新春突発性藪山徘徊 「田代山」


山頂直下、正面が田代山

【日 程】2009年01月04日(日)
【山 域】弁慶山地
【山 名】田代山(626m)
【天 候】曇
【メンバ】単独
【コース】松山温泉観音湯 → 山頂往復
(概 略)


観音湯(8:35)---(9:24)尾根取付---(11:14)P-600---(11:36)山頂(11:52)---(13:15)尾根取付---(14:03)観音湯


田代山は酒田市と戸沢村の境界上にあり、広域合併前は旧平田町と旧松山町の町界の山であった。以前から一度登りたいと思ってはいたが、夏道がなく藪がうるさそうなので雪のある時期にと暖めていた山である。
鳥海南面の升田付近から連なる600〜700m程の低山は、最高峰の弁慶山を経て田代山から最上川に落ちる。これを弁慶山地と呼ぶことを知ったのは最近のことである。

毎年恒例の寝正月、珍しく朝7時に目が覚めた。天気は何とか持ちそうな雰囲気、幸い家人は誰も起きてこない。しめしめ、新年早々何とラッキーなことだろう。
脱兎の如き素早さで飛び出る。
相変わらずの病気は年が改まるも直しようがない。

無雪期ならば林道白糸線が柏谷沢まで通っているのだが、冬季は積雪のため閉鎖される。松山温泉観音湯までは車が通れるので近くに置かせて貰った。
柏谷沢は内陸と酒田を帆掛け船で行き来する時代(おしんが酒田に奉公に出た頃?)は結構栄えたらしいが、今は大河最上川を堰き止める巨大なラバーダム(さみだれ大堰)のある地として知られている。

村の真ん中にある小さな流れが郡界で田代山まで伸びている。つまり酒田市柏谷沢と最上郡戸沢村柏沢という二つの地名を持つ集落なのだ。
林道が通るまで村の交通手段は、舟で最上川を渡り対岸の国道47号から車で移動するという僻地であったが、現在は、さみだれ大堰の上を誰でも通って行ける。

地形図の600ピークから最上川に向かって派生した尾根を登るのだが、はっきり言って相当藪がうるさい。この日の積雪は尾根取付(P-216)でおよそ50p、田代山山頂で80pほど、3月頃の山行がベストかな?


   
この藪はまだ良い方   と   UFOの発着所?


植林された杉林の中をひたすら登り標高450m付近に辿り着くと、そこだけぽっかりと開けた場所が現れた。UFOでも降りた場所だろうか?
藪漕ぎに辟易した頃標高500mあたりからブナが現れる。しかしながら細い雑木が密生し歩き辛い事この上ない。おまけに展望も無い。ただひたすらの藪漕ぎは、今年の行く末を暗示しているような気もするが…
鈍った体からは大量の汗が吹き出す。

正月から何が楽しくてこんな所にいるんだろうと自己嫌悪に陥る。
やれやれ…

何とか600mピークまで辿り着く。左足の甲が靴にあたり変な痛みが下からずっと続いてたので、靴紐をゆるめると少し良い感じ、ここからルートが右に大きく変化する。
深いラッセルをしながら進むと立派なブナ林となる。こうなればこっちのもの、うるさい藪もなくなり尾根伝いに景色を楽しみながらゆっくり進むと、親方がブナに登った痕跡を発見、見渡せばあちこちに同じような傷がある。

ウ〜〜ム…(冷汗) ここは親方の巣だな。


   
親方の芸術的爪痕   と   眼下に流れる最上川


深い小林川を挟んで見える向こうのピークは大森山だろうか? 名もない峰々が墨絵のようでとても美しい。それにしても山頂まで続くブナ林は幽玄で実に良い雰囲気だ。これだけでも来た甲斐があるというもの。
所々にかなり太いブナが残っている。石油が入るまでは、この辺まで炭焼きに村人が入っていたと地元の古老に伺ったことがある。


   
深い沢を挟んで大森山?   と   前方の白く輝く場所が山頂


ひょうたん島のような狭い開けた場所が現れた。周りを見回してもここより高い場所はない様子、GPSで確認したらどうやら山頂に間違いない。残念ながら三角点は積雪のため確認できない。
雪を踏み固めザックを下ろすとすぐに、定番のカップ麺にテルモスからお湯を注ぐ。
年始めに未知の山に登頂できた事を素直に山に感謝する。展望は得られないがかなり雰囲気の良い山頂だ。


   
ここだけ開けた山頂   と   眼下に望む柏谷沢集落


が、怪しい雲行きに大急ぎでカップ麺をかき込むと、すぐに来た道を忠実にとんぼ返り、本当は別のルートを下りたかったのだが、この藪では無理というもの…
下りは気温が上がったのか雪が重くなり結構難儀する。何処かで膝でもひねったのか、左足に違和感が…
下るに従い痛みが増し最後はかなりの鈍痛に顔をしかめる。

温泉に飛び込む頃には雨も降り出し、絶妙のタイミングで降りてきた事に驚く。
先客一人の湯船にまったりと浸かり、ストレッチとマッサージをしたら、不思議なことに痛みは消えた。これも温泉効果だろうか?
下山後数分で温泉に浸かれるなんて、中年にとっては理想的な山である。