オラ家の田んぼ(愚痴にならない愚痴) Vol-1


新緑が萌え穏やかな日が続き、雪形が現れ山が涼しげな声で呼んでいる季節は、毎年農作業に忙殺される。世の中、効率至上主義で無駄なものを全て排除し、コストダウンに血眼になっている昨今だが、我が家のような零細農家にはあまり縁がないような気がする。今日もトラクターに乗り田んぼを耕していていかに効率よく速く出来るかなどと、カラカラ空っぽのおつむでぼんやり考えていたのだが、はっきり言って意味のないことだとの結論に至った。

田んぼ一枚(縦100m×横30m)をトラクターで耕起するのに要する時間は、作付けする作物により異なる。通常の米であるなら1.5時間もあれば我が家のオンボロトラクターでも十分である。しかし、最近御上のご意向により本来米を作るために貴重な血税の一部で整備された田んぼで、米を作るなと言うお達しがあり、別の作物を作ることを奨励(強制?)している。何か釈然としない政策であるが、我が家の田んぼも、ご多分に漏れず、およそ1/3がこれに該当する。よって畑のつもりで耕起すると1枚当たり5.5時間、100m進むのに20分弱かかる。スピードを上げると土が細かくならないからなのだが・・・

いくら鈍足亀足の私でも、時速0.3qと言うスピードには正直参る。とてもじゃないが貴重な日曜日に半日以上、同じ田んぼで、同じ景色を眺め、睡魔と戦いながらトラクターに乗っている苦痛に耐えられる根性はない。よって平日の出勤前に早起きして2時間弱、昼休み会社をエスケープして1時間弱、速攻で帰宅して真っ暗になるまで2時間と変化をつけて作業しているが、ふう〜、これだけやっても一枚の田んぼを一日で完了することが出来ないのである。明日も早朝から頑張るつもりだが、はっきり言って作業効率なんて考えるのも嫌になったといって、誰が責めようか?

米を作るなと御上が言うのであれば、作らなければ良いのだが、耕作を放棄すれば後は野となれ山となれ、大好きな山のように自然回帰するものと思われるが、世の中そんなに甘くはない。土地改良区費や水利費、圃場整備の償還金、税金や農機具の借金など、がんじがらめに縛られた我々零細農家には、選択肢が乏しく結局、ご先祖様から授かった農地を荒らすのは忍びないのもあるし、御上に逆らうのは古来からの農民DNAによりNG、結局何らかの転作作物を植えることになる。

大都市近郊のように年中作付けし、大量消費地が近場にあれば畑作での農家経営も可能だろうが、当地は冬季の積雪でお話にならず、かといってビニールハウスを大量に建てようも暖房費や何やかやで出費が嵩み経費倒れ、結局米以外の適当な作物は見あたらないのが現状、で昔ながらの農業から脱却できない・・・

周りを見ると専業でやっている人達もいることはいるが、私のように外に働きに出ている人が殆どで、弁当を持って働きに出て、手早く現金収入を得られる方に流れるのは至極当然な成り行きで、周りが田んぼだらけの土地なれど就農人口は減少の加速を増し、働き手は必然的にどこにも勤めていない高齢者が多くなる。
昔の人達は丈夫なもので60なんて若い内、中には80になってもトラクターに乗ってる元気なお年寄りも多い。山でも最近高齢者が目立つが、我が家の田んぼの回りでも結構多い。

世の中いろんな仕事があるが、こと農業に関して見れば効率性という万能主義的思想にはいろんな意味で疑問を感じる。
我々の親の世代から見たら、機械力の発達もあり隔世の感があるのだろうが、当時の人力主体の辛い農作業からは解放された恩恵はあろう。しかし、最近、消費者の求めるものは、無農薬、有機栽培、自然乾燥、etc・・・
そう言うものが付加価値となり少しだけ価格に跳ね返ってくるが、それ以上の労力が必要となる。

あるいはマスコミによる報道・・・
良い意味では魚沼産コシヒカリ等の高値取引、悪い意味ではダイオキシン等の風評等、海外産の農作物と農薬の問題も一時盛んに報道された。
そう言ったものに耳を傾けると「昔に戻りなさい」と言ってるように聞こえるのは空耳なのだろうか? しかし何事も口で言うだけは簡単なのだ。喋りゃいいんだからねぃ・・・
それと集落営農の問題・・・

何か釈然としない不安と不満ばかりが、カラカラと空っぽの頭に浮かんでは消える毎日である。