(リストラ候補No.1だが、残念ながらまだ失業したわけではない)

そんなこともあり、自然と農業に視線が移って行ったというのが正直なところで、改めて見てみると様々な疑問が浮かんでくる。

今まで生きてきて、ささやかながら様々な場所へ旅してきた。
その土地土地でいろんな名物や普通のものも食べてきたが、我が家で作った米より格段に美味いという米を今まで食べた記憶が無い。逆にこれはないんじゃないと言う米の記憶は何故か鮮明に残っている。

今年JAの仮渡し金額は1俵(60kg)当たり1万円そこそこ、中国では富裕層に日本の米がキロあたり1300円でバンバン売れているそうだ。何と我ら零細農家がJAに出荷する額の八倍近くの値段で売れるのだ。
商取引の原則は需要と供給、大昔学校で習ったような記憶が・・・・

まあ、中国の話は例外としても、この国の農業は一体どうなるのだろうか。
このままでは東北の農業集落、特に中山間地の2/3は、今後十年で多分消滅すると思われる。それは誰にも止めることの出来ないことなんだろうが、祖先から受け継がれてきた農村風景が消える事は、この国の国土形成と環境に想像も出来ない影響を及ぼすことになるだろうと私は考えている。


やれやれ、忙しくて山にも行けないから、心も重い病にかかってしまったようだ。
でも、今年のオラ家の米は上作で美味しいよ。



刈り取り作業中の一こま
背後は
鳥海山

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