【中登隊、岩手山で神通力】
                           岩手祭り忘年登山


氷着した山頂のお地蔵さん

【日 程】2007年10月27〜28日(土日)
【山 域】八幡平周辺
【山 名】岩手山(2038m)
【天 候】もちろん晴れ
【メンバ】4人
【コース】10/27 馬返→9合目避難小屋
(概 略) 10/28 9合目避難小屋→山頂お鉢巡り→馬返



10/27 馬返(8:05)---(10:45)5合目---(12:23)8合目避難小屋(12:57)---(13:15)9合目不動平避難小屋



中登隊、秋の定期山行は岩手祭りと決まっている。幹事は半強制的に地元代表(唯一無二の)higurashi隊員に毎年押しつけている。
今回も計画立案、関係機関への問い合わせ、食材の買い出しに至るまで全てお世話になってしまい冒頭にて感謝申し上げます。

早朝3時、目覚ましに飛び起き、急いで荷物を愛車に積み込み出発、ボーっとしながら土砂降りの中ひた走ること暫し、突然登山靴を忘れたことに気付く、面倒くさいのでそのまま行こうとするも、得体の知れぬ強力に引き戻されおよそ30分のロス・・・。
途中持参の「はえぬき」が「よねざわこまち」に華麗に変身し、車体が軽くなるもBGMが賑やかな置賜弁に・・・

土砂降りの雨の中一路盛岡を目指すも、まるちゃんはこんな天気で本当に登るのかかなり不安な様子、何回も「ほんとけ?」を繰り返す。
北上を過ぎたあたりで夜が明け、盛岡IC近くでは雨が上がり目指す岩手山がほんの少し確認できた。

約束の待ち合わせ場所では既に、A.TOM隊長とhigurashi隊員が車の外で待機中、挨拶もそこそこに車一台を網張にデポ、予定を変更し馬返から登ることにする。途中、鞍掛山の見事な紅葉に「ホエェ〜!」を連発する。

事前の問い合わせでは、8合目避難小屋の水は止まっているとのことだったので、下から背負い上げるつもりでおのおの大量の水を準備していたのだが、幸運にもこれから小屋締めのため登られるという管理人さん達と遭遇し、今日だけは水場が使えるとの情報を得る。
ほっとして視線を上げると先程まで厚い雲に隠れていた山肌が徐々に見えてきた。

私と隊長がそろえば、その神通力は強大に増幅され計り知れないパワーを生む。
初めて参加のまるちゃんは、なかなかその未知の力を信じようとしないが、その後彼女が体験する奇蹟は果たして・・・


  
巨大なコンタラザックを背負った まるちゃん

落ち葉の絨毯が続く


馬返から8合目避難小屋まで高度差およそ1120m、落ち葉の絨毯が敷かれた登山道を賑やかにゆっくり進む。今回は旧道を合目の刻まれた標柱を目標にしてソロリソロリと登るのだ。
突然「ドッカ〜ン」と落雷のような爆音が響き渡る。
中登隊の肝っ玉は異常に小さいので、一同「ヒエッ!」と一緒に飛び上がる。最後尾でその光景を目にしたまるちゃんが「ぐふぐふ」と蔑みの視線・・・
ピクリとした動揺も見せない彼女の度胸は驚愕に値する。

higurashi隊員の話によれば、これは麓の自衛隊が実弾演習の最中で、よくあることらしいのだが、何の前触れもなく突然響き渡る大砲の炸裂音は、平和ボケした私の心臓には相当悪い。
その後「ヒエッ!」「ぐふぐふ」を数度繰り返す。

一時周囲を厚く覆っていた雲は、我々の神通力と米沢小町の度胸に恐れをなしたのか徐々に薄くなり、心配していた雨は一滴も落ちることなく8合目避難小屋に無事到着した。そこで暫しの協議

隊長:「8合目小屋は、管理人さん達が小屋締めの宴会するだろうから、我々は9合目避難小屋に緊急避難して、静かに岩手山の夜を楽しもうよ」

隊員B:「幸い水筒も各自いっぱい持ってるし、ここでいっぱい水を汲んでも大して歩かなくてもいいからいいんじゃない」

隊員A:「そうだね、きれいな星空を眺めながら静かに人生を語り合うなんて、最高の贅沢だよね」

隊員C:「ぐひぐふ・・・」


  
何故か我々の周りだけ晴れてる?

