【突発奇行、よぱらかぱらと鳥海へ】


ハクサンイチゲと鳥海山

【日 程】2008年6月22日(日)
【山 域】鳥海山
【山 名】笙ヶ岳(1635m)
【天 候】晴れのち曇
【メンバ】単独
【コース】二ノ滝口→長坂道→笙ヶ岳→万助道→二ノ滝口
(概 略)


一の滝駐車場(6:10)---(7:33)ガラ場---(9:40)笙ヶ岳---(10:53)鳥海湖(11:48)---(13:12)万助小屋(13:46)---(15:11)一の滝駐車場


ある一定の年齢を過ぎると微妙に考え方や生活のリズムが変わるのは私に限ったことではないと思う。個人的には、涙腺がやけにゆるくなり思いつきで行動することが多くなった。それ以外にも堪え性がなくなり怒りっぽくなったり、活字を読むと眠くなる(もっとも学生時代からその傾向はかなりあったが)。協調性がなくなってきたと感じることも多々ある。つまりは我が儘になったのだろう。

最近は山に行くにも計画性がとんとなくなった。所謂、鉄砲玉状態・・・
以前は泊まりの時は必ず登山計画書を書き家に置いていったが、最近は行き先もろくに教えないで飛び出す。日帰りは更に酷く、家族が寝ている間に泥棒のように物音も立てずに抜け出す始末、コース変更等と言うレベルではなく行き当たりバッタリ、ゆえに家族は休日の悪天を毎朝仏前で祈っている。
今回の山行も寝床の中で夢を見ながら計画し、目覚めると同時にあたふたと飛び出した不良中年の典型的な奇行である。

笙ヶ岳は2004年の8月に長坂道を登っているが、花の盛期に登ってみたいと当時思った記憶が残っている。笙ヶ岳は吹浦口から登れば割合楽に登れるのだろうが、私は吹浦口自体登ったことがない偏屈者だ。今回も多くの人達はそちらからやって来てるようだった。
長坂道は本来、藤井集落の辺りから登り始めるのが本道だが、二ノ滝口から万助道、長坂道と三本のルートが千畳ヶ原で繋がっていて周回できるのが魅力、その上シーズン中でも滅多に人と会わない静かな山行が出来る。また、二ノ滝口から笙ヶ岳まで標高差1100mの一気登りも眺望が刻々と変化しとても魅力あるコースだ。

が、万助道の渡戸から先には水場はなく私は2リッター弱を背負って出発、尾根に出て見晴らしが良くなったら風が止み日射しが強くなった。ガラ場付近ではレンゲツツジが見事でウラジロヨウラクとのコラボが見事だ。高度を稼ぐに従い出会える花も変化し次はどんな花と出会えるかワクワクしながら登っていく。
しかしながら中年の体力の衰えは甚だしく、折からの好天にも助けられ汗だくで登る羽目になる。誰かも言っていたが鳥海が3000m級の山になった気がする。



登山道沿いはお花でいっぱい


時折気の早いニッコウキスゲも見えた。そしてお待ちかねハクサンイチゲが・・・
笙ヶ岳からのハクサンイチゲと鍋森を従えた鳥海山の写真は、誰もが見たことのある定番中の定番風景、でもこれもまた実物は更に迫力があり良い。
真面目に写真を撮る人はここで30分も粘るのだろうが、せっかちな中年はデジカメで2枚撮ると先へ進むf(^^;)
見上げれば笙ヶ岳はまだまだ先だ。

この辺から体調に変化が・・・
綺麗な花を見つけるたびに、しゃがんだり立ったりするもんだから立ちくらみが・・・
折からの強烈な日射しが拍車をかけ汗が止めどなく流れ熱射病寸前なのだろうか、もうろうとした意識(中年は大げさなのだ)で、よぱらかぱらと歩く様は、酔っぱらいのようで恥ずかしいのだが、今のご時世いくら山とは言え真っ昼間から酒など飲めるはずもない。しかしながら頭の中では、冷たいビールがエンドレスでクルクル回っているイメージが・・・

中年の悲哀が滲む奇行とも言える山行は、もう少し体力があれば様になるのだが、如何せん突き出たお腹が更に悲哀さに拍車をかける。
それでも何とか頂上にたどり着くと、二人の先行者が不思議そうな顔で出迎えてくれた。そして開口一番「どっから登ってきたんだすがぁ?
二ノ滝口と言っても理解できていない様子に、地図を取り出して丁寧に説明する中年を、上空でトンビが輪を描きフッと笑っていた。



笙ヶ岳山頂付近からの鍋森を従えた鳥海山


そのまま鳥海湖まで足を延ばし、未だ湖面の氷が溶けない湖畔まで降りいつもの昼根石で昼食休憩、雪でキンキンに冷やした麦茶が美味しい。この日は少しリッチに「赤湯からみそラーメン龍上海」をいただく。しかしこれが後で裏目に出る。
満腹状態に陥ると襲ってくるのは当然睡魔、おもむろにトドのような脂肪塊が横たわるとすぐに鼾が響き渡ったらしい。でも当人には聞こえるはずもなくお気楽に惰眠をむさぼるのであった。



まだ雪に覆われた鳥海湖 と 花の字雪渓?


鳥海湖で溺れる我が姿にびっくりして飛び起きる。まあ夢ではあるが何とも後味が悪い。のそのそと荷物を片付け千畳ヶ原に向け残雪を滑落しかんばるまる。万助道への道標はまだ雪の中に隠れて見えない。実際このルートを歩くのは久々で記憶もおぼろげ、残雪に寸断されたルートをあちこち迷いながら、よぱらかぱらと進むが、高度が下がり灌木帯に入ると暑いったらありゃしない。龍上海の影響で喉もひっきりなしに渇く。当然持参の水は底を突いた。這々の体で万助小屋に到着する。

ここのお目当ては当然の冷たい水場、早速ペットボトル一本を一気呑み・・・
朝日ビールより断然美味しい。手を10秒も入れておけないほどの冷たさだ。
伝統ある万助小屋には残念ながら未だ泊まったことはないが、中は非常に綺麗に掃除され塵一つない。外の日射しが暑いので中で暫く横になる。時間があったら泊まってみたい小屋だ。中年の体力はもう限界に近く暫くウトウトとうたた寝 zzz



日本海と庄内平野


中年の悲哀に満ちた突発山行は。改めて考えてみると現実逃避なのかも知れない。下界は最近とみに世知辛く余裕というものが感じられない。私のような極楽とんぼには上手く順応できない生活スタイルだと最近感じることが多い。
そんな下界で暮らしていると、自分の感性がどんどん磨り減っていくような、焦りにも似た危機感を、無意識に持つようになった。

「成功者」と呼ばれる人達がメディア等でもてはやされる。けれども彼等の本質は世間に流される情報と少し違うような気がする。それは偏屈な中年のやっかみかも知れないが・・・

「一番大切なものは、目には見えないものなんだよ」と何処かで狐がつぶやく・・・

結局、一日まったり遊び疲れて帰宅するも、不穏な気配が漂う我が家・・・

何故か愛車の車庫には、燦然と光り輝く「草刈り機」を積んだ軽トラが・・・


ゆるくなった涙腺からあふれる大量の「汗」を止める術を知ってはいるが・・・

ふぅ・・・