【いにしえの道から羽黒山へ】


出羽三山神社の重厚な茅葺き屋根

【日 程】2012年06月24日(日)
【山 域】山形県鶴岡市(旧羽黒町)
【山 名】羽黒山(414m)
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバ】2人
【コース】鉢子口から往復
(概 略)


鉢子口(10:15)---(11:25)見晴らしの丘---(11:50)山頂出羽三山神社(12:20)---(13:30)鉢子口



登山口の鉢子(はちこ)とは山形県東田川郡庄内町(旧立川町)立谷沢地区の小さな集落名である。数年前に地元有志がかつてここから羽黒山頂まであった古道を復活させたという話を聞いた。一度歩きたいと思っていたのだが、なかなか機会に恵まれず本日に至った。
2.5万分の1の地形図を持っただけで現地に赴いたが、案内看板や道標が整った立派な参詣道であり特に迷うような場所もなく歩けた。
県道端の駐車場から舗装された細い林道を歩き出す。集落から一軒だけ離れた民家の側を抜け少し登ると水場があった。「水神様の湧水」とのこと、力水をつけて先を目指すもメタボチェックに引っかかった我が巨体は、作用する重力に抗う術もなく、情けない悲鳴を上げるに至るや後続の相方の失笑をかう。途中あちこち枝分かれした作業道に惑わされそうだが、落ち着いて見ると羽黒登山口としっかり書かれた道標がある。

  
鉢子口登山路入口   と   稚児墓

古びた細い石柱には「右手向・左羽黒山」と刻まれている。ここを左折すればすぐに行者塚がある。これは羽黒開山の祖である鉢子皇子(はちこのおうじ)の墓と伝えられているそうだ。ちなみに右に行くと元羽黒と呼ばれる台地があるそうで、そこは羽黒修験道の発祥の地とされ、かつて多くの宿坊や社殿があったらしい。今回は時間がなく行けなかったが機会があれば行ってみたい。

道は杉林の中に開かれたもので日差しを遮ってくれ助かるも、日頃の運動不足が祟り汗が滝のように流れ落ちる。あまりの辛さに「ヒェ〜〜」と悲鳴のような雄叫びを上げるも何の役にも立ちやしない。これは根本的に生活習慣を変え減量するしかないと相方に説教される。
鉄塔が見え急登を少しがんばると視界が開け見晴らしの丘に到着、ザックを下ろし大休止とする。

  
見晴らしの丘  と  遠く日本海を望む

なかなか素晴らしい展望に癒される。この日はあいにく我らが鳥海の雄姿は雲に隠れているが、日本海にぽっかりと浮かぶ飛島が思いの外はっきり望まれた。庄内平野の良い展望地である。
穏やかで心地よい風に導かれるように道を進み少し下ると舗装された林道が現れた。これを横断しさらに暫く進むと山頂まで24分と書かれた道標があった。登り始めにも見晴らしの丘まで28分と書かれた道標があったが、なかなか良いセンスだと思う。

このあたりまで来ると杉木立の幹が極端に太い、神域に入った証拠であろう。と、突然右手にブナの原生林が現れたかと思う間もなく、上方に林間に似合わぬ賑やかな赤色の社殿の姿が目に飛び込んでくる。先日の強風でなぎ倒されたのか杉の巨木が行く手を遮っている。これを乗り越え急登を一頑張りすると視界が開け山頂にある霊祭殿の東方に飛び出た。まずは重厚な茅葺き屋根の出羽三山神社へ向かい参拝する。いつもは(と言っても最後に来たのはいつのことか記憶にないが)文明の利器を用いて楽して来るので、あまり有り難みはなかったのだが、改めて眺めてみると実に立派なものであると再認識した。

  
見事なブナ林  と  登り切ると霊祭殿が

また新たな発見もあった。知らなかったのは自分だけかもしれないが、それは三山神社裏手のブナ林である。羽黒と言えば参道沿いの太い杉木立が有名であるが、こんな所にこれほど立派なブナ林があったとは驚きである。想像ではあるが、そこは太古から人の手が入ってない原生林なのではないかと思われる。三山神社本殿のすぐ裏手であり何らかの事由で(多分信仰上の)伐採を免れたものであろう。周辺の杉の巨木を鑑みればその年月は相当のものと思われる。太いブナを見ていると心が落ち着いて実に良い。

山頂広場の片隅で慎ましく昼食休憩をしてると、さすがにそこは全国的に名の知れ渡った観光地、続々と人が集まってくる。社殿の中からは大太鼓の低音が轟き、山伏が吹き鳴らすホラ貝の独特なフレーズが山中に響き渡る。ここは羽黒修験の中枢の地、神聖な神域なのである。

  
三神合祭殿

月山、湯殿山、羽黒山を出羽三山と呼ぶのは周知であるが、ひときわ高い場所にある月山神社へ拝するのが辛い信者は、ここ羽黒山の三山神社を拝すれば全神社を参拝したことになると言われている。私のような軟弱者はそれで良しとしよう。

もとい、神域で山菜をせしめるような蛮行者に左様な霊験などあろうはずもなかろうが…(笑)



三本足のカラス