7合目の巨石と祠


と言うことで大量の水を各自背負い(私のザックは一気に6s重くなる)静かな人生の語らいと煌めく星座を求めて、9合目の不動平避難小屋へゆっくり進む中登隊であった。
なにゆえお風呂を湧かせるほど大量の水を必要とするかは、中登隊の山行に参加しないとわからない謎である。

ふと何かを感じ視線を上げると突然雲がスウッと切れ、山頂方面のお鉢が雄大な姿を現す。初めてそれを目にしたまるちゃんは感嘆の雄叫びを「ホエ〜〜!」っと全山にこだまさせる。と同時に、不動岩と並んで石造りのかっこいい避難小屋が姿を現す。あまりのタイミングの良さに皆唖然としているが、これも中登隊の神通力なのである。


  
9合目不動平避難小屋   と   お鉢を見上げる

既に冬終いを終えた小屋の中は木の香りが心地よく、きれいに保たれた室内は快適で暖かい。既に閉じられた明かり取りの小窓を開けると、明るさと室温も幾分増した気がした。ゆっくりと荷を解きささやかに乾杯、この後訪れる登山者はなく、穏やかで静かな語らいのゆったりとした山の濃密な時間が流れていった。

夜来時折聞こえる雨音も程良いアクセント、不思議なえにしで集う面々それぞれには、確実で揺るぎない時の営みがあり、ほのかなロウソクの灯りに映る優しい心遣いには、ゆらゆらと穏やかな影が揺れている。上界で語り合う言葉は、不思議な心地よさを伴ったエッセンスに溢れ、幼き日のイノセントな感情を呼び覚ます。
夢のような山上での語らいの時間は、過ぎてみれば本当に瞬きするほど一瞬に感じる。私にとってそれは、この世のどんな至宝よりも貴重でかけがえのない時間なのだ。

そんな時間を共有できる岳友に感謝である。

それにしても・・・
豪華絢爛たる御馳走だったなあ・・・。


  
この夜の食材とキムチ鍋
higurashiさん、ごちそうさまでした<(_ _)>




10/28 不動平(8:15)---(8:48)山頂---(9:40)不動平(10:02)---(12:30)馬返



目覚めると外は既に明るく雨は完全に上がった様子、早起きのみんなは外で歓声を上げている。急いで外に出ると雲海の隙間から今にも朝日が飛び出してきそうな雰囲気、ご来光を撮影しようと一歩前に踏み出すと冷たい風がピシッと肌を刺す。意味不明の奇声を発しながらすぐに小屋の中に逃げ込む根性無しがこの私である。すぐにシュラフにくるまり二度寝・・・

再度外の奇声で目覚める。まるちゃんは、モルゲンロートに染まる光景に感激の涙を浮かべながら、必死に寒さに耐え撮影に没頭していたとのこと。
ウ〜〜ム・・・ さすが豪雪地帯で大きくなった訳だ。
反省し外に出てみると紺碧の空にお鉢がくっきりと映える。鬼ヶ城の鋭い岩稜も朝陽に染まってきれいだ。
でも、寒っい・・・


  
雲海の隙間から もうすぐ陽が昇る・・・

モルゲンロートに染まる不動岩と鬼ヶ城


小屋の中では隊長を中心にこの日の行動を協議中、予定では網張に下る予定だったのだが、登山リフトは先週で営業を終了しており時間がかかりそうなので、山頂往復後馬返に下ることに決定した。
でも、本当のところは、盛岡冷麺の誘惑に負けたのが本音か?

