【賑わう鶴間池】


静かな水面

【日 程】2015年10月18日(日)
【山 域】鳥海山
【山 名】鶴間池(820m)
【天 候】晴
【メンバ】2人
【コース】登山口 → 往復
(概 略)


山雪荘前(9:30)---(10:30)鶴間池(12:10)---(12:57)山雪荘前


秋の深まりと共に山肌の彩りは、真っ白な季節から逃げるように、麓へ駆け下りる速度を増す。高所での錦秋の見頃はとうに過ぎ去ったので一年振りに鶴間の彩りを楽しみに出かけた。
朝一番に自宅から眺めるお山は霞んでおり、昨日までの快晴が嘘のようだ。前の週の三連休はあいにくの天気で何処にも行く気にならなかったが、岳友達の話を聞いていたら居ても立ってもいられない気持ちになったのが正直なところ、中年の彩りが増すごとに明らかに腰が重くなる。反面、山への憧憬は強くなるのだが何故か最初の一歩が出ないのだ。

途中のセブンで食料を仕入れ、お山が近くなるに従い景色が大きくクリアーになる。遠目にも中腹辺りの色づきが顕著で胸が高鳴る。麓の稲刈りも殆ど終了し、僅かに残った刈り穂の近くに知り合いの軽トラを見つけるが、声も掛けずに先を急いだ。
登りに入れば七高山付近が白くなったドーンと迫る姿が圧巻だ。やっぱり山はそこまで足を運ばないとだめだねと、改めて思い知らされる。道路沿いの紅葉も徐々に彩りを増し、否応にも期待が高まる頃に荒木沢に掛かる橋のたもとに到着、県外ナンバーも含め予想外の賑やかさに唖然とする。


  
仰ぎ見る外輪山   と   色づく山肌(鳳来山


準備を急ぎ団体が出発する前にと登山道へ急ぐ。飲み水を忘れた事に気づくも、途中で拾えるので気にせず日溜まりのブナの森に飛び込んでいく。ああ、空気が美味いなぁ。
確か去年はもう一週間遅く訪れた筈だが、少しだけブナの梢に残った葉が多いようにも感じるが、明らかに外気温は高く季節外れの半袖一枚歩き、そんな暑がりはこの日の多くの登山者の中ではもちろん一人だけであった。
急坂を下りきる頃には少し寒がりな相方も汗ばみ上着を脱ぐ。季節の変わり目とはいえ下界では朝晩には暖房を入れる日もあるが、何となく季候に不自然さを感じるのは自分だけであろうか。

突然現れる巨木を愛で、朽ちた倒木に秋の恵みを探す。傍らを流れる清流に心洗われ、ゆっくりと歩を進める。異次元への入り口がもうすぐ現れる筈と思った頃に、小さな山小屋が姿を現す。池から溢れるような流れに掛かる小橋を渡ると先行者が休んでいた。そのまま小屋の脇まで進み、荷物を下ろししばしの休息、湖畔から見上げる外輪山の高度感は何度訪れても素晴らしい。
昼には少し時間があったのでそのまま散策、何故か未だ行ったことがない小鶴間を目指す。


  
穏やかに色づくブナの森


湖畔の平らな道には所々にピンクのテープがあり道形が確認できる。この道は清吉新道に通じているはずだが、今はどうなっているのだろう。
途中の適当なところから枝道のような踏み跡があったので、そちらに向かうとすぐに藪となる。適当に当たりをつけて構わず進むと湖畔に出たが何か違うような気がした。戻ると後続の声が聞こえたので、そっちの方かと進むと彼らと合流した。見ていたら藪こぎして進んでいくので付いていったらなんか変な感じ、どうも彼らも確信がないようだ。行く手を遮る藪を避け行きつ戻りつしている。少し高いところに移動して見回すと、藪の向こうに湖畔が見えたが、密藪を突破してそこまで行く気にならず、まあいいかと戻ることにした。

くるりときびすを返し元来た道を引き返すが、あらあらここは何処なのかしらん?
迷うというのではないが、少しでも藪こぎを楽しようとして進んでいたら、冬山のリングワインデリングみたいに同じ場所に出た。アハハと笑うが相方はうんざりした様子、いやいや完全に…(汗)
ここは素直に、どうもすいませんと謝り、先に進むとすぐに来た道に戻った。ここで後続の大パーティーとバッディングし道を譲るため止まっていたら、リーダーと思しき人が迷ったのかと聞くので、ちょっとねと言ったら、この人達はこっちに行って迷ったようだから気をつけるようにと、笑いながらメンバー全員にアナウンスした。

山を歩いていると何となく道を外すことは良くあることだが、冷静に判断できればそんな大きな道迷いにはならない。焦れば焦るほど事は悪い方に進んでいくのだが、十分わかっているのだが時には大失態を演ずることもある。これは自分ばかりではない人間の性なのだろう。
小屋前の広場は後続の荷物でいっぱいだったので橋のたもとで昼食とする。でもここも満員御礼、人でいっぱいなのだ。
しょっちゅう山に通っていた頃は食事なんてのも大体決まっていて、カップ麺におにぎり程度、それもお湯は家で沸かして持参していたので、そんなに時間も掛からなかったものだが、今は現地でコンロを出して食事する事の方が多くなった。

食事としては絶対に後者の方が美味しくいただけるので必然的にこうなったのだが、まあその分時間を消費して距離も稼げず五十歩百歩なのだ。でも山の中にいる充足感は、それなりに向上している気がする。他の登山者もこの日は皆ゆっくりと時間をかけて食事を楽しんでいた。
そうこうしている間に後続もどんどん現れ、こんな人混みの鶴間池なんて見たことないと呆れかえってしまった。ここには静寂を求めて来たつもりなんだけどなぁ…
ふと外輪を仰ぎ見ると沸き上がる雲に覆われ、いつの間にかその雄大な姿を隠している。長居は無用と腰を上げ、池に別れを告げ急登に向かうと、つられたように他のグループも続いてくる。


  
紅葉は心が落ち着くのだ


そんなに急ぐ必要もないので道を譲りながらのんびりと行く。それでも次第に高まる視界はブナの梢に近づき、時折ハッとする景色を見せてくれる。
急登を登り終え平坦な道を進むと直に車道に出る。暖かい日射しを全身に受け止め、心地よい温もりに包まれながら、艶やかな彩りの中を歩くことの僥倖をお山に感謝して久しぶりの山遊びを終えた。
もちろんこの後にホカホカの温泉を楽しむのは言うまでもない。


  
鳥海一の美林