【川畠成道ヴァイオリンリサイタル】

第1部
  ベートーヴェン ソナタ第5番ヘ長調 作品24"春”
  イザイ 無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番イ短調 作品27

第2部
  エルガー 愛の挨拶
  メンデルスゾーン/ハイフェッツ編曲 歌の翼に
  リムスキー=コルサコフ 熊蜂の飛行
  ブラームス ハンガリー舞曲第7番
  カッチーニ/寺島陸也編曲 アヴェ・マリア
  ワックスマン カルメン幻想曲

アンコール
  マスネ タイスの瞑想曲
  ブラームス ハンガリー舞曲第5番
  チャイコフスキー ただ憧れを知る者のみか
  リューツ ひばり
  サンサーンス 白鳥

2007/03/06(火)
酒田市民会館 希望ホール


(vln)川畠成道
(p)山口研生



偶然知ったこのリサイタル、公演の数日前にダメ元でホールに行ったら二階のバルコニー席のチケットが取れた。案外知られてないが、ここはバルコニー席の音が思いの外良いのだ。
客席は一階はほぼ満員、二階は残念なことに半分くらい空いている。

川畠成道氏は1971年生まれ、現在ロンドン在住でソリストとして海外で活躍し評価も高い。もちろん私は初めて聴く。
八歳の時に薬害により目に障害を持ち現在に至るとプログラムに書いてある。ステージにはピアノの山口氏の肩に導かれ入場、早速1曲目のヴェートーベンのソナタに入る。

インフルエンザが猛威を振るっており会場は開演後も咳払いの音が切れない。二階席はそれらの音をもろに拾ってしまう。一曲目の途中まで「ピーッ」と言うハウリングのような雑音が耳障りで音に集中できない。それでも演奏は素晴らしく、感動を極めた聴衆は各楽章が終わるたびに拍手をする。そのたびに拍手に応える川畠氏は、演奏に集中できないようで気の毒だった。

二曲目のイザイのヴァイオリンソナタは川畠氏のソロ、伴奏者がいない分、楽章間の間も意識的に短くした?演奏が続いた。ここから本領発揮、素晴らしい音色がホールを包んだ。私も初めて聴く曲だが難曲なれど背中がゾクゾクする感動を覚えた。中でも第四楽章の演奏は、本当に一本のヴァイオリンで演奏されているのが不思議なほどの音の広がりがあった。

休憩を挟み後半は良く知られた曲が続いた。
ピアノの山口氏との阿吽の呼吸も見事で、目を閉じて聴いていると、まるでカフェオレのように二台の楽器の持つ特徴が絶妙に絡み合って、素晴らしい音の広がりと味わいを醸し出している。
音は世界を股に掛けるソリストだけあって実に伸び伸びとした綺麗な音だ。曲想による強弱やテンポなどの変化も素晴らしい。
中でもリムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」の演奏は、曲調もさることながら、ブンブンと飛び交う熊蜂を見事に表現し見事な演奏であった。

この日のアンコールは、アンコールと言うより第3部と言った感じ、5曲を川畠氏の解説付きで鑑賞した感じである。
ほとんどの曲が超有名な曲で誰もが聴いたことがある筈だ。特筆すべきはリューツの「ひばり」で、鳥肌の立つ超絶技巧の演奏であった。
多分ヴァイオリンという楽器の極限に近い演奏であろう。

音楽は作者の意とは別に聴く人達の解釈で楽しめれば良いもの、感じ方も聴く人達でおのおの違うものであろうが、この日の演奏は私にとって得るものが大きかった気がする。