【ヴェルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団
          &山形交響楽団ジョイントコンサート】


西村朗 「管弦楽のためのファンファーレ」(世界初演)
ヴェルディ 歌劇「運命の力」序曲
マスカーニ 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
ロッシーニ 歌劇「ウィリアム・テル」序曲
マーラー 交響曲第1番ニ長調「巨人

2006.02.11(土) 山形市民会館にて
指揮:飯森範親 コンサートマスター:高木和弘、執行恒宏、犬伏亜里


久々の飯森さん指揮の山響を聴くことができた。メインはマーラー交響曲第1番「巨人」、前半は誰もが一度は聴いたことがある曲が3曲と、この日のために西村朗氏によって書かれた「管弦楽のためのファンファーレ」は世界初演とのこと。
開演前にはロビーにてブラスセクションによるプレコンサート、前夜急遽市内の飲み屋で話がまとまり飯森さんに話があったという。気持ちよい響きがロビーにこだました。
ステージ上はメジャーオーケストラでもめったに見ることの出来ない百人以上の大編成、これだけの人数をまとめ上げるのは大変だと思う。まして外国人が半分以上だ。これも両オケを知り尽くした飯森さんだからできる技か。

両オケのメンバーは仲良く隣り合わせで並んでいる。
コンサートマスターは、WPRの高木さんと山響の執行さんと亜里さんの三人が曲ごとに交代しながらの演奏、こんなのも珍しいと思う。1200ある座席はほぼ満席、前から2番目のチェロパートの目の前の席で聴くことが出来たのは幸運、市民会館は初めてだが、県民会館より音的には良いような気がした。

これだけの大編成になると演奏前のチューニングも3班に分かれて行うのを初めて知った。プレトークは飯森さんがわかりやすく演奏曲を解説してくださり、良い意味でイメージが固まった。
前半は最初が素晴らしい難曲だったが、以後はテンポ良く進んだ。座席の関係で全体が見渡せないのが残念だったが、いつもはあまりはっきり聞こえないチェロパートがすぐ目の前のため良く聞こえて、これはこれでなかなか良かった。

この日のメインはなんと言ってもマーラーの交響曲第1番「巨人」、普段の山響では助っ人を頼まないとできない大編成の曲、壮大な曲想は個人的にも大好きな曲の一つである。今までCDでしか聴いたことがなかったので生の演奏はとても楽しみにしていたのだが、飯森さんの息づかいまではっきり聞こえる超感動ものの素晴らしい演奏であった。特に印象深かったのが第4楽章、今まで意識的に抑えられたであろうブラスセクションが放った強烈な響きが、今でも耳に焼き付いて離れない。

飯森さんの指揮を見ていて改めて感じたことは、音楽は生きていると言うこと。当たり前のことだがオケは、呼吸し、見つめ合い、一つの目標に向かい結束する。そして聴衆と演奏家が共に音楽の感動を共有する。会場全体が一つにまとまったエネルギーは、そこにいる全ての人々が確実に感じ取れるものだった。
普段は科学的な物にしか目を向けない現代の生活、人間の気というか思念が持つパワーを改めて肌で感じ取ることができ、また考えさせられた。

アンコールはしない主義という飯森さん、気力も体力も使い果たした熱演を見れば誰もが納得する。楽団員も皆満足そうな笑顔で握手していた。

あれから数日経った。公演から日が経つに従い感動と興奮が大きくなってくる不思議な感覚を初めて体感している。