【小復活、念願の朝日に帰る】


雲海に浮かぶ月山と鳥海山

【日 程】2012年7月21〜22日(土日)
【山 域】朝日連峰
【山 名】寒江山(1695m)
【天 候】晴れ
【メンバ】単独
【コース】日暮沢→龍門小屋→寒江山→日暮沢
(概 略)



7/21日暮沢小屋(8:14)---(9:52)ゴロビツ水場---(10:54)清太岩山(11:04)---(11:39)ユウフン山(12:00)---(13:00)龍門小屋



下界の野暮用の合間に朝日に向かう。なんだかんだあって三年ぶりの朝日だ。
三年間とても大事にため込んだ体内脂肪がおよそ7s、今年は職場の検診でメタボチェックに見事に引っかかり、タンスの肥やしと化した山着がパチンパチン、だが夏用の短パンのゴムが伸びて緩んでいたのでとても助かった。

庄内側は晴れていたが112号線のトンネルを抜けると濃い雲が山肌を包み込んでいた。日暮沢林道は災害復旧のためダムまでしか入れず、日暮の小屋まで30分の林道歩き、これが辛いのだが帰りはもっと辛い。朋友会のグループが先行するも、日暮の小屋で休憩中にパスし、お先にと急登に向かう。1st Peekまで24分で到着したのに気をよくし、ろくな休憩
も取らずに登る。これが後々響くのだが、すっかり鈍った山勘では、お昼頃までには小屋に着けると思っていたのだが…

ゴロビツの頭までは霧雨の混じる湿度の高い天気だったが、雲を抜けると一変しカラッと晴れるがまだ展望はない。天気がよいと日差しが暑くて閉口する。清太岩山に這々の体でたどり着いた頃にはもうヘロヘロ状態、後続の人たちは賑やかに話しながら登っているようで、ガスの中から賑やかな声だけが聞こえてくる。その声に追い立てられるように一旦急下降し、ユウフンに登り返すのが何と辛いことか、情けないことに三歩進んでは立ち止まりを繰り返す有様、あれ、なんか違うなと思ったが後の祭り、三年のブランクは大きい。


  
上界と下界を隔てる緑のトンネル        と       久々対面の大朝日岳

ユウフンでは大休止するも日差しがとても暑い、当たり前だが後続に追いつかれてしまった。ここでやっと視界が効き始め、寒江山や以東岳が雲間からチラチラ姿を現す。
疲れてはいたが、朝日の稜線に帰ってこれたのが実感でき嬉しかった。後続が昼食中に、それではと先行させてもらう。この時期高嶺の花達は思いの外少なく、マツムシソウが一輪だけ咲いていた。

最後の龍門山への登りは本当に辛かった。それでもこの場所に帰ってこれた嬉しさの方が勝るのか、小屋への下り道では自然に笑みがこぼれる。稜線では涼やかな風が実に心地よく、朝日の風に吹かれる幸せを久々に味わう。
突然変なおっさんが、気色悪い笑顔で現れたからか、小屋前で休憩していた登山者の失笑をかいながら、三年振りの懐かしい夢にまで見た龍門小屋に到着する。


  
懐かしい龍門小屋      と       ユウフンから清太岩山

ちょうど西川山岳会のS田さんのグループが、狐穴に出発直前の到着だったので、ご無沙汰していますと挨拶したら、E藤さんはこの日はお休みだという。その代わり社長のK宏さんが今宵の管理をなされるとのことでした。
まずは荷物を下ろし、涼風が通る小屋の中でまったりする。すかさず冷たい朝日ビールの歓迎を受け恐縮する。この日はどの小屋も満員盛況で、特に狐穴小屋では朝日の保全協議会の集会があるそうで、かなり混み合っているらしい。高名な小国山岳会の井邦さんも入っているそうだ。

同宿者は新潟市からのTさん、三面から入ったという。昨晩は三面小屋に泊まり4時頃に出発し長駆龍門まで、素晴らしい健脚の持ち主だ。それとこの三人は偶然にも同じ歳だから話もはずんだ。

涼風が心地よい外に腰を落ち着け、ビールを飲みながら三年ぶりの景色を夕暮れまで堪能する。自分の顔が鏡を見ずとも下界と明らかに違っているのが自覚できる。これだから山は止められないのだ。

その後続々と団体さんが到着し二階は満員盛況、一階に陣取る人たちは、K宏さんから龍門ブレンドの怪しい液体を鱈腹ごちそうになり(と言っても私だけかもしれないが)いつシュラフにもぐり込んだのやら…
記憶が見事にぶっ飛んで、朝まで恒例の完全爆睡であった。





