【中年登山隊 朝日以東岳に集う】
                                Guest by Sato@turuoka & Entasis@sendai


以東小屋から朝の雲海に浮かぶ山々

【日 程】2006年7月29〜30日(土日)
【山 域】朝日連峰
【山 名】以東岳(1771m)
【天 候】小雨のち晴
【メンバ】5人
【コース】7/29 泡滝ダム→大鳥池→オツボ峰→以東岳→以東小屋泊
(概 略) 7/30 往路を戻る


7/29 泡滝ダム(8:10)---(10:52)大鳥小屋(11:20)---(13:24)三角峰---(14:10)オツボ峰---(15:21)以東岳

7/30 以東岳(7:50)---(8:31)オツボ峰(8:43)---(10:16)大鳥小屋---(12:55)泡滝ダム


今回の中年登山隊は、朝日連峰の以東岳を泡滝ダムから往復した。メンバーはA.TOM隊長とhigurashi隊員のいつものメンバーに、仙台からエンタシスさんと地元鶴岡からSさんをお迎えし、合計5人のパーティーと相成った。

前日の庄内地方はバケツをひっくり返したような大雨、川の水も増水し国道47号は冠水土砂崩れの為通行止、あまりの天候に中止の意見も相次いだが、今期降水確率0%のワタクシメと、晴れ男の隊長が揃えば雨なんか降るわけがないと何の根拠もない強気の意見を通し決行、大鳥集落のタキタロウ公園に朝7時に全員集合した。が、雨足はけっこう強く二人とも少し顔が引きつっていた。

こんな雨の天気に何故か一部の隊員が合羽を忘れたとのこと、でも晴天を確信している我々は決意を新たに雨の中出発するのだった。当然、降水確率0%を誇るワタクシメは合羽なんて着る気なんてサラサラ無く、その内止むさと、うそぶきながら最後尾を雨に濡れながらチンタラ登るのであった。

   
雨の中黙々と登る中登隊

変な格好で残った残雪

大鳥川は雨で増水し水音で会話が聞き取れない。いつもは馬鹿な掛け合いをしながらのやかましい連中なのだが、最初の内はただただ黙々と登る。
途中何度か休憩を取りながら大鳥池の七曲がりの急登を登り始めたらショウキランが見えた。初めて目にするそのピンクの花に感動する。

信じられないことだが、大鳥小屋は休憩も有料(200円)なので、外で食事をしながら歓談、だんだんガスが上がっていく。
大鳥池にはタキタロウ伝説があり一時期世間を賑わせた。最近世間に忘れ去られたのか話題に上ることも希だ。隊員の誰かがそのことを言うと、誰かスクープ写真を撮ればいいと勝手な話題、じゃあ、おまえの合羽が赤いから池で泳いで写真に撮れば、「赤いタキタロウ目撃」などと新聞に載るんではないかなんて、スゴ〜クいいかげんな事を皆真顔で真剣に討議している。果ては地域興の切り札だなんて断言するものまでいる。
中年登山隊は、真剣に地域振興を憂慮している集団のようだ。

馬鹿な話題に霞となった誰かの怨念を感じ追い立てられるように出発、のっけから急登だ。ここは隊員-1をおだてて先頭に立って貰う。
最近とみに巨大になりつつあるお尻を見ながら登るのであった。当然お腹はもっと巨大なのだが、あんまり突っ込むとお叱りを受けそうなのでここまでとする。ワタクシメも最近は体重が増える一方で、人のことをあーだこーだ言えた義理ではないのだが、要は中年太りに真剣に悩んでいるのだ。


   
雨の中見つけたショウキラン

ガスの中から現れたエズラ峰


三角峰のあたりからボツボツと夏の花が見え始める。大鳥小屋から万一に備え合羽の下だけ着用したワタクシメに雨はひるんだのか一向に降らず、だんだん景色も見え始める。オツボ峰付近では時折景色も堪能できた。
オオバギボウシの群落が素晴らしく、タカネマツムシソウも咲き始めている。雪の消え際には、もうとっくに終わっていると思われたヒメサユリも少し見えた。
この頃から、小百合ちゃんにぞっこんの隊員達はカメラを取り出し、しきりに撮影しまくる。よってペースは一向に上がらず、一部の隊員は呆れかえる始末・・・
中年登山隊は、好みの花に出会うと他人のことなど考えない自己中の集団なのである。


   
隊員達はそれぞれの朝日を堪能?する

   
オオバギボウシの白花

咲き始めたばかりのマツムシソウ

オツボ峰付近で後続を待つ間、明光山方面を眺める。いつの日か天狗方面から歩いてみたいと思っているのだがいつになるやら・・・ 
エズラ峰も時折ガスの切れ間に姿を現すが、天狗方面から望む迫力はない。
ここから以東岳までは、エアリアには40分と書かれているが余程の健脚者でないと難しいと皆の意見、特に視界の効かぬ時は偽ピークに何度も騙される。後続の隊員は息も絶え絶えに到着した。

