【冬季摩耶山初登】


青空に映える摩耶山

【日 程】2007年1月28日(日)
【山 域】摩耶連峰
【山 名】摩耶山(1020m)
【天 候】晴れ時に雪
【メンバ】3人
【コース】関川登山口 → 山頂 → 関川登山口
(概 略)


関川登山口(7:03)---(10:20)避難小屋分岐---(11:50)山頂(12:35)---(14:45)関川登山口


昨夏、中登隊の以東岳山行の折り、今は中登隊の名誉顧問をお願いしている鶴岡のSさんから、冬季の摩耶山を誘われた。渡りに舟とはこの事で即答で同行をお願いした。その後、昨年の暮れに同氏のご厚意から頂いたオリジナルカレンダーの1月と2月には、迫力ある山頂の写真があった。これを見たからには絶対行かねばならぬと言う強力なモチベーションが高まったことは言うまでもない。
暖冬雪不足で少し不安はあったが、予期せぬ好天に恵まれ何とか憧れの景色をこの目で見ることが出来た。

今回は、某MLでお馴染みの酒田のIさんもご同行いただき、私とは初対面であったが、そこはお互い山好き同士、とても楽しい山行を共有に出来た事を感謝申し上げる。
とは言いながら、両氏とも私など及びもつかぬ山のベテラン、最初から最後まで私はトレース泥棒に徹したことをここに告白する。つまりは登ったと言うより、両氏に引っ張り上げて貰ったと言った方が正しいのだ。

前夜山形市内で所用があり帰宅が深夜になった。6時15分に湯田川温泉入口の駐車場集合のメールが届いており決行を知る。
元来の小心者故、いつもの如くウキウキしてろくに眠れない。
目覚ましに飛び起きると、泥棒のように物音を気にしながらソロリソロリと自宅を抜け出す。夜も明けきらぬ中、集合場所が解らず、これも泥棒のように付近をうろうろする事暫し、幸運にもSさんに見つかり御用となった。
集合場所の駐車場には、既にIさんも来ておりすぐに関川の登山口を目指す。

自宅付近は雨だったが鶴岡近郊は降ってなかった。しかし345号のトンネルを抜けると雪模様、温海の一本木スキー場周辺では相当強い降雪に少し不安になる。
越沢集落を過ぎトンネルを抜けてすぐに登山口、いつもの年なら道路の両側は高い雪壁でスコップでステップを刻まないと入れぬ登山口だそうだが、今年の雪不足に感謝する。
装備はピッケル、アイゼンは当然として、足下は何故か両氏ともスノーシュー、ワカンは私だけ・・・

正直に不安を告白すると、Sさんの一番最後を着いてくれば楽だからとの笑顔の返答に厚顔にも徹することにした。私はワカンでの本格的な山行は今回が初めてである。
前夜の降雪による新雪がありスノーシューで踏んだ後でも結構沈む。遅れまいと頑張るがバテても皆に迷惑が掛かるので厚顔マイペースを決め込む。時々待って頂く両氏の心遣いがありがたい。
暫く林道登りが続き夏道の登り口から急登が始まる。この頃から陽差しの気配が感じられ最初のビューポイントで晴れ渡った雪景色に皆で歓声を上げる。


朝日を浴びて輝く冬景色

この辺からブナ林の始まり、前夜の降雪が霧氷となり美しく青空に映え辛い登りの気が紛れる。夏道は606ピークを巻くようだが、我々はピークを目指しそして急坂の尾根を下る。雪が少なくブッシュが行く手を邪魔するも、下りきると痩せ尾根のアップダウンが暫く続く。さすがに先頭を突き進むSさんの足取りは軽快だ。
この山を冬に登り始めて五年が経過するというも、厳冬期に登頂できるチャンスはシーズン二回もあれば良い方との言葉に重みがある。と言うことは、私は実に幸運の持ち主と言うことになるのだろうか。でも・・・

  
痩せ尾根をラッセルする両氏    と    白く輝く山肌が眩しい

高度も上がると雪質もパウダー、スノーシューとワカンでは沈下量に明らかな差がある。私の中年太りも多少は影響しているのだろうが急坂では大いに難儀する。
途中避難小屋のある分岐の辺りの地形が一番解りづらかった。今年は小屋の存在が容易に判別できるが、例年は完全に雪に埋まっているとのこと。

このルートは夏道も登ったことがないので地形がいまいち理解できてないが、ルートのほとんどは尾根歩き、ここからいよいよ急登の始まりである。少ない雪ながらも所々に雪庇が出来かけている。パワフルなSさんのアタックが続くも、後続は写真を撮ったりして完全にラッセルは任せきり、申し訳ないと言う気持ちはあるのだが、如何せん体が付いていかない、自然と頭が下がる。


  
雪に埋もれた避難小屋    と   羽毛のような新雪


  
青空に映える霧氷   と   摩耶連峰の山並み


途中雲行きが怪しくなり雪が舞い天候の悪化を懸念するも、それも一時の辛抱でまた青空が広がり展望も回復、やっと目指す山頂が光り輝いて現れた。
これもひとえに両氏の日頃の善行と思い心の中で感謝する。


  
パワフルに先頭を行くS氏   と   雪の華を咲かせたブナ


最後の急登をSさんはザンゲ坂と呼んでおられたが、私は本当に懺悔しながら登ったことは言うまでもない。この中で一番の若輩者の私が一度も先頭に立つことなく山頂付近に達したことは、どう考えても赤面の至りであるが、そんな懺悔の思いをも忘れさせてくれる素晴らしく感動的な光景が我々を静かに待っていてくれた。



山頂直下のブナの廊下



鑓ヶ峰から続く神々しい山並み



驚嘆の摩耶山山頂


豪雪だった昨年に比すれば少し物足りないとSさんは仰っておられたが、初めて目の当たりにする私にとっては超感動ものの雪庇がそこにはあった。
五時間弱の苦労を忘れ暫く身動きがとれないほどの感動を味わう。
目を転じると槍鉾の急峻な峰も素晴らしい。残念ながら朝日方面は見えなかったが暫く夢中でシャッターを切る。



急斜面に挑むS氏


荷物を置き皆で三角点のある山頂まで急斜面をトラバースしようと向かう。何の気なしに下を見るとすごい高度感に瞬時に股間がキュンと縮上がる。こうなるともうダメ、素晴らしい景色に高所恐怖症の身であることを忘れていた。
両氏は行きたそうであったが、すたこらさっさと迷わず回れ右、私は根性無しで結構である。

雪庇下の風の当たらぬ場所で、ささやかに乾杯後昼食休憩、S氏の予定では、ゆっくりお湯を沸かしてティータイムを楽しむ予定だったが、私の重い体を引き上げるのに思いの外時間が掛かったようで後ろ髪を引かれながら下山開始、絶対もう一度ここに来たいと言う熱い思いを雪庇に強く念じた。

こういった形の冬山登山は初めての経験であったが、単独で行うには相当の力量が必要と改めて思い知らされたのと共に、ご同行させて頂いた両氏に改めて深く感謝申し上げたい。



今度はいつこの光景に・・・