【鬼の隙見て快晴の以東岳周回】


湖面に映る以東岳

【日 程】2007年6月17日(日)
【山 域】朝日連峰
【山 名】以東岳(1771m)
【天 候】快晴
【メンバ】単独
【コース】泡滝ダム → 大鳥池 → (直登コース)以東岳 → 三角峰
(概 略) → 大鳥池 → 泡滝ダム


泡滝ダム(5:40)---(7:40)大鳥小屋(7:46)---(10:24)以東岳(11:12)---(11:56)オツボ峰---(12:25)三角峰(12:53)---(13:34)大鳥小屋(13:41)---(15:31)泡滝ダム


4時前に目が覚め暫く布団の中で逡巡、荷物を担ぎいつもの泥棒スタイルでソロリソロリと抜け出す。
前日の予報が天晴れだったので、どこの山に行こうかと考えながら夕方愛車の給油を終え家に戻ると、天気予報とは裏腹に何やら不穏な雲行き、近所の温泉施設に雲隠れし帰宅と同時にすぐさま床に入り眠る。
何と夢は快晴の以東岳山頂での乾杯だった。

泡滝の駐車場はけっこうの車、殆どが県外ナンバーだ。そそくさと準備し少し肌寒い中出発、去年の中登隊の山行を思い出しながら、大鳥池までの道をゆっくりと晩酌のおかずをチェックしながら進む。大鳥小屋は管理人が既に入っており朝の掃除の真っ最中、賑やかな声が聞こえ先に進むとゲートのところで釣りに興じる人達が見えた。



鏡のような大鳥池


挨拶し釣果を訪ねるとヒメマスが7匹とのこと、ここにやってくる釣り人は、タキタロウではなくヒメマスがお目当てらしい。彼ら曰く、小屋代と遊漁料、それに移動費を考えたら一匹いくらになるだろうかと自嘲気味・・・
湖面は風もなく静寂そのもの、周囲の山肌を綺麗に湖面に映している。この日は躊躇無く直登コースに向かうと、雪の消え際に好物の山菜が所々見える。でも背負って登るのは無理、素直に諦めるがしばらく後ろ髪を引かれる。
伊勢佐木町ブルースのメロディーが唐突に思い浮かび、唄いながら先を急ぐ。

ここで私の山行中の性癖を一つ。
元々何も入っていないカラカラの脳髄が、さらにカラカラカラと音がするほど行動中は何も考えていない。ほぼ本能の赴くままに行動するわけだが、当然無意識のうちに食欲を満たすべく好物の山菜をキョロキョロと探している。当然綺麗な女性の姿も探しているものと思われるが、黒木瞳様は無理としても、市毛良枝様にはいつの日か・・・ などと具にもつかぬ事を・・・ でも、無意識なので記憶にない。
それと同時に何の脈絡もない唄や音楽が突発的に思い浮かぶ。単独の場合は当然声に出して唄うことが多い。複数の場合はめったに唄いません。

ベートーヴェンの7番の全ての楽章を空でなぞり、どこかのコンサートホールで夢見心地に聞いている雰囲気なら良いのだが、不思議なことに演歌が多いのだ。
ちなみにあまり良く思い出せないのだが、この日のレパートリーは凄まじくバラバラで、自分が何故こんな曲をよく知ってるのかなあと呆れるくらいバラエティーに富んでいた。

島倉千代子の「東京だよおっかさん」は、その中でも所謂十八番(オハコ)である・・・

急登手前の渡渉箇所は水量があり、通常のコース通りでは深くて無理、少し上流を渡りルートに合流、最近雪が消えたばかりのようで、スプリングエフェメラルのオンパレードだ。急登に取り付くとまた面白い。大きな段差で歩が止まり視線を上げるとシラネアオイの優雅な薄紫の奥に、サンカヨウの純白無垢な艶姿、ふと横に視線を送るとコシアブラの幼木が・・・
何とも自然豊かな光景に心が和む。

急登を喘ぎながら進むと、道の真ん中に何と五郎(ゴロ)ちゃんの黒々とした巨大な置き土産、湯気がホカホカと上がっている感じ、ここからジェネレーションギャップはあろうが、宇多田ヒカルの♪ぼくはクマ、クマ、クマ〜♪のワンフレーズを大声でがなる。そして苦しくもないのにわざと咳き込み、大声を上げ痰を吐く真似・・・ 
とまあ、これも自己防衛。
でも、本当に瞬間浮かんだ曲は「有楽町で逢いましょう」だった。

