【手強かった羽後朝日岳】


ガスの中の山頂

【日 程】2007年6月23日(土)
【山 域】和賀山塊(秋田・岩手県境付近)
【山 名】羽後朝日岳(1376m)
【天 候】曇時々雨(濃霧)
【メンバ】単独
【コース】部名垂林道終点→羽後朝日岳→林道終点
(概 略)


林道終点(5:50)---(6:55)H-600(7:00)---(7:20)H-700H二股---(7:45)H850二股---(8:50)稜線分岐---(9:15)山頂(9:20)---(12:20)林道終点


以前から興味のあった山名であった所に、去年NHKのTVか何かの特集の映像を見てから、あちこち調べたら何とか日帰りできそうとの情報を得て密かに準備していたのだが、今回、機が熟し決行の段となった。

羽後朝日岳は太古の森が多く残る和賀山塊の一つで、主峰和賀岳に次ぐ標高を持つ山である。秋田県仙北市(旧田沢湖町)と角館町の境界線上に位置する。
2.5万分の1地形図上では稜線伝いに登山道が存在するような表記になっているが、実際には無いらしい。秋田・岩手を貫く国道46号線の仙岩トンネルから少し秋田よりの旧田沢湖町の信号を南に入り、生保内川橋を渡る。後は道なりに進み、部名垂(へなたれ)林道を行き止まりまで進む。ここから部名垂沢沿いに稜線まで登り詰め、後は稜線伝いに山頂を目指すと言うのが概要である。

但し、このコースには道標等の案内板は皆無であり、登山道も存在しない。稜線にも踏み跡程度の痕跡しか存在しない。沢登りの経験がある人なら問題ないだろうが、それ相応の経験者の同行が望ましいコースと思われる。初心者の単独行動は厳に慎みたい。
とは言え、筆者も初心者に毛が生えた程度だが・・・(汗)


   
完全に植生が復元した林道        と      コース途中の堰堤とガスで見えない稜線

林道終点は地形図の場所からはかなり下流、林道が以前流された場所の復旧がまったくなされておらず、仮に掛けられた丸太の橋を渡りスタート、林道は植生?がかなり復旧し背丈以上の藪状態、親方との遭遇を避けようと呼び笛を首からぶら下げ、所々でけたたましく吹き鳴らしながら藪をかき分け、しばらくは部名垂沢の左岸沿いに進む。

およそ10基の堰堤を過ぎ最後の堰堤は右岸側を高巻く、ここからは沢の歩きやすそうな場所を選びながら、時には藪を嫌い流れの中を進む。時折ガスが切れ下流側は望めるが、上部はすっかりガスに包まれ天気回復は望めそうもない雰囲気だ。
登るにつれて両側は段々深く切れ込み、深山幽谷の雰囲気、最初の合流点のH-700m付近の二股でレスト、向かって右側の沢からは大量の土砂が押し出され流れは見えない。方やルートとなる左側の沢は鬱蒼たる藪である。足して半分に割ったらちょうど良い感じと苦笑いし藪に突入する。


   
最初(H-700m)の二股、左側の緑豊かな方がルート

二番目(H-850m)の二股、ここも左側がルート

雪が消えたばかりで土砂が残った沢を詰めるとすぐにまた二股(H-850m付近)、ここも左に進路を取る。この先は6箇所の滝が現れる。中でも2番目の大きな滝は、右岸側に高巻きの踏み跡がありロープも下がっているが、岩登りの経験がない私にはかなり勇気のいる登りであった。はっきり言って、ここで引き返そうかとかなり真剣に考えた。つまりは固定ロープを信用できなかったのだが、登りは補助的に使うだけで何とか足場を見つけ登れそうたが、上がってしまえば下りは否応なしに懸垂下降するしかなく、工事用のトラロープをそこまで信用できるかの問題なのだが、結局登ってしまった。
ロープをチェックするとまあ何とか持ちそうなので一安心する


   
次第に険しくなる渓相    と    滝が連続する

その後も滝が断続的に現れるが、巻道の踏み跡がある。固定ロープも何とか使え思ったほど苦もなく登れた。
最後の滝を詰めると傾斜の増した空沢をグングン詰める。上部はかなりの斜度だ。樹林帯を過ぎると冷たい風がガスと共に容赦なく吹き付ける。視界のない中で何とか稜線に辿り着いてレスト。少しは晴れてくれればと思いながら待つがその気配はゼロ、せっかくここまで来たんだからと気合いを入れ直し、藪の中に続く僅かな踏み跡をたどる。


   
ガスの中涸れ沢を詰める        と    稜線から山頂方面(視界と道形?無し)

山頂付近は草原となるもお目当ての花には少し早いようで、イチゲとヨツバシオガマ、ハクサンチドリが少々咲いている。今年はコバイケイソウが当たり年らしくガスの彼方に悠然と立ち並ぶ姿を認めるも、この視界ではカメラを取り出す気も起きない。
何とか山頂の表示のある場所に到着しその様子をカメラに収めると、迷うことなく即下山、視界はないし雨まで降ってきて寒くてたまらない。来た道を忠実に辿り稜線分岐から直下の急斜面を慎重に下る。こういう空沢は登りより下りの方が危険は多い。


   
山頂の朝日嶽と刻まれた石碑     と   懸垂下降した巻道(左側のV字の岩場)

一気に高度を下げると気温も少しは上昇、難儀した滝の巻道を慎重に懸垂下降したら一気に気が抜けここで少し食事を取る。虫がうるさく何箇所か刺された。
時折雨も混じり藪をこぐ度に濡れ鼠、今更カッパを着てもしょうがないので沢の中をジャブジャブとこぎながら下る。時折親方の気配を気にし警告の笛を高らかに鳴らしながら進むと愛車が見えた。
天候の影響もあり、かなり遺恨の残った山行であったが、無事に下山できた事を素直に山に感謝した。

結局この日は誰も入ってこなかった様子、寒くてろくに汗もかかなかったので、風呂にも寄らず岳友の待つ鳥海山麓へと車を飛ばした。


かなりログが乱れていますが、ルートが判ると思うので添付します。
車道終点は、当初の予定地点よりかなり下流になります。