【中登隊、紺碧の摩耶山に心酔す】


しぼりたて 摩耶山
※背後の山は摩耶山ではありません(汗)

【日 程】2007年2月25日(日)
【山 域】摩耶連峰
【山 名】摩耶山(1020m)
【天 候】天晴れ
【メンバ】4人
【コース】関川登山口 → 山頂 → 関川登山口
(概 略)


関川登山口(7:00)---(10:20)山頂(12:15)---(14:25)関川登山口


およそ一月振りの摩耶山、今回は前回のメンバーの他に中登隊のA.TOM隊長も宮城から遠路はるばる参加いただいた。と言っても前夜は大井沢の雪祭りに来ており、へべれけに飲んだくれて花火を見ていたらしいのだが・・・

6時に湯田川温泉駐車場に集合との連絡、時間ぎりぎりに到着したら私が一番最後の様子、恐縮するもすぐに出発、家を出たときは満天の星空で北斗七星が綺麗に見えた。放射冷却現象で道端の寒暖計は-12℃の表示、路面はテラテラのアイスバーン、予算不足でタイヤ代をケチっている私は超ノロノロ運転に徹する。

7時ちょうどに登山口を出発、A.TOM隊長以外は皆ワカンの装備、隊長は巨大なスノーシューを引きずるも雪は硬くそんなには沈まない。前回の懺悔の意味も込めて本日は初っ端は私が先頭を引っ張る、でもすぐに力尽きIさんに交代、後でワイワイお喋りしながらのいつものスタイルに徹する。
前回より新雪が少なくラッセルの必要がない分速い。

避難小屋まで順調に進み、レスト後いざ急登に向かう。雪は硬く締まっており登りやすい。グループ山行での目立つコツをある人より伝授されていたので、ここから私が喜び勇んでトップに立つ。なるほど気持ちが良いものだ。
雪面は完全な氷結までは至って無く、キックステップが効き快適に登れた。尾根筋の雪庇付近では、ストックでズボズボやり雪庇をわざと崩して子供のように遊ぶ。なかなか楽しいものである。中年もたまには童心に返るべきだ。

痩せ尾根の登行時には結構冷たい風が強く手足が凍えた。何と言っても-12℃なのだ。しかし空は抜けるような紺碧で気持ちは昂ぶる。ザンゲ坂の急登は少し雪面が硬く難儀する。ここは初心者には辛いのでSさんにトップを交代してもらう。アイゼンが必要かと思ったがあと少しの言葉に励まされ何とか通過、頂上直下に到着すると何故か冷たい風は突然止んだ。

この日は前回得られなかった展望が360°オールクリア、朝日連峰の雄大な山並みに暫く皆で唖然とする。Sさんより本日は今までで最高の眺望とのお墨付きを頂く。
男前の以東岳が断然輝いており、障子ヶ岳の鋭鋒が天を突くようだ。そのまま視線を北に展開すると、光輝く赤見堂、石見堂の稜線が純白に輝く巨大な雪塊と化した月山まで続く。
初めてこの雄大な光景を目の当たりにしたA.TOM隊長は、目にうっすら涙を浮かべ感動している。が、この後彼は信じられない光景を目の当たりにするのだった・・・

  
吸い込まれるような青空          と       鑓ヶ峰と遠方は以東岳


冬の摩耶山を侮ってはいけない。そこは天国と地獄の境でもある。綱渡りのような稜線の登行は一歩間違えるとほぼ垂直に奈落の底へと滑落する。Sさんが先頭を行く私やIさんを巧みに誘導する。何とか前回の休憩地点に到着しほっとするも、ここからの景観は、いくら二回目とは言え驚嘆である。

前回より幾分成長した雪庇が、紺碧の空に吸い込まれるように鋭角に天を突く。あまりにも非現実的な絶景に隊長は驚嘆し瞬間歓声を上げるもすぐに黙り込む。人間は感動を極めると声を失う。
Sさんもこの日の絶景は今まで登った中でも最高と言っておられた。暫しの間、全員がエベレストの山頂にでもいるような気分になって、ため息をつきながら絶景を堪能する。いくら見ていても全然飽きない。


左、月山から以東岳までのパノラマ
画像は小さいが雰囲気は感じていただけるのでは?



Sさんがおもむろに、前回行けなかった山頂まで行こうと言い出すと、現実に帰った我々はアイゼンを装着する。
しかし、この芸術的な稜線に踏み跡を付けるのがためらわれ、隊長は「オラは、ここでいい」なんて言い出す。

山頂までは急斜面のトラバース、慣れないピッケルを片手にSさんを先頭に恐る恐る進む。すんごい高度感である。これに比べたら穂高の大キレットなんて屁みたいなものだ。最後尾で恐怖のあまり隊長は、もういいとしゃがみ込む。
それでも何とか三角点のある山頂まで到達、三角点は遙か雪の下にある。記念の写真を撮り回れ右、再度恐怖を味わうも何とかレストポイントに、
       でも・・・
             あれ・・・
                   隊長は?・・・

 
山頂を目前にして       と      山頂から湯ノ沢岳へ続く稜線


気を取り直して雪のテーブルを作り絶景をご馳走に盛大にランチタイム。風もなくとても穏やかな天候に手袋もいらない。未だ2月の厳冬期であることが信じられない。皆で改めて山座同定、遠く飯豊連峰もうっすら確認出来た。
鳥海は少し雲に隠れている。
正面の尾根では某山岳会の面々も山スキーで楽しんでいるはずだ。歓声が風に乗って聞こえてきそうだ。Sさんの、今日来れなかったら一生後悔しただろうとの言葉に、うなずきトリオ(古いなあ)の三人であった。

 
山頂付近をちょっと無理して下から撮影 

Sさん撮影提供の奇跡的な山頂



ゆっくりと贅沢な昼休みを堪能後下山、坪足でもそれほど沈まないのでアイゼンを着けたままガンガン下る。天気は良かったものの、それほど気温は上がらなかったのか、雪もそれほど腐れておらず、かなり下まで坪足で行けた。でも最後の登り返しはズボズボで相当疲れる。途中アイゼンをもう一度ワカンに履き替え林道をショートカットしながらぐんぐん下ると車道が見えた。

下山後Sさんから皆に冒頭の写真のお酒がプレゼントされた。これには皆恐縮したが、Sさんのありがたい心遣いに感謝し遠慮無く頂くと同時に、ひときわ熱いこの山への想いの一端も垣間見させて頂いた。
帰宅後早速頂いたがとても美味しくて、ついつい飲み過ぎて早々に潰れてしまった。信じてもらえないかも知れないが、私は本当のところは下戸なのである。

Sさん、皆さん何から何まで本当にありがとうございました。またきっと何処かでご一緒しましょう。