久々の遠出 【草津白根山】


湯 釜


【日 程】2014年05月24日(土)
【山 域】草津白根山
【山 名】白根山(2160m)
【天 候】晴れ
【メンバ】2人
【コース】省略
(概 略)


何だかんだありましたが今年も何とか田植えが終わり一段落し一休み、六月に入れば野暮用が山と積まれ息抜きは出来ないので久しぶりに遠出をしようと車に飛び乗る。鶴岡から高速に入ると新潟まで二時間半程か?後は北陸道を上越までかっ飛ばす。上信越道に入ると前方に妙高山が現れた。これはこれでカッコイイがこの辺まで来ると周りは名も知らぬ山ばかり、信州中野ICで高速を降り志賀中野有料道路で100円払いR292へ、地元の人は絶対払わないだろうと思った。

天気は上々一路志賀高原へ向かう。まっすぐな気持ちとは裏腹に道はコックリさんのように意図せぬ方へ曲がり気分が悪くなりそうだ。標高も徐々に上がり熊ノ湯スキー場辺りはまだ雪が残っている。若い時分に一度遊びで通り過ぎたことがあるが、記憶なんて残ってやしないので景色が新鮮だ。週末の観光地故かそれなりに混み合っていて格好の良いバイクやスポーツカーがビュンビュン追い越していく。

横手山を見上げる辺りに広い駐車場があり車を止めて景色を楽しむ。北アルプスが横一線に白く浮かんで綺麗だ。中でも後立山連峰が一際目を引く。白馬三山だけ同定できたのは実際登ったことがあるからだろう。そのほかの山は全然わからない。
白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳、キレットがあり唐松岳、五龍岳、その次は鹿島槍ヶ岳だろうか?
爺ヶ岳、針ノ木岳、その次は表銀座の山々だろうか?、剣や槍は同定できない。多分肉眼では無理っぽい。右側の白く輝く山は何処だろう(妙高か?)
R292号の渋峠は2152m、日本で一番高い場所にある国道だとどこかで聞いたことがある。


    
横手山

 笠ヶ岳(2075m)の奥に白馬三山

万座スキー場を見下ろす辺りで車を止め景色を眺めると荒涼とした景色だ。木なんてほとんど生えていない。標高2000mを超す場所に来たのは実に久しぶりで、相方は頭が痛かったそうだ。ここからは各地から集まった車とすれ違いながら少し下ればすぐに白根山の駐車場だ。関東方面のナンバーが多かったのは当然として山形、とりわけ庄内ナンバーなんて全然ないのは当たり前か…(笑)


  
白根山(この奥が湯釜)

万座温泉方面(奥の白峰は北アルプス)

ここから少し登って湯釜を目指す。登山なんて言えないかも知れないが、自分の足で100mでも登れば今の自分の境遇では登山と呼ぶ。と自分に言い聞かせるが、情けないことに空身の軽装でも息が上がる。それでも暫く頑張ると白濁したエメラルドグリーンの湯釜が現れた。ここは今でも火山活動が盛んで一部立入禁止である。当然白根山(2160m)にも立ち入れない。手を伸ばすと届くような距離ではあるが…

この荒涼とした景色の中で綺麗な色の湖面を持つ湯釜は一際目立つ。見渡すとあちこちに火口湖と思われるものはあったが、皆透明で何で一箇所だけこんな色になるのか不思議だったが、あまり深く考えないことにして純粋に景色だけを楽しんだ。しかし気付けばもうお昼時、腹の虫が鳴ったのでレストハウスに駆け込んで昼食を取る。ここで時間はちょうど12時で家を出てからちょうど6時間だ。


  
白根山

荒涼とした湯釜の外輪


草津白根山の最高峰は本白根山(2171m)なのだが、そんなところにこだわる気なんて毛頭なく、ピークに行くルートもないようなので安楽登山に徹することにした。しかし久々に体感する高度感と眺望は眠れる獅子を目覚めさせるには十分である。頭の中に重いザックを背負って日暮の急登に喘ぐ自分をイメージしたが、何故かすぐに温泉でホゲーっとくつろぐ姿に変わった。



弓池と本白根山方面

後は高名な草津温泉でも眺めて行こうかと道を下るが、ナビに頼って走ると何処をどう通ったのか品木ダムと言う場所に、ここの湖面も艶やかなグリーンだが迷子になったためそんな景色を見ている余裕もなく、細く曲がりくねった道を上り返すとR292号にポンと飛び出した。自分で地図を見て確認するのも億劫なので、ナビに任せて道を進むと山道ばかりでうんざりしかけた頃に沢渡温泉の脇を通り四万街道に出る。あとは道なりに進むと四万温泉に到着、時間が早かったのでダムのある奥四万湖を見に行く。
相方は以前訪れたことがあると言っていたが、大分前のことだそうで景色が変わっていて浦島状態。それでも体中が群青に染まりそうなここの湖面は一見の価値はあると思う。


