【百花繚乱の朝日連峰】
                        日暮沢から以東岳往復


以東岳付近からの大朝日方面とミネザクラ

【日 程】2006年6月10日(土)〜11日(日)
【山 域】朝日連峰
【山 名】寒江山(1694m) 以東岳(1771m)
【天 候】曇
【メンバ】単独
【コース】6/10 日暮沢→龍門小屋→狐穴小屋(泊)
(概 略) 6/11 狐穴小屋→以東岳往復→龍門小屋→日暮沢


6/10 日暮沢(7:55)---(10:11)清太岩山---(10:40)ユウフン山---(11:24)龍門小屋(11:57)---(12:50)寒江山---(13:40)狐穴小屋

6/11 狐穴小屋(5:44)---(7:04)以東岳(7:20)---(8:46)狐穴小屋(9:15)---(10:12)寒江山---(11:07)龍門小屋(11:27)---(12:28)清太岩山---(13:56)日暮沢


6月の朝日に出かけるのは今の週末を除いては無理みたいなので、天気予報とにらめっこしながら雨の中出かけた。日暮の小屋の辺りで雨は何とか止み出発、昨年のブナ実の豊作のせいかビッシリの実生がすごい。
1500m付近から上界は雲の中、ゴロビツの水場手前から残雪が現れ、雪で押しつぶされた細い木々が行く手を邪魔する。
ゴロビツの雪庇はいまだ融雪が進んでおらず前回(5/20)来たときとそんなに変わっていない。4人パーティーが下でアイゼンを装着している間に先行、キックステップで楽に登れた。そのまま雪渓上を進むが何と途中で雪が切れており、少し藪こぎしそのまま清太岩山へ、ここまで8人をパス。

     
芽吹いたばかりのブナ実生

雲沸き立つブナ林



稜線に出たら冷たい風が強く、視界は利かずユウフンの頭は見えない。清太岩山の標柱が無くなっており、付近を探すも見つけることが出来なかった。寒いのでろくに休憩も取らずそそくさと出発、ユウフンを超えて暫く進むと二人が休憩していた。石巻からと言うご夫妻で、龍門山下の雪渓で視界が利かず断念して戻ってきたとのこと。アイゼンは持ってるかと聞かれたが無いと答え先行する。雪渓に取り付いたら若い単独行が下に見えた。そのまま直登し龍門小屋へまっしぐら、綺麗に掃除された小屋には誰もいない。ここで昼食休憩していたらすぐに若い単独行の兄ちゃんが入ってきた。

聞けば今日中に以東まで行きたいとのこと、風が強いのでとりあえず狐穴小屋まで行って考えると言い残しすぐに出て行った。その後先程のご夫妻が到着、やっぱり来ましたと苦笑いしていた。彼らは大朝日の小屋を目指す様子、休憩後カッパを上だけ着込み強風の中小屋を出ると単独の男性がちょうど到着、挨拶すると以前会ったことがあると言われた。2年ほど前に大朝日を偶然一緒に周回した新潟のY氏であった。おぼろげな記憶ながら思い出す。とりあえず狐穴まで行ってますと先に出発、稜線上は猛烈な風が吹き視界もほとんど利かなかった。

寒江山付近のお花畑はウスユキソウの小さく可憐な花が咲き始めていた。時折足を止めカメラを向けるが風が強く無理、そのまま狐の小屋へ急ぐ。小屋の手前には急な雪壁がいまだ残っており暫く下降点を探す。まずは拾った雪でキンキンに冷やした朝日ビールをプシュッとやる。喉越しさわやかである。
誰もいない小屋の二階に陣取り、荷物を広げてから美味い水を汲み、チビチビと一人手酌でやっていると先程のY氏が到着した。この夜は二人で小屋を独占、話題の豊富な方で一晩中いろんな楽しいお話を伺った。
夕方から晴れ渡り以東岳の迫力ある姿に暫し絶句、小屋二階からの以東の雄姿は素晴らしい。北寒江山の頂からまん丸の月が姿を現す頃には、二人とも相当出来上がっていた。


     
雲間から顔を出した稜線

狐穴小屋からの迫力ある以東岳



明けて11日(日)はとても穏やかな朝だった。高曇りで明るい日差しは無かったが眺望には程よい。月山がやけに近く見え以東の頂がおいでおいでをしている。ゆっくり朝食を取り、Y氏は大朝日経由で日暮に下山するとのこと、いつの日かまたの再会をと見送った。
私はサブザックに簡単な装備を持ち以東岳を目指す。このコースを歩くのは何年振りだろうか。10年以上は経っているはずだ。出発してすぐに昨日の若いお兄ちゃんと遭遇、夕べは以東小屋で一人だったとのこと、これから大朝日経由で日暮へ下山するらしい。その若いパワーが羨ましい。

ここから以東までの稜線は正真正銘の百花繚乱、生命感に躍動する花々の姿に接することが出来るのは、この場に身を置く者のみが味わえる至福の一時だ。だんだん大きく迫る以東の頂を目指し花を愛でながら進む幸福感は、喩えようもなく優雅で、素晴らしいく、朝日の一番好きないい顔だ。贅沢なことにこの幸福を一人で独占できたのは日頃の行いがよろしい証拠と一人勝手に思いこむ。

最後の急登を登るに従い新潟方面の残雪に覆われた山並みが見え始め、化穴山の秀逸な姿が一際目を引く。以東の小屋がグングン近づくともうすぐ山頂だ。
山頂の三角点に荷物を下ろし大鳥池を俯瞰する。湖面の雪はほとんど消え、熊の毛皮のような輪郭が現れていた。碧玉水のある水場付近はいまだ厚い残雪に覆われている。少し風が出てきてじっとしていると寒いので、そそくさと出発の準備をする。高曇りの空は霞んで遠望が利かず、その素晴らしい展望は次回のお預けとし下山を開始する。


     
以東小屋と化穴山

やっと雪が溶けた大鳥池



登りと下りの視線は自ずと違い、稜線の可憐な花々の姿は、喩えは悪いが足枷のようにまとわりつき、遅々として足が先に進まない。昨日の寒江山付近よりもこちらの方が花は盛期に近く見事だ。特にウスユキソウは今が一番の見頃だろう。次から次と絶好の被写体が現れ時間を浪費する。この日は下界で夕方からの飲み会が待っていて、早く行かねばと気ばかり焦るが足と目は全然言うことを聞いてくれない。山開き前ではあるが本当に素晴らしい稜線の散歩ができた。

狐の小屋の清らかな流れで冷やしておいた朝日ビールをプシュッとやり、喉を潤し帰り支度をしていると、単独行の男性が小屋の入り口に荷物を放り出し何処ぞへ飛び出していった。天気は下り坂か、ガスが上がってきて以東の姿は見えなくなっていた。

龍門小屋までは先程に比べるとかなり重い荷物(当たり前だ)に喘ぎながら歩いた。有名な百畝畑付近の花はやっぱりまだ早い感じ、龍門小屋で小休止後、雲に追われるように駆け下る。主脈稜線は厚い雲に隠れてもう見えない。来週からいよいよ夏山本番、各山小屋もきっと賑やかな日々が続くのだろう。


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        2006年6月の花々