【今神の杜に遊ぶ 霊峰今熊山】


今熊山山頂から俯瞰する御池


【日 程】2015年11月01日(日)
【山 域】月山山系
【山 名】今熊山(573m)
【天 候】晴れ
【メンバ】1.5人
【コース】登山口 → 山頂往復
(概 略)


今神温泉登山口(10:16)---(10:40)御池---(11:30)今熊山山頂(12:03)---(12:36)林道途中登山口



今熊山は以前から興味のある山域であったが、訪れる機会のないまま今日に至ったが、最上峡の紅葉も盛期を過ぎた日曜に突発的に思い立ち出掛けてみた。
戸沢村角川地区の中心部から右折し、今神温泉の標識を辿れば簡単に着くのだが、細く未舗装の林道には注意が必要だ。
今神温泉は念仏温泉という別名と共に全国的に知られた温泉で、開湯千三百年になると言われており、今熊野神社との関係も深いそうだ。

元は月山信仰に於ける登山口として信仰があったそうで、阿弥陀如来・薬師如来・観世音菩薩の三尊を祀っている。温泉自体は当時のマタギが発見し現在に至る。往事には月山詣での際に神社で無事の祈願をし、温泉で読経をしつつ湯垢離を行い、御池、今熊山、高倉山を巡って月山に至ったと言われている。

月山信仰に於いては山塊自体を曼荼羅に喩える。それは山頂からの稜線を境に、東側を金剛界、西側を胎蔵界の対とし、東と西の補堕落と呼ばれる秘所が存在する。この考え方は多くの修験場でも似たものが多く、あるいは真似たと思われる地所、地名も多い。
ここ今神の杜でも御池と呼ばれる湖があり、その相対と考えられるのが御山、つまり今熊山なのだろう。地形図を眺めると長倉川を境に西が今熊山、東に今楯山という似たような標高の山が存在するが、これにも何かの因縁を感じるのは考えすぎだろうか。


  
今神温泉登山口


今神温泉の入口には厳重なゲートがあり、一般者の立ち入りは固く禁止されている。その手前に駐車スペースがあり宮城ナンバーの先行車が2台あった。この日は突発的な発想での山遊びのため、普段仕事で着る作業着と長靴のスタイル、準備なんて何もないので御池まで1kmの道標に従い歩き出す。枯れ葉の敷き詰められたブナ林は冷えた空気が気持ち良く、歩きやすいものの日頃の不摂生がすぐに現れる。急登の先に峠と思われる峰を越えると急な下りが待っており、ここを下りきると太いブナが連続する平坦な道となる。それから直に御池の湖面が見えた。ふと仰ぎ見ると覆い被さるような岩嶺に圧倒される。


  
湖面から仰ぎ見る山頂付近の岩峰

途中にある洞穴



多分あれが目指す頂だろうと見当をつけ、休まずすぐに静かな湖畔を回り込むようにつけられた登山道を進む。途中に可愛らしいキノコの姿を見つける。
急登に息を切らせていると、何かの気配に視線を上げると、すぐに男女二人が下ってきた。
話を聞くと浄ノ滝を目指したが、道の荒廃があまりにも酷く戻ってきたそうだ。手にした買い物袋にはナメコが結構入っていたように見えたが、敢えて知らんぷりして別れた。
そこから少し進むとすぐに稜線に乗り上げたが、そこに浄ノ滝と御山の分岐の道標が待っていた。


  
湖畔からの高倉山と今熊山


右に進むと両側が鋭く切れ落ちた岩嶺となり、登行不可能と思われる急傾斜の岩峰が現れた。さてさてどうしたものかと進むと、左斜め下に矢印の書かれた道標が目に入り、不思議に思って目をこらすと、谷に向かった急斜面に鎖がまっすぐ延びていた。つまりここから迂回せよと言うことなのだろう。
ここが本日最大の難所であったのだが、下りきると今度は濡れて嫌らしい岩場のトラバースと急登を何度か繰り返す。そして稜線に乗った場所が先ほど見上げた岩峰だとわかった。


  
行く手を遮る岩峰

???な道標



一気に展望が開け一際高い山が高倉山だろう。よくよく見ると急峻な壁面に白い水の流れが見えた。へえ、あんな所に滝があったんだとびっくりする。その下の方にも三段の流れが確認できた。休憩も含めて暫しカメラの虫となる。
この先は両側が切れ落ちた稜線歩きとなり、逞しく根を張る木々を愛でながらの登りとなる。中でも一番良かったのがブナの木立で、相当風が強いことが見て取れた。
逞しい幹の割に樹高が極端に低く、根を張るにも困難なナイフエッジに、恐らく百年以上頑張っているのだと思われ褒めてやりたくなった。


  
高倉山の滝

頑張るブナ



そのまま少し頑張ると左に下る道があった。これは林道の途中に下るルートのようだ。帰りはこっちに下ろうと決め、のらりくらりと登り詰めると、ひょっこり小さな社が現れた。あちこち撮影しながら登ったため、結構時間が掛かってしまったのだ。
小さな社の扉を開けると、立派な仏像が五体と錆びた宝剣が祭られていた。二礼二拍一礼の礼拝を済ませ、荷物を下ろし辺りを見回すと、細い踏み跡が認められ更に上に続いていた。それからほんの一登りで標石のある山頂に辿り着く。


  
小さな社

山頂の標石



山頂はなかなかの絶景スポットで360度の展望が得られた。眼下の御池には澄んだ湖面に葉を落とした木々の姿が映り心が安らぐ。一番高い高倉山の急峻な斜面が一際目を引き、沢をはさんで志賀山から今楯山の景色も素晴らしい。
暫く景色を堪能し、社まで下り昼食を食べ終えたら単独行者が姿を現したので、交代して下山することにした。


  
今楯山   と   志賀山



下りもなかなかスリリングな急下降が続き、気の抜けない山だと改めて認識した。
機会があったら浄ノ滝も訪れてみたい。



今神温泉へは立入禁止