----2007 酒田希望音楽祭----
【新日本フィルハーモニー交響楽団コンサート】

モーツァルト:歌劇 ≪フィガロの結婚序曲≫ K.492
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ長調 作品23
    ----- 休  憩 -----
ドボルザーク:交響曲第9番ホ短調 作品95 ≪新世界より≫
【アンコール】
スコットランド民謡:ダニーボーイ(ロンドンデリーの歌)
2007.06.26(火) 酒田市民会館希望ホール

指 揮:小林研一郎
ピアノ:仲道郁代
コンサートマスター:西江辰郎


酒田での新日のコンサートは4回目、毎回ホールは満員御礼になる。今年は「炎の指揮者コバケン」こと、小林研一郎氏を迎えメインは「新世界」、超有名な曲ばかりで、私のような素人にもとても聴きやすいコンサートだった。
実はコバケンさんの演奏会を聴くのは二回目で、以前は東京のサントリーホールで聴いたことがある。
非常にサービス精神旺盛な方で、独特の指揮は多くの聴衆の支持を得ており、日本を代表する指揮者である。
尚この日のホールもほぼ満員であった。

1曲目は定番の「フィガロの結婚序曲」、これはまあ多くのコンサートで最初に演奏される機会が多く、良い意味での音合わせ、最初は耳が慣れないのか堅い音に聞こえた。
終演後、すぐにピアノがステージ中央にセットされ、仲道さんが大きな拍手の中登場、準備が出来るやすぐにコバケンさんはタクトを振り下ろす。この人は待たせないのだ。

2曲目のチャイコフスキーのピアノコンチェルト1番は、知らない人を探すのが難しいほど有名な曲、でも生で聴くのは私は初めての経験だった。
予算不足?から1階の最後列の席だったためか音が少しデッド気味、にもかかわらず、しだいに体の中から沸き上がる熱い感動が自覚できた。第2楽章の繊細的美しさは、やっぱり生でなきゃ聞けない音、仲道さんの繊細かつダイナミックな演奏に魅了された。
止まないカーテンコールに何度もステージへ・・・

休憩後メインの「新世界」、もうあまりにも有名すぎる名曲、しかし、これも私は初めて生で聴くのだった。コバケンさんは完全暗譜での熱演、譜面台もステージ上にはない。2曲目はピアノの陰で見えなかったが、1曲目の時はちゃんとあったのだが、結局スコアは一度も開かなかったけどね・・・

もうこのくらい有名な曲になると、私のような音楽素人でもメロディーが頭に染みこんでいて、2曲同時進行で演奏を聞き比べている感じがした。と時を同じくして、体の中から何とも表現しようのない熱い感動が、ジワジワと沸き上がってくる。

第2楽章のイングリッシュホルンは当然として、ホルンとフルートの音が特に素晴らしい。会場全体がすごい集中力で音と一体化し、文字通り固唾を呑んで演奏に集中している。

第4楽章のストリングスの重厚な出だしから、ブラスセクションのスパッと抜けるような気持ちの良い響きに涙が溢れてくる。炎の指揮者の本領発揮で全身全霊を傾けた指揮者の熱い想いがヒシヒシと観客全員に伝わる。
ラストまでの息を呑むような素晴らしい演奏に時を忘れる。そして感動のエンディング・・・・・

コバケンさんが指揮棒をゆっくり下ろすまでの静寂と余韻が実に素晴らしかった。これは酒田の聴衆がいかに演奏に集中していたかの証明でもある。
フライング気味の拍手は折角の名演を不完全燃焼させる。

それから割れんばかりの拍手の嵐、そのまま振り向かずに各パートのトップと固い握手、そのままわざわざコントラバスのところまで出向く、その後にやっと観客に向き合い笑顔の挨拶、さらに拍手が大きくなる。
一度拍手を手で制し、この日のオケの演奏と観客の素晴らしさを、指揮姿からは想像できないソフトで優しい声で絶賛し、アンコールのダニーボーイをストリングスだけで演奏、

「新世界」で感動を極め、とても熱くなった観客を落ち着かせるようなとても心穏やかになる素晴らしい演奏だった。これも指揮棒をゆっくり下ろすまで誰も拍手をせず、素晴らしい余韻と静寂が感動的だった。

炎の指揮者コバケン、今回は完全にやられてしまった・・・・・(笑)