【龍門トラップ】


色付く朝日連峰

【日 程】2006年10月14日〜15日(土日)
【山 域】朝日連峰
【山 名】龍門山(1688m)
【天 候】晴
【メンバ】単独
【コース】10/14 日暮沢→龍門小屋(泊)
(概 略) 10/15 龍門小屋→日暮れ沢


10/14(土)
日暮沢小屋(7:53)---(10:03)清太岩山---(10:39)ユウフン山---(11:28)龍門小屋

10/15(日)
龍門小屋(12:43)---(13:52)清太岩山---(15:50)日暮沢小屋


一月以上山に行かないと発狂寸前の精神状態になる。これも私がこの世に生まれてきた定めと思うが、あちこちから届く紅葉のレポートはいらぬ妄想をふくらませ、かつ、山への想いを強くする。
槍が降ろうが、熊に囓られようが、何が何でも何処かの山に行こうと決めていたのだが、結局通い慣れた竜門遊びとなってしまった。

登山口にて準備をしていると一台の軽トラが到着、はて、どこぞで見た顔が現れた。よく見ると、いつもお世話になっている西川山岳会の会長さんであった。私は初対面であったが、そこは有名人、顔はよく存じ上げていたので挨拶し先行させて貰う。ちなみに今回は単独行とのことである。
日暮沢口にはかなりの車があり天気も良いので、山中はさぞかし混みあうものと思っていたのだが、登りで2人をパス、4人とスライドしただけの拍子抜けするほど静かな山歩きであった。

   
陽光輝く登山道   と  樹間から覗く大朝日岳

紅葉のピークは1100m付近か、久々の山行に息も絶え絶えの身には生き返る光景が続く、とにかく稜線の景色が楽しみで先を急ぐも足は全然着いてこない。やっぱり一ヶ月以上のブランクは辛かった。
それでも何とか頑張りゴロビツを過ぎ清太岩山まで辿り着くと連峰の素晴らしくクリアな眺望が待っていてくれた。もうこの辺から写真を撮りまくり・・・
やっぱり朝日は何度来ても違う顔で迎えてくれる。中でも寒江山の景色が本当に素晴らしく、何度も立ち止まり写真に収める。こんな素敵な眺望は本当に何年振りだろうと考えるも全然わからない。

   
青空とブナの紅葉  と  竜ヶ岳方面



   
ユウフンと清太岩山  と  魅惑的なブナ林



   
懐かしい障子ヶ岳  と  以東岳



   
寒江山三山  と  二ツ石コース方面


ゆっくり稜線散歩を楽しみ一登りで龍門山分岐、ここから眺める相模山もまた素晴らしい、山腹のヒダがとても立体的に見え感激する。遠くに飯豊の石転び雪渓も確認出来た。
こんな天気の日はめったに経験できないので、そのまま狐穴小屋まで足を伸ばそうとも思ったが、龍門管理人のE藤さんが小屋の前で登山者と歓談していた。

   
見事な紅葉



   
ユウフン池と寒江山方面

ユウフン山

今日は天気も良いので混むだろうと思い聞いてみたら全然少ない様子、小屋の中で昼食休憩しようと中に入り荷物を下ろしたら、すかさず冷たい朝日ビールの歓迎を受ける。
これを龍門トラップと言うのか・・・
狐穴への散歩は結局諦めてまったりすることに必然的になってしまった訳である。(筆者の意志が弱いという意見もある)

外には見慣れぬベンチとテーブルが・・・
E藤氏自作の品らしい、なかなか使い勝手が良く、デザインも凝っている。褒めたら風の当たらぬ小屋陰に自作のベンチとテーブルを移動し、そのまま宴会モードに突入、オイオイまだ昼前だぞと言う声が聞こえなくも無かったが、久々に氏の顔を見たら、なんか嬉しくてガバガバご馳走になる。
暫く二人で雑談しながら飲んでいると会長も到着、冷たい朝日ビールに喉を鳴らしていらした。

会長もそのまま荷も解かぬうちに宴会に突入、三人並んでベンチに座りいろいろな話に盛り上がる。会長は今年72歳、とても健脚で驚く、考えてみたら、うちの馬鹿親父とそんなに変わらないのだ。方や優雅に隠居を決め込んでどこにも出かけず愚痴ばかり言っているが、会長の爪の垢でも貰っていこうかと真剣に考えた。

途中、イヌワシが上空を悠然と飛翔するカッコイイ光景に皆で見入る。鳥海にもイヌワシは生息するが、やっぱり朝日の自然は懐が深くすごいなあと実感する。

午後も遅くなると次々にお客さんが到着、仙台からの単独女性二人は共に素晴らしい健脚で恐れ入った。一人は早朝に龍門着で以東往復、もう一人は日暮から大朝日を回り明日以東往復の予定とのこと、彼女たちが到着後、次々と宴会に引きずり込む・・・

この日は龍門小屋管理の最終日とのこと、明日には水洗トイレの水も全部抜き後は冬を待つだけ、E藤さん長いお勤めご苦労様と言うことで、二階でくつろいでいたお客さんも全部一階に引きずり込み大宴会となった。
消灯時間を過ぎても飲み足りない面々はまたもや管理人室にお邪魔虫・・・
最後は記憶が完全に飛んでしまい、何がどうなったのか・・・
ええい、勝手にせいzzz


翌朝、物音に気付いて目を開く、早い人は完全に出発し、惰眠をむさぼっていたのは我々のみ、管理人室にお邪魔しコーヒーを飲んだら少し意識が戻った。

諸氏の話では、寝たのは11時を完全に過ぎていたらしい。と言うことは一番早くから飲んでいた私やE藤さんなんかは12時間も呑みっ放しと言うことだ。
肝臓の処理能力がE藤さんの半分以下の私にとっては辛い筈だ・・・
会長もずいぶん遅くまで頑張っていたようなおぼろげな記憶がある。いやはや酒豪揃いの山岳会の面々を束ねるだけあって大したものである。恐れ入った。

外は昨日の天気が嘘のようにガスで視界もなく冷たい風が吹いている。顔を洗い外の風に少し当たったら幾分楽になった。
何に熱弁を振るったのかよく覚えてないが山の酒飲みはカラオケなどなくてもとても楽しく盛り上がるものなのだ。じゃなきゃ、12時間もやってられない。

小屋締めの手伝いをするなんて大見得を切ったものの、粗大ゴミと化しているわれわれを後目に、E藤さんと会長はテキパキと仕事を進めている。申し訳ないが見ているしかない自分に更に自己嫌悪・・・

10時に狐の小屋に向かう2人を見送り、後は小屋の中でまったりする。

小屋で昼飯を食べ、無線から狐に2人無事到着の報を聞いてから重い腰を上げる。これで今年の龍門通いもお終いと思うと、とてもとても辛い気持ちになる。
外に出て上空を見上げると、昨日と同じイヌワシが旋回している。何故か我々にサヨナラの挨拶をしているようだ。
考えてみるとここでイヌワシの姿を見たのは初めてのような気もする。多分、またおいでと天然記念物は言っているのだろう。
朝日に完全に填った天然記念物は焦点の定まらぬ目でその姿を追うもついには見失い深い溜息と共に下山をチンタラと開始するのだった。

今年一年朝日にお世話になったとても深い感謝の念が溢れていたのは言うまでもない。
いろんな人との出会いと、豊饒な自然に癒されるこの山に、いつまで通えるかわからないが、来年も宜しくなのだ・・・