エベレスト登頂記念 ―「エベレストの頂に立って」― 講演会



期日】 2007年7月1日(日)
【時間】 15時00分〜
【会場】 天童市市民プラザ多目的ホール
     天童駅ビル「パルテ」3階

いつも朝日で大変お世話になっている龍門小屋管理人のE藤さんが、エベレストの頂に立ったのが去年の5月17日、それから早いもので1年以上が経過した。
これまで何度も山の上で貴重なお話を伺ってはいたが、講演会という形では機会がなかったので良い機会と思いお邪魔した。

少し早めに会場に入るとE藤さん(この日の呼称は先生であった)の姿が目に入ったので、挨拶すると少し驚いた様子、こちらも山の上でのラフな服装の姿しか見たことがなくスーツ姿は初めて、正直少し面食らった。

会場には大きく引き延ばした登山中の写真が30枚ほど、アタック時に着ていたアウターや装備品の一部も展示されていた。開演まで少しの時間、直接解説していただいた。
講演会場に入り最前列に陣取っていると、中登隊のA.TOM隊長ご夫妻がひょっこり現れた。

ひょっとしたらとは伺ってはいたのだが、ビックリして手を振り挨拶、考えてみると先週も会っていたのだったとお互い苦笑い。
天童市長の挨拶の後に略歴を紹介され、いよいよ講演が始まる。

神様がくれたチャンスを逃すことなく必死に夢を追うひたむきな姿勢、
決して奢らず日々の鍛錬を怠らない努力、
自分が培ってきた技術を100%出し切る冷静な判断、
およそ50日間にも渡る人間が生存可能なギリギリの世界での忍耐、
それら全てを出し切っても成功率が25%くらいしかない中での、隊員とシェルパ全員での登頂成功という偉業、
生と死の間を彷徨うような過酷な下降と、絶対生きて帰るという強い意志、
そしてそれなりの代償・・・

実にリアルに語られた貴重なお話は、登山をやらない人が聞いても、その迫力が十分伝わる魅力的なものでありました。


ステージ上にプロジェクターで大きく投影された貴重な写真は迫力に溢れ、その解説を伺いながら見ていたら、自分がその場にいるような錯覚を覚えた。
と同時に、出来ることなら生きているうちに一度でいい、頂上なんて絶対無理だが、せめてベースキャンプのあたりから望まれるエベレストの頂を見てみたいと強く思った。
映像と合わせて総合的なお話を伺い、やっと山の上でお聞きした話とイメージがピタリ繋がり、一人ウンウンとうなずきながら気分はヒマラヤだった。

紹介された映像の中で、下山時にC3から撮影されたという写真で瞬間固まる・・・
もし神の領域というものが存在するなら、こんな風に地上が見えるのか?・・・
写真を見ているだけで体が軽くなるような気がし、フワリと浮き上がり、瞬間的にその場に移動、神の視線で天空から地上を俯瞰している、錯覚? 夢?・・・
自分が過去に、この景色をその場で見ていたような、デジャビュ?・・・
実に神々しい陽光が天空から差し込み、天地創造が今まさに、この瞬間から始まるようなダイナミズム溢れる光景だ。

実際のところ、登っている本人達にはそんな気持ちで景色を眺める余裕など全くなく、命からがら下ってきたというのが本当のところのようだったが、個人的には非常に強くこの写真に引かれた。

講演終了後、集まった皆さんからの質問が雨あられのように会場に舞った。
結局は「山」に関心のある人達が集まったのだろうが、中には並々ならぬ意欲を感じさせる方もおられ、もしかしたら山形県人で3番目に登頂と言うニュースが聞かれる日が近いのかもしれない。

「夢」は、「みる」ものでなく、「かなえる」もの、E藤さんから何度もお聞きした言葉である。
果たして自分の夢が、「かなえる」努力に値するものなのかはわからない。あるいは、自分にそのような強い思念を抱かせる夢が存在するのかも、正直のところ今は良くわからない。

ぼんやりと何気なしに考えている、いつかはこんな事をしてみたいな、という「想い」、それがある日突然実現可能な展開になってしまったとしたら・・・
自分を含めたマジョリティーは、一体どのような行動を起こすのであろろう。
十人十色、千差万別と言うけれど、人間という生き物の持つある種の本能という琴線に触れる怖さ、人は本来強い生き物であるという事実、いろんな想いが浮かんでは消える有意義で実りある一時でした。



装備品とフラッグ?

※登頂時に撮影された写真は、西川山岳会のHPに掲載されています。