【夏山始動、障子ヶ岳周遊】


霞む竜ヶ岳

【日 程】2009年6月7日(日)
【山 域】朝日連峰
【山 名】障子ヶ岳(1481m)
【天 候】小雨
【メンバ】単独
【コース】バカ平から周回


バカ平(6:55)---(9:24)紫ナデ---(10:25)障子ヶ岳(10:46)---(11:30)粟畑---(12:55)焼峰分岐---(13:43)バカ平


目覚ましに飛び起き外を見たら雨は上がっている。そそくさと準備をして車に飛び乗り出発、庄内側は降ってなかったが、月山第1トンネルを抜けたらジャジャ降りだ。夏山事始めは雨の洗礼を受ける。

それでもバカ平で荷を整え出発する頃には霧雨程度、途中ストックを忘れたことに気付き引き返す。15分のロス…
出谷吹沢の渡渉点は昨夜の雨で少し増水、落ちないように気を付けるが、予想通り滑って片足を突っ込む…
わかっちゃいるが、我ながら実にドンクサイ

いきなりの急登に鈍った体が悲鳴を上げる。すっかり緑濃い夏色に染まったブナの森は、雨の匂いを草色に染め、ウグイスのさえずりが良く似合う。人の気配は皆無で突然飛び立った山鳥の羽音がドドドドッと重低音を轟かせびっくりする。
葉の繁ったブナの森は傘いらず、半袖のTシャツ一枚で心地よい汗を掻きながらゆっくり、ゆっくり登る。

綺麗に刈り払いされた登山路はスパッツもいらない。路傍のレンゲツツジの艶やかな姿に一瞬どきり、誰かに心の内を見透かされているかのような狼狽を覚えた。
高度を稼ぐごとに出迎えの花達もその姿を変える。イワカガミやイワウチワも見事だが、下界ではとうの昔に姿を消したカタクリが、雨のためか恥ずかしそうに花弁を閉じ大勢出迎えてくれたのには笑みがこぼれた。


   
艶やかなレンゲツツジ   と   清楚なカタクリ

残雪が現れると展望が利く、見渡せば竜ヶ岳より上は厚い雲にすっぽり覆われており、山頂方面は全然見えない。暑がりの自分にはかえって好都合だ。風はほとんど無く霧雨が冷たいシャワーのようで気持ちよい。だんだん虫がうるさくなってきたので、はっか液を帽子に一吹きしたら嘘のようにいなくなった。でも時間の問題だろう。トンボさんの早期活躍を祈る。

大クビトからの登りでは、真綿で首を絞められるような苦痛を楽しみ、這々の体で紫ナデに到着、ここから眺める障子ヶ岳の姿がお気に入りなのだが、本日は恥ずかしがって出てこない。待っていても無駄な気がしたのでそのまま進む。いつもは切れ落ちた岩壁にヒヤヒヤしながら通るのだが、視界が利かず展望が無くそんなに怖くない。行く手に天を突く鋭鋒の姿がぼんやりと雲の中に浮かんでいる。なかなか幻想的だ。



ブナの新緑と雲に隠れた竜ヶ岳

最後の急登で汗を絞られ何とか山頂にたどり着き一服していたら、粟畑側から天狗小屋の管理人であるY田さんと、N山岳会のK池氏がひょっこり現れた。やあやあ暫くですと暫しの談笑タイム

聞けば昨夜は天狗泊まり、昨日来れば飲み放題だったのにと…(笑)
今度ゆっくり遊びに行きますよと言ったら、酒は売るほどストックがあるから、つまみを持って来いとのこと。
そんなストックすぐに無くなるから持って行きますよと言ったら
「そうだよなぁ〜」と大笑いする。

これから各小屋とも週末は管理人さんが入り夏山本番、今年は朝日に何回通えるのだろうか。
「さて、仕事しなくては」と言い残しあたふたと下って行くのを見送り、展望のない山頂をこちらも後にして下る。
障子池はまだまだ雪の中、雪の消え際にシラネアオイが独特の濃い紫色の花を競って咲かせている。日差しのないこの日はこの紫色が妙に艶めかしく感じる。
ハクサンチドリもぼちぼち咲き始めていた。

粟畑も展望なし、小腹が空いたのでザックからパンを取り出し囓る。少し風が出てきたので風の当たらぬ所まで口にくわえたまま移動してたら、この日初めての一般人とスライド、焦って「ご・ん・ぢ・づ・ゎ」と挨拶したら目を丸くしていた。
何とも行儀の悪い変なオッサンだなぁと思ったに違いない…
そのまま雨量ロボットまで残雪の斜面を靴スキーで一気に下ると、気温が上がったのを肌で感じた。



雨量ロボット上部の残雪状況

時折日差しがあるものの視界は回復せずまっすぐ下る。帽子のひさしをくるりと後ろに廻し、視線を山菜モードに換えてビニール袋をザックから出す。こうなるとペースはガクンと落ち、足元フラフラ状態でゆっくり下る。
夕餉のおかずにコシアブラを少々いただいた。



ブナの新緑とタムシバの白い花の競演

途中トンネルの出口のような展望台があるのだが、ヘルメット姿の人が腰を下ろして休んでいた。挨拶するとお互いに顔を見合わせ
「あれぇ…」
何とN山岳会のS谷会長であった。
やあやあ、どうもどうも、と言うことで暫しの談笑、見れば傍らに巨大なザックが…
いったい何処の藪を漕いできたのか衣服もかなり汚れている。

聞けば塩漬用のウドを採りに来たんだとか…
まだ頑張るんですかと聞いたら
「もうちょっと、ゆっくりの〜」との返事
まあザックの中身が何であるかはともかく、もう喜寿も近い御歳な筈、そのバイタリティーには頭が下がる。お互いに気をつけてと別れた。



トンネル出口(会長が少し写っている)

久しぶりの山遊びは、あいにくの天候なれど、爽やかな木々の緑と心癒す空気に包まれ、充実したひとときを過ごせた。
さてさて、次はいつ来れるのか?
頭の中のカレンダーに丸印を付けるが…