【オーケストラ・アンサンブル・金沢 演奏会】

チャイコフスキー 「弦楽合奏のためのセレナード」ハ長調 作品48
サン=サーンス 「チェロ協奏曲 第1番」イ短調 作品33
ベートーベン 「交響曲 第4番」変ロ長調 作品60
アンコール モーツァルト 「フィガロの結婚 序曲」
2006.03.06(月) 響ホールにて
指 揮:ロルフ・ベック
チェロ:ルドヴィート・カンタ
コンサートミストレス:アビゲイル・ヤング


オーケストラ・アンサンブル・金沢(OEK)は、加賀百万石の城下、金沢市に本拠を置く室内オーケストラで、岩城宏之氏を音楽監督に1988年石川県と金沢市が設立したプロオーケストラである。

国内外を問わず活発な演奏活動を行い評価も非常に高く、以前より一度拝聴したいと願っていた。山形では前日のテルサ、この日の響ホールと二公演であった。
宝くじ文化公演と言うことで通常よりかなり破格の料金、2500円とは信じられない値段だ。

今回は開演前にロビーで弦楽三重奏によるプレコンサートがあり、ベートーベンの曲を2曲、間近で聴くことが出来た。これだけ近いと楽器による空気の振動を体で感じることが出来る。

1曲目の「弦楽セレナード」は、最近テレビのCM(オー人事、オー人事)で流され多くの人がインパクトのある冒頭部を知っていることと思う。
音楽素人の私も冒頭部にはビビッと反応した。それにしてもこのホール、こういう音は本当に気持ちよく響くんだよなあ・・・
4楽章まで通して聴いたのは、恥ずかしながら初めてである。

一曲目のOEKの編成は、1ヴァイオリン6人、2ヴァイオリン8人、チェロ4人、ヴィオラ4人、コントラバス3人の計27人のストリングスだけの編成である。少人数ではあるが、ホール全体に響き渡る素晴らしい音の広がりにはオーラさえ感じられた。少人数故に各パートの音が逆にクリアで、素晴らしいアンサンブルであった。
響ホールは小さいホールで、オーケストラの音を楽しむにはこのくらいの編成がもっとも適しているのではないかと感じた。

大編成のオケを聞き慣れた人には少々物足りなさを感じるかも知れないが、各パートの音が潰れることなく均等に耳に届く、また、曲ごとに楽器の配置を変え工夫された音造りに、このオケのこだわりがうかがえた。

二曲目の「チェロ協奏曲1番」は、OEKの首席チェリスト、ルドヴィート・カンタ氏がソリストとして演奏された協奏曲、途切れることなくとうとうと続く三楽章は、本当にうっとりと聴くことが出来た。心の奥にズンと響くチェロの音、良いなあ・・・
この曲から管楽器と打楽器が入り賑やかになる。

OEKには、ストラディバリウスの「ラング」が貸与されていると言う話を聞いたことがある。コンミスのヤングさんが、顔を紅潮させて力強くガンガン引っ張るストリングスは素晴らしい響きだったが、果たしてこの日の演奏に使用されていたかどうかは不明である。

休憩をはさんで三曲目のベートーベンの4番は、素人故、恥ずかしながらあまり真面目に聴いたことがない。有名な3番と5番に挟まれ、それほど素人受けする作品でないのかも知れないが、聴いていて「う〜ん」と唸る。やっぱりベートーベンらしい作品だった。解説書によるとシューマンが、<二人の北欧神話の巨人に挟まれた美しいギリシャの乙女>と形容しているそうだ。なるほどと膝を打ち、だんだんその美しい曲に引き込まれていく。

盛大なカーテンコールの後、アンコールにモーツァルトの「フィガロの結婚 序曲」でこの日の公演は終了。

演奏もとても素晴らしく、非常に高いクオリティーを保ちながら最後まで突き進んだ。ベックさんのソフトな指揮とアクティブなヤングさんのヴァイオリンとの対比も視覚面で大いに楽しませてくれた。
個人的に大好きな飯森さんの情熱的な指揮は、どうしても指揮者に視線が行きがちであるが、この日はオケ全体を見渡しながら非常に高いレベルの演奏を堪能できた。CDを数多く録音しているオケのようだが、音的にはすごく高いレベルだと思う。

この日の演奏も録音はしているようだったが、入手可能か後で事務局にこっそり聞いてみよう〜っと・・・(まず無理でしょうがね)
ただ、先日の山響&WPRの強烈なマーラーが、未だしつこく耳に残っており、失礼ながら「ブラボー」と叫ぶだけの感動には残念ながら至らなかった。