朝食も豪華で、具だくさんのラーメンが二回戦、それにハンバーグがついた。食い意地の張った私は、身動きが出来ないほど鱈腹むさぼるり皆に呆れられる。
突然「グッド モーニング」との声、昨日会った管理人さんが様子を見にいらした。昨夜は盛り上がったろうとからかわれる。
その後荷物をまとめ空身で山頂に向かう。最初は展望も良かったが次第にガスが上がってきて、お鉢の上では冷たい風と厚いガスに覆われて視界無し。


  
朝の不思議な光景   と   不動平と鬼ヶ城

先頭を行く隊長が何やらブツブツと呪文を唱えている。すると突然青空が現れ一瞬視界が開けるもすぐにまた同じ、やれやれ、隊長一人の力では無理のようだ。
山頂に到着するも同じで風も強くとても寒い。岩手山と刻まれた標柱にはビッシリと氷が付着している。たまらず風下の岩陰にしゃがみ込むと風は来ない。何はともあれこれだよと、隊長が登頂記念の朝日ビールをおもむろに取りだし、皆で一口ずつ乾杯、いくら寒くても喉に染み渡る美味さである。


  
氷着した山頂の祠   と   寒気に耐える隊員

初めてのまるちゃんは視界が開けず不満そうだ。可愛そうなので缶ビール片手に皆で呪文を唱えること暫し、すると山頂付近を覆っていた全ての雲が見る見る消えていくではないか。
恐ろしきは神をも恐れぬ中登隊、まるちゃんは我々の神通力をやっと本気で信じた様子である。

それにしても素晴らしきは岩手山、文字通り360度の眺望は、どこを見回しても独立峰ゆえの圧倒的高度感にあふれている。
厚い雲のベールが我々の神通力により一瞬で消え去ったシチュエーションが、劇的に感動の度合いを高めたのである。

これには隊員全員が、歓声、奇声、嬌声、怒声?、etc etc 歓喜の雄叫びを盛大に上げながら涙した。

スバ、スバ、素晴らしい、本当に超素晴らしい・・・


  
山頂からの展望


  
懐かしい三ツ石山方面   と   影岩手?の先は八幡平方面

突然現れた地元の単独行者に記念のシャッターを強制的にお願いし万歳三唱、気分を良くしてお鉢回りに予定を変更する。
高度感溢れるお鉢は、鳥の視線で空中を散歩しているような感じ、隊員は、おのおの勝手にそれぞれの構図を貪欲に求め、足並みは乱れるも不安はない。
岩手山神社奥宮では、吹き上がる蒸気に神の怒りを感じ、怒りを静めるべく皆神妙に手を合わせる。
この山は生きているのだ。


  
高度感あふれるお鉢巡り   と   凍りついた枯れ草越しの眺め


  
赤茶けた山頂を振り返る   と   焼走り溶岩流を俯瞰する


  
蒸気吹き出す岩手山神社奥宮   と   何やら神妙に手を合わせる隊員


その後お鉢からの急坂を駆け下り、一晩お世話になった小屋を丁寧に掃除し、ゆっくり新道を馬返に下った。
山頂付近では完全冬装備だったが途中からは半袖Tシャツで皆下る。イーハトーブも温暖化の影響か下界は暑いのだ。
車を回収に向かう途中に懐かしい岩手山温泉の古い建物に寄り道する。隊長と二人で、それぞれ一昔以上前にマニアックな温泉に浸かったことを懐かしく思い出すも、今は完全な廃屋である。

その後higurashi隊員の案内で網張温泉入浴、盛岡に出て噂のぴょんぴょん舎本店で盛岡冷麺大盛りをペロリと平らげ、今年の中登隊岩手祭り忘年登山を恙なく終了した。

隊員の皆様、本年もお世話様でした<(_ _)>