とりあえず以東岳山頂を極め喜びひとしおの筈だが、何故か皆万歳三唱もなくイソイソと以東小屋に下る。管理人さんが表に出ており、大鳥小屋からの5人ですねと確認、どうやら下から無線で連絡があったらしい。小屋を覗くと階下は縦走パーティーで賑やか、二階にとの指示、荷物を入口に置くとワタクシメは、おもむろにサブザックを取り出し、水の確保に碧玉水に向かう。小屋から100mは下るだろうか、けっこうな距離だ。隊長はこれもおもむろにビニール袋を取り出すと、途中の雪渓で雪を拾うとのこと、私と数名がもう少し下り美味しい水を10L位汲む。水はガンガン出ており冷たく大変美味しい。朝日の銘水の一つである。

登り返しが辛かったが、小屋に戻り二階に荷物を置いて着替えると、周りにはもう誰もいない。心配になって外に出てみると、
ガーン!
なんと言うことだ。ワタクシメを除いた全員が外のベンチで既に乾杯をしていた。
少しショックだったが、何食わぬ顔でその和に加わり改めて乾杯
ウ〜〜ン! この快感のためにここまで来たのだ。
キンキンに冷えた朝日ビールは五臓六腑にしみ渡り、涙が・・・
後は場所を小屋の二階に移し恒例の怒濤の宴会に突入する。


   
宴会の始まり
それぞれ持ち寄った個性的?な品々


隊員が持ち寄った食材や酒が所狭しと並ぶ光景は他のパーティーが羨むほど、中でも庄内豚の豚トロには皆舌鼓を打ち感涙の表情、有り余る酒類がバンバン空いていく。皆適度な酔いに舌回りも軽やかで楽しい会話が続く。
出発時の悪天に中止論も出たが、山は来てみないとわからないと言う隊長の意見に皆納得、互いに固い握手で健闘をたたえ合う。

誰かの霞となった怨念が豚トロと朝日ビールを少し持ち去ったようだが、そんなことに誰も気付かないまま盛大に宴会は続いた。
陽もとっぷり暮れ、他のパーティーは就寝の様子、だが我々は外のベンチに場所を移し更に宴会は続くのであった。

外は風が冷たいながらも天気は良く、日本海に煌めく漁り火、振り返ると以東岳の黒いどっしりしたシルエット、天上を仰ぎ見れば燦然と輝く星々、天の川が我々の来訪を心から歓迎しているようだ。
碧玉水の水割りで再度乾杯し改めて今日の登頂を祝う。
山好きは星も好きらしく、首が疲れるまで天上を見上げ星座の話題が尽きない。北斗七星、大熊座、白鳥座、サソリ座にカシオペア、夏の大三角形 etc.etc
その後、就寝時間不明・・・


   
以東岳山頂から以東小屋と大鳥池

翌朝、それはそれは素晴らしい眺めの快晴の夜明けだったらしい。と言うのもワタクシメと隊長の二人は、以東岳からの御来光も朝日に輝く稜線も見に行かず、ゆっくり惰眠を貪っていた。めったに見れない快晴の山頂には、管理人さんと我が隊の3人しかいなかったそうだ。3人は何故みんな来ないのか不思議でしょうがなかったらしい。

小屋の中で他のパーティーが朝食や出発の準備に追われてあたふたしている頃、我ら二人は高鼾、戻った隊員に何故来ないのかと責められるも、朝に山小屋で美味しいコーヒーを飲みながらゆっくり過ごすのも最高の贅沢だよと、訳の分からない言い訳をするのだった。実際、隊長持参のドリップコーヒーは香りも味も最高に美味しい、普段家ではコーヒーを飲む習慣のないワタクシメも、隊長と一緒の山の朝はたっぷり御馳走になることにしている。コーヒー入れは隊長に任せてあるのだ。

それからゆっくり食事をし、管理人さんにお礼を言い一番最後に小屋を出発、快晴の以東岳山頂で早速朝日ビールで乾杯、何と言っても本日の最高地点なのだ(呑んでばかりと呆れる隊員と他の登山者の視線・・・)
記念撮影後ゆっくりと昨日来た道を下る。昨日はイマイチの視界だったが今日は天気も良く、花々も明るい陽差しに喜んでいる。
昨日見れなかった景色に改めて感動し、ある者は花を愛で、ある者はこだわりの景色を求め、ある者は癒される場所を求め、ある者は・・・

中年登山隊は、朝日への感謝と再訪の誓いを胸に秘め、ゆっくりと下山する。
隊員それぞれがこの山行を通じて感じ考えた事はそれぞれ違うだろうが、ワタクシメには、何度来ても朝日はいろんな事を感じ考えさせてくれる場所であり、良き人との出会いの場所でもある。
今回初めて御一緒したメンバーもいるが、皆素晴らしい人達であったと思う。彼等との出会いと心遣いに改めて感謝申し上げたい。
またいつの日か機会があればご一緒に山行したいものである。