樹林帯を抜け視界が開けるとクマの毛皮のような紺碧の大鳥池が姿を現す。その背後には良い感じで残った残雪が似合う化穴山、彼方に新潟平野が望まれるが、日本海は低い雲に覆われ粟島や佐渡は見えない。
数人のパーティーとスライド、一人が「あっちのコースが素晴らしいよ」と興奮ぎみに語っていた。なるほど今日は素晴らしい日なのだ。
誰もいない以東小屋を覗いてすぐに雪を拾う。山頂までもう一頑張り、ここから望むオールクリアな飯豊の眺望は初めての経験、暫く本当に動けなかった。何故か上空にはうっすらと虹が見えた。


  
素晴らしい飯豊連峰       と     遠くのお山は何だろう?


山頂では麦茶で喉を潤しながら暫く無線遊び、さすが新潟方面からの波が多い。鳥海からの移動ステーションと交信が出来(当然か)超初心者の私にとってはそれでもとても嬉しいのだ。
最近の無線はワイヤーズ等もバンバン入り、ワッチしてるとQTHが、えらい遠くてびっくりする。以前早池峰の山頂付近で四国辺りからのコールに驚いた記憶があるが、今考えてみると納得する。

山頂からの眺望は全方向オールクリアで、今まで通った中でも文句なく一番、本当に素晴らしい。傍らのミネザクラも満開だ。
朝日の縦走路を辿ると大朝日のピラミダルな頂がことのほか大きく見え、小朝日の陰から山開きの祝詞が聞こえてきそうだ。もちろん純白の残雪が似合う飯豊は、海にポッカリと浮かぶようで非常に素晴らしい。平岩と祝瓶の奥には二つのピークを持った双耳峰のような山が浮かんで見える。安達太良か磐梯山だろうか?よく判らない。
以前飯豊の稜線から北アルプスが見えたと誰かのHPで読んだ記憶があるが、この日の早朝だったら本当に見えたかも知れないと思うほどの抜群の展望日和だった。

いくら飽きなくても、そんなにゆっくりもしていられないので、虫に追われながらオツボ峰を目指し重い腰を上げた。
暫くアップダウンの連続、こっちの方から望むエズラ峰が思いのほか良い感じ、所々に咲くハクサンイチゲとキクバオーレンがさわやかだ。オツボ峰で溜息をつきながら明光山へのルートを目で追う。そのまま下っていくと三角峰まではお花畑の連続、実にいろんな花が咲いており目の保養、カメラのアングルを変えながらゆっくり下る。


  
エズラ峰と奥は粟畑と竜ヶ岳     と     紺碧の大鳥池


それにしても頭上から降り注ぐ陽光は恐ろしい程に強く喉がカラカラに渇いた。最後の展望台で大休止、残雪のきれいなところをシェラカップでしゃくり、コンデンスミルクをたっぷりぶっかけ、かき氷もどきの雪にかぶりつく。冷たい感触が食道を胃まで辿る感覚が・・・、突然頭の芯に突き刺さるキンとした快感に息が詰まる。内部からの急速冷却でひと心地着いたのと同時に
♪あなたのリードで島田も揺れる、チークダンスの悩ましさ・・・♪
と、がなったのは言うまでもない。



かき氷?と以東岳


大鳥池に着くと同時に、巨大な青ちゃんの歓迎を受け盛大に悲鳴を上げる。とにかくここは長い生き物が多くて毎回閉口するのだ。天気も良いからか皆さん日向ぼっこしてて小屋まで数匹とスライド、そのたびに「ギャッ」と飛び退く、やれやれである。
小屋では管理人さんと単独の縦走者が談笑中、天候に恵まれ最高の縦走だったと大いに喜んでいた。挨拶し、そそくさと先を急ぐ、ここから来る途中に目を付けておいた今夜のおかずをせっせと収集、登り以上に時間が掛かる。

諦めていたヒラタケの群落が幸運にも手つかずで残っていたのにはビックリ、誰も気付かなかったのかなあ?
三橋三智也の「達者でな」を♪ワ〜ラにまみれてよ・・・ホーイ♪と唄いながら駐車場まで足を引きずりながら下る。(この頃にはかなり辛い感じ)
時間も遅くなったので温泉には寄らずに脇目もふらず自宅に直行するが、

案の定、鬼が鉄棒とトラクターのキィを持って、真っ赤な顔をして待ちかまえていた・・・


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