【龍門小屋 今年も沈殿開始


清太岩山と雷雲覆うユウフン山

【日 程】2009年6月13〜14日(土、日)
【山 域】朝日連峰
【山 名】竜門山(1688m)
【天 候】雷雨
【メンバ】単独
【コース】日暮沢からピストン


6/13日暮沢小屋(9:20)---(10:46)ゴロビツ水場---(12:00)清太岩山---(12:29)ユウフン山(12:34)---(13:19)龍門小屋


この日は早朝に村の共同草刈り作業を終えてからの出発、月山第1トンネルを抜けたら雨、大井沢も雨、日暮沢終点でも小雨、どうやら週末の雨に好かれたらしい…
天気予報はそんなに悪くなかった筈、合羽は着ずにゆっくり歩き出す。久々のお泊まり山行の荷物が肩に食い込みすぐに息が荒くなる。中身は殆ど水物だが…

すっかり緑濃くなったブナの葉は雨を遮り、名も知らぬ可愛い小鳥が二羽、梢に留まり息を荒げた変な生き物ををじっと観察している。
日射しが無い分登行はいくぶん楽で亀足ながら順調に進むが、遠くで雷鳴が聞こえたかと思ったら雨足が強くなり我慢できずに傘を出す。

やれやれ…
ゴロビツの水場を過ぎ、これから雪渓登りという場所まで来たら何となく嫌な雰囲気の風が頬をなでた。これはやばいぞと、どこかから声が聞こえた。藪の中で様子を伺いながら停滞していたら、いきなりの「ピカッ、ド〜ン」
こ、これは隊長の怨念か…?

ストックだけを放り出し、傘を差したままザックを背負い這いつくばって死んだふりをする。でもこれこそ「頭隠して尻隠さず」のお手本みたいなもの、近くで熊殿も呆れていたに違いない。
無事だったのはただの偶然に過ぎない。すぐ近くで強烈な稲妻が走り轟音が轟くこと数回、まったくもって生きた心地がしなかった。



ゴロビツの雪庇の状況

傘を広げたままでは危険だという意識はあったのだが、合羽を着る余裕もないし濡れるのも嫌だった。横着を絵に描いたような中年の蛮行に驚いたのか、雷様は幸いにも次第に遠のいて行った。およそ30分の停滞である。

すぐにそのまま急いで雪渓に取り付く。雪庇の頭では結構な風が吹いており藪の中へ直行し合羽を着る。小腹が空いたのでパンを取り出し急いで食べる。ふと視線を上げると、すぐ目の前に美味しそうなコシアブラがあった。
しめしめ…

何が「しめしめ」だ。お前はアホか。と何処かから聞こえたような気がしたが、獲物を目の前にしての敵前逃亡なんて、いくら雷が怖かろうが…

やれやれ、いい歳したオッサンのすることか…

そんなことをしている間に雨はとっくに上がっていた



小朝日は何とか見えたが…

慰霊碑に黙礼し清太岩山を通過、いったん下ってユウフンの登り返しが辛く暑い。合羽の上だけ脱ぎ、半袖のTシャツ一枚では肌寒いが、歩いていればそうでもない。
ユウフンでは単独の若い男性が休んでいた。こちらも一服する。
今日はどちらまでと聞いたら、天気が悪いので龍門小屋へ避難するとのこと。

竜門山の残雪はかなり多く視界の利かぬ中ゼイゼイ言いながら登る。この辺が、へっぽこ中年には一番辛いところ、分岐から暫く夏道を下るとウスユキソウの葉がガスの中に白く輝くように見えた。イチゲも咲き始め寒江山まで行ければ楽しいだろうなと考えながら進むと、前方から話し声が聞こえて来た。そのまま近づくとガスの中からN山岳会のI川さんとKちゃんの姿がぬっと現れた。おおお…


   
竜門山付近のウスユキソウとイワカガミ

懐かしい龍門小屋に入ると先行していたS藤さんが笑顔でお出迎え…
いつもの場所に荷を置くと何はともあれすぐにプシュッである。
S藤さんが先週担ぎ上げデポしていたビールは、冷え具合もちょうど良く喉越しさわやかだった。二階の先客達は悪天のため狐行きを諦めた様子である。

S藤さんとは機会があれば是非龍門で一献と言いながら何年過ぎたろうか。ようやく念願叶った。
今年は管理人のE藤さんがK2へ行っているため、代わりにI川さんがその重責を担うそうで、この日が管理業務初日とのことである。

その後、いつものように腹の皮が痙攣する爆笑宴会が果てしなく続き、何時に寝たのやら…
雷談義が実に楽しかった。


夜中に奇麗な星空を眺めたような記憶がかすかに残っている。が、あれは酔っぱらい中年の醜態に腹を立て、誰かが頭をどついた時に煌めいた星だったのだろうか?
翌朝の頭の痛みはそれほどひどかった。




6/14龍門小屋(9:54)---(13:58)日暮沢小屋


翌朝、物音に目覚めるも起きあがるのが辛く暫しまた夢の中へ戻る。惰眠を貪るのは心地良いが、体調はいつものように最悪である。

♪わかっちゃいるけどやめられない…♪ 

この唄は、我が人生において普遍的意味を持つ唄である。さすが天才青島だと、いつも妙に納得するのだ。
そして二日酔いの時だけ鉛のように重い頭を、深い井戸から引っ張り上げるようにして起き出す。

S藤さんは午後に下界で用事があるそうで、もう既に朝食も済ませ準備万端整い涼しい顔をしている。登山者とはかくありたいものといつも思うのだが、へっぽこ不良中年には叶うことのない願望であろう。S藤さんは七時前に出発した。
それと入れ違いに単独の登山者が入ってきた。聞けば日暮沢からとのこと、

ひぇっ!!?

いったい何時に出たのか聞いたら3時半頃との返答、天気予報を当てにしての寒江山で昼寝を楽しむ日帰り山行の予定だったらしいが、悪天のため小屋で休んで帰るという。
朝食を食べてうだうだしているとI井さんがひょっこり現れた。三時間掛からずに登ってきたらしい。

ひぇっ!!!

み、みんなすっごいなぁ〜。


ほげ〜っとした朝のメローな時間は、あっという間に過ぎていく。しかし視界はさっぱり回復せずお花見はあっさり諦める。
9時半頃に狐からA達さんが到着してから5人でゆっくり下る。何故下りに4時間もかかるのかは秘密である。



白いカタクリが羽ばたく…

大井沢温泉で汗を流す頃にはすっかり晴れ上がり、月山や湯殿山が綺麗に山頂まで見えた。

なんでこうなるのかなぁ〜?

ご同行いただいた皆様お世話になりました。

機会がありましたら呑んだくれの不良中年とまた遊んでやって下さいm(._.)m