7/22 龍門小屋(6:50)---(7:58)寒江山(8:20)---(9:16)龍門小屋(9:35)---(10:29)ユウフン山---(11:05)清太岩山---(13:10)日暮沢小屋



早立ちのお客さんが出す音で目覚めるも体が目覚めない。二度寝をし4時半前にノソノソと起き出した頃には、すでに出発したお客さんも多い様子、当然の二日酔い状態で、寝ぼけ眼のアホな顔が皆の失笑をかうも、毎度のことなので気にもならなくなった。
K宏さんからも、夕べは呑みましたねぇと…
そのときは反省するのだが、いつの間にか忘れてしまう習性は三年たっても直らない。

ほとんどの人達が出発してから掃除を少しだけ手伝う。K宏さんは午後から所用があるため9時頃には降りてしまうので、お世話になったお礼を言い、サブザックに必要なものだけ詰め込み寒江山へ散歩に出かける。風が少し冷たいが酔い覚ましにはちょうど良い。何と言ってもここに来る一番の目的は、天気にも左右されるがこの散歩なのだ。(ほんとけ、と言う突っ込みが聞こえなくもないが…)

まれに縦走者とすれ違うが、下界と隔絶したとても静かな天上の楽園を闊歩する幸せを何と表現しようか。ゆっくりゆっくり景色と花を愛でながら散歩する。
この日は一面の雲海が広がり、ある程度の標高以上の山だけ見え、月山と鳥海が孤島のように雲の上に浮かんでいた。寒江山を日本海側から滝雲が超える様はハッとする美しさだった。


  
稜線を越える滝雲   と   天上の楽園寒江山

南寒江の斜面にはニッコウキスゲが咲き始めた。噂では今年はキスゲの当たり年だという。マツムシソウもわずかだが咲き始めていた。
ウスユキソウは完全に終わり、6月末の可憐な姿を見たかったなあ〜…
雲が切れ時折飯豊の稜線が見える。天気が悪くなる兆候なのか新潟側は雲が多く、風に乗って朝日の稜線にぶつかり、刻々と変わる景色が素晴らしかった。
寒江山頂の三角点にどっかりと腰を下ろす。それを支点に360度の眺望を無心に楽しむ。
何度来ても相模様の迫力には圧倒されるのだ。


  
ヒメサユリ     と    チングルマの花穂

  
マツムシソウ     と    ウスユキソウ

相模様にしばしの別れを告げ、来た道を戻ると龍門山の残雪が見えた。小屋には龍門の名の由来がわかるE藤さんが撮った写真があった。今回はちょっと龍の形には早いようだったが、一年でほんの2〜3日しか見れないという。
もうすぐ小屋に着く頃に昨晩一緒だったTさんと出会う。彼は早朝(私がまだ爆睡中)出発し大朝日を往復して、この日は狐穴小屋に泊まり、翌日相模尾根を降りるという。時間があったら以東岳を往復してくると言うが、彼の足だったら問題あるまい、またいつかここで会いましょうと別れた。


  
龍門の雪渓   左がこの日の物  右がE藤さん撮影の物

小屋に着いたら誰もいなかった。荷物をまとめて冷たい水を満タンにして帰路につく。龍門山の登りの中程で振り返ると、数人のパーティーが小屋に到着した様子、狐から帰る人達だろうか?
清太岩山までの間に何回立ち止まったか、空を見上げるとイヌワシが旋回していた。
きっと未練たらしく何度も振り返るアホな登山者を笑っているに違いない。でもその気持ちは、わかる人にはわかるはずだが…
  ああ、降りたくないなぁ〜〜〜…


  
遠ざかる龍門小屋   と   障子ヶ岳へ続く稜線


久々の下りでは当然膝が笑った。三年前までは苦もなく降りられたのだが、頭で考えているように足が動いてくれないのだ。情けないことに転倒を何度も繰り返し、あちこち擦りむいた。
それでも何とか日暮の小屋にたどり着き、冷たい水をがぶがぶ飲む幸せよ。ここからの林道歩きが最後の頑張りどころ。
大井沢温泉で汗を流すが日焼けした足と手、擦りむいたあちこちの傷が染みて湯船につかれない。これもまた山の洗礼なのだろう…

下界での三年もの蛮行を相模様がきっと怒っているのだろう。これに懲りたらもっと頻繁に通ってこいと言っている声がした。
相模様の忠告を無視するわけにはいくまい…

でも少しだけ良いことも…
それは2sの体内脂肪を燃焼出来たこと…


帰って夕飯食べたら見事に"大復活"しちゃったけどね…