  
奥四万湖 独特な群青の湖面

決して大きな温泉街ではないが関東の人たちには有名らしく(オラは全然知らなかったが)駐車場は満杯状態、積善館は中でも一際歴史があり元禄七年の創業とのこと。本館は元禄四年の建築で重要文化財に指定されているそうだ。
映画「千と千尋の神隠し」のモデルとなった建物だそうです。別に宿の宣伝をする気はないのだが、数ある湯船の中で一押しは何と言っても「元禄の湯」、昭和五年の建築だそうだが、正直言って現代の湯船に慣れた人たちには抵抗ある感じだ。


  
レトロで趣のある本館
モダンな窓の奥に名湯「元禄の湯」がある


五つある浴槽には底から源泉が懇々と湧き上がり、心地良い静寂感を醸し出している。レトロと言う表現はあまりにも月並みだ。手前から順番に浸かってみると皆微妙に湯温が違う感じで楽しめる。
あまり紹介されていないが、右手に二つ小さな引き戸があり、中をのぞくと真っ暗な中にタイル張りの寝椅子が浮かび上がる。
恐る恐る中に入ると、これがまた良い。多分、温泉熱で熱い岩盤にコンクリートを流し込んだ物だと思うが、椅子自体も熱く蒸し風呂のようだ。
言うなれば天然のサウナだが、低い天井は年月の経過と共に表面の塗装が所々はげ落ち、それが結構面白い形で、あれやこれやと連想することで不思議と飽きない。
案内で閉所恐怖症の人は気をつけてと言っていたが…(笑)



名湯「元禄の湯」

しかしこの温泉の最大の魅力はその泉質だ。源泉は積善館所有だそうで無色透明、無味無臭なのだが暖まることこの上ない。そしてこの源泉は飲用できるのだが、これがまた美味しいのだ。胃腸に効能があるようだが、厨房でも調理用として使用しているほどの名湯なのだ。
生まれてこの方こんなに美味な温泉は飲んだことがない。客室の冷蔵庫には冷やした温泉水がサービスで置いてあるのも心憎い。

館内に五箇所ある浴槽の内、有料の湯船を除いて全て浸かったが、本館一階の「元禄の湯」が私的には一番で、滞在中に三度も入ってしまった。山形にも温泉は数あれど、これほどの名湯はないと思う。いやぁ、気に入りました。
料理もとても美味しく接客態度も大変によろしい、一つ難を言えば、ご飯の味が我が家の「はえぬき」よりかなり劣ります。「ミルキークイーン」だそうですが、まあ合格点です。大満足の宿でした。


  
山荘から本館へ通じるトンネル
照明がまた良い

翌朝もひとっ風呂浴びてゆっくりしてから出発です。もう帰るだけなので名物の水沢うどんでも食べて帰ろうと伊香保温泉を目指した。なぜって伊香保温泉に行けばうどん屋がいっぱいあると何かで読んだからなのだがこれが大失敗…(汗)
ナビに任せて適当に進んだら山の斜面に林立する建物群が見えた。どうもそこが伊香保温泉らしい。適当に進んだらひどく渋滞した道路に出たが、何とか駐車場を探して管理人のおじさんに
「近くにうどん食べるところありますか?」と聞いたら
「四つ先の信号を右に行くと三軒」との答え。

お礼を言って歩き始めたら右手に巨大な石段が見えた。多分有名な物なのだろうが食い気の方が勝り、ろくに見もしないで先を急ぐ。それにしてもこの道はすごい渋滞だ。それに喧しいバイクや車の集団が大挙して訪れ騒音に閉口した。
後で確認したら榛名山に向かう道のようだったが、そう言う趣味嗜好の輩が集う名所なのだろう。
まあ良い。



伊香保温泉の巨大な石段
(いちおう行ったという証です)

結構な距離を歩いて(すごい下り)四つ目の信号に辿り着いたが、右を向いても左を向いてもそれらしき店なんてない。不思議に思って途方にくれていたら観光案内所があったので中に入り聞いてみたら、確かにこの先にうどん屋がいっぱいあるそうだが、何と3kmほどあるそうだ…(冷汗)


???


私は「三軒」「三キロ」を聞き間違えたようである。


げげっ…


相方の顔が怖くて見れない…


その後は想像に任せるとして、水沢うどんのお土産はきっちり買いましたよ(笑)



渋川伊香保ICから関越道に乗り、一路我が家への400qの道中は、ゆっくりと法定速度の安全運転で。
長い関越トンネルを抜けると新潟県に入る。湯沢の辺りはリゾートマンションとスキー場だらけ、右側に見える高いお山は何だろうと必死に考えるがわからない。
銘酒「八海山」とだけ頭に浮かんだが酒飲みの雑念だろう。

南魚沼市の辺りで「直江兼嗣、生誕の地」と書かれた大きな看板があった。少し前に某国営放送でドラマになっていたが、直江公は上杉家の家老職だった武将であるが、庄内にも縁があり、拙作にもその所以を少しばかり記述している。そのため少々感慨深いものがあった。

現代ではたった二日で庄内から信州、上州、越後と簡単に駆け巡ることが出来る。が、この地に生まれた直江公が、当時日本国中を駆け巡った駆動力というか運命を考えると、なんともまあ凄いことだなと改めて思う。

人間は今も昔も旅と失敗が必要な生き物なのだ。


やれやれ…