【日本フィルハーモニー交響楽団 第306回名曲コンサート】

グリンカ : オペラ《ルスランとリュドミラ》序曲
ショパン : ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 作品21
(アンコール) ショパン : ノクターン 嬰ハ短調
ムソルグスキー : 組曲《展覧会の絵》
(アンコール) マスカーニ : カヴァレニア・ルスティカーナ間奏曲

2006.04.08(金) サントリーホールにて
指 揮:小林研一郎
ピアノ:梯剛之
コンサートマスター:扇谷泰朋


日本フィルハーモニー交響楽団(日フィル)は、炎の指揮者の異名を持つ小林研一郎氏を音楽監督に今年創立50周年を迎えるそうである。今回の演奏会はサントリーホールでの名曲コンサートシリーズの一つで、ピアノに梯剛之氏を迎えて行われた。またコンマスの扇谷泰朋氏もこの4月に日フィルのソロコンサートマスターに就任したばかりで好演が期待された。

コバケンの名で親しまれる指揮者は非常にサービス精神旺盛で熱い演奏を聴かせてくれた。またピアニストの梯剛之は幼少期に小児癌により失明するも、その演奏は各地で絶賛され評価がとても高く、今は世界に活動の場を広げている。過去に何度もテレビで紹介されご存知の方も多いと思う。

サントリーホールも初めて訪れた。世界最高の響きを追求したと言われるだけあって本当に素晴らしい響きを持つホールであった。故佐治敬三氏が当時、カラヤンの助言を得て最新の技術を導入して造ったホールである。
燦然と輝く巨大なシャンデリアと笑顔のレセプショニストに導かれ入場し、開演まで少し時間があったのでバーコーナーでワインを戴く。2000席程の会場は八割方埋まっている。盛大な拍手に迎えられコバケンさんが登場、すぐに最初の曲《ルスランとリュドミラ》序曲が始まった。初めて聴く曲だが素晴らしい音の広がりであった。オケの力量もさることながらこのホールのポテンシャルの高さに舌を巻く。

ピアノの配置に少し時間がかかったが、コバケンさんに手を導かれ、梯さんがこれも盛大な拍手の中登場、ショパンはこの人のもっとも得意とする分野だろう。以前有名なショパンコンクールに出場した時のドキュメンタリーをテレビで見たことがある。審査員よりも地元の聴衆から圧倒的支持を得て絶賛されていた記憶が鮮やかによみがえった。
全三楽章の内、二楽章からの彼の優雅で繊細なピアノタッチは筆舌に尽くしがたい。本当に鳥肌が立った。

終演後圧倒的なカーテンコールが沸き起こり、拍手が鳴り止まずアンコール、これも得意のショパンのノクターン・・・
シーンと静まりかえった巨大なホールに響く独奏は、夢を見ているような不思議な感覚であった。世にショパンを得意とするピアニストはごまんといるが、この人のノクターンは独特のものがあって、上手く表現できないのだが、優しい母の手が我が子を愛撫するかのような感じとでも表現しようか、本当に優しく心に響く演奏であった。
これにも盛大な拍車が鳴りやまなかった。素晴らしい演奏は必ずや全ての聴衆の心に確実に伝わることを証明する演奏であったと思う。


      
憧れのサントリーホール


休憩後大編成での「展覧会の絵」を初めて生で聴いた。この曲もオケにとっては大変な難曲らしく、各パートの独奏も多く聴き応え十分であった。それと指揮者の熱演、「炎の指揮者」とは上手いことを言ったもんで、コバケンさんは全て暗譜で振る鬼気迫る大熱演であった。特筆すべきは管楽器のパート、ホールに響き渡るダイナミックで心躍る響きと、繊細な美しさは聴く者を強く引きつけた。

何と言っても圧巻はラスト、オーケストラの持つ全ての力を振り絞るかのような荘厳なエンディングは、感動を通り越し涙が溢れた。当然ブラボーである。

鳴りやまないカーテンコールにアンコール、再度のカーテンコールにアンコールは準備していないとコバケンさんが説明、あの広いホールの隅々までノーマイクで声が通るというのがすごい。私は二階席の一番奥の方にいたのだが、すぐ隣で話しているように聞こえた。
で、再度のアンコールには、展覧会の絵の最後の40秒ほどを再演して終了。
サントリーホール恐るべし、癖になりそうなホールだ。機会があったらまた是非訪れたい。