【鳥海山歩】
        湯の台口から鳥海湖と千畳ヶ原周遊


文珠岳下からの色付いたナナカマドの実と笙ヶ岳

【日 程】2005年9月19日(月)
【山 域】鳥海山
【山 名】文珠岳(2005m)
【天 候】晴
【メンバ】単独
【コース】湯の台口 → 河原宿 → 文珠岳 → 御浜小屋 → 千畳ヶ原
(概 略) → 月山森 →河原宿 → 湯の台口


湯の台口(9:05)---(9:52)河原宿小屋---(10:52)仙ヶ洞分岐---(11:09)文珠岳分岐---(11:40)七五三掛分岐---(12:19)御浜小屋---(12:34)鳥海湖(13:45)---(14:14)T字分岐---(14:36)幸治郎沢取付---(15:10)月山森---(15:36)河原宿小屋---(16:17)湯の台口


秋晴れの一日久し振りに鳥海に遊んだ。5時に目覚めるがザーッとした雨音に秋の涼しさも手伝い寝直す。結局9時過ぎに登山口駐車場から歩き始める。朝の雨に驚いたのか湯の台口の駐車場は意外にも閑散としていた。滝の小屋ではトイレの工事が真っ盛り、澄郷沢は結構水量がある。ゆっくり登り河原宿へ、夏には賑わうここも今は誰もいなくて静かだ。昨夜の雨のためか小屋前の沢は夏のような水量だ。仰ぎ見る外輪は少し色付き始めたような気がする。雪渓も一部残っておりスキーの練習の跡がはっきりわかる。

  
八丁坂からの月山森  と  河原宿からの外輪

今年付けたと思われる黄色いペンキマークに沿ってどんどん高度を上げ、石の祠のあるチングルマの群落場所に行ってみる。夏の名残の花穂が一面に残っていて殊更秋を感じさせる光景だ。花はいたるところにオヤマリンドウが、少しでも触れると指の先まで染まりそうな鮮やかな青い花を咲かせている。小さなミヤマリンドウも鮮やかだ。見上げると薊坂の急登が迫ってくる気がする。数人の先行パーティーが見えた。私は薊坂には向かわずに、仙ヶ洞下から文珠岳にエスケープ、岩好きの人達は仙ヶ洞を登りたくなるかも知れないが、止めた方がよい。ここに足を踏み入れた人には良いことがないと昔から言われているそうな。迷信かも知れないが、私は結構本気にしている。ちなみに仙ヶ洞とは安産の神様だという。

  
チングルマの花穂  と  オヤマリンドウ


  
ミヤマリンドウ  と  仙ヶ洞


今は以前はなかった立派な標識がここに立っていた。相変わらずの笹藪道だが少しは刈り払いされているような気がした。ふと視線を上げると赤く色付いたナナカマドの実が鈴生りで千畳ヶ原の景色と秋の気配を上手く醸し出している。ここからもう一がんばりで稜線だ。
稜線に上がると千蛇谷を歩く登山者の鈴の音が風に運ばれすぐ近くに聞こえる。久々に間近に見る新山の頂が荒々しく懐かしい。春に遊んだ稲倉下の中島台台地がとても広く感じる。まだまだ下は紅葉には早いようだ。
ここからゆっくり七五三掛まで景色を楽しみながらゆっくり下る。ちょうど昼時だが風が少し強いのでもう少し進む。



文珠岳付近から見下ろす千畳ヶ原と鳥海湖


  
新山と七高山  と  人なつっこい鳥


いつもなら御田ヶ原分岐から鳥海湖へ向かうのだが、時間もあるので久し振りに扇子森まで上がることにする。立派な石畳を登ると数人の登山者が休憩していた。もう山頂まで行って来たのかとの問いに、今日の行程を説明すると、なるほどとうなずきあめ玉を一握り頂いた。こんなにたくさん頂いてもと困惑するが、顔には出さずお礼を言いありがたく頂く。そして仕舞うのも面倒なので一気に頬張ったものだから思いの外難儀した。
扇子森は結構な数の登山者が休んでいた。振り返ると迫力ある本峰を間近に見ることが出来、なかなかの絶景と改めて感心する。
ここに最後に来たのはいつだったか考えるが良く思い出せない。まあそれなりに歳をとったと言うことだ。


  
御田ヶ原から振り返ると迫力ある新山  と  鳥海湖と鍋森


  
稲倉岳  と  昼寝場所からの光景


御浜はそのまま通り過ぎ、鳥海湖の辺まで降り、風もあまり当たらないので傍らのテラス状の岩上で昼食大休止とする。この火口湖に魚はいるのかどうかで某MLで話題沸騰であるが、魚影は見えないようだ。定番の食事でお腹が膨れると約一時間風の音を聴きながらお昼寝タイム、やっぱり山の上は落ち着く。暫し惰眠を貪る。

ここから一気に千畳ヶ原に駆け下る。岩陰のダイモンジソウが日に当たり綺麗だ。去年までは掘れて荒れた道が整備され石畳の立派な道に変わっている。ふと前方に目をやると草原の中にも木道が光って見える。ううむ、これはこれで仕方のないことなんだろうが、複雑な気持ちである。
草原の中、万助分岐、T字分岐と進む、この辺りが鳥海では個人的には一番好きなのだが、もう少しで黄金色に染まる千畳ヶ原を堪能することが出来るのだが少し早い。時折越える沢も昨夜の雨で今の時期にしては水量が豊富だ。仰ぎ見る外輪も気高い。暫く草原で昼寝したい衝動に駆られるが先を急ぐ。


  
鳥海湖付近からの千畳ヶ原、奥のピークが月山森

岩陰にひっそり咲くダイモンジソウ



最後の登り幸治郎沢も珍しく水が流れ落ちている。息を切らし急登を登り切り振り返ると午後の柔らかい日差しに広い草原は霞んでいる。目を閉じると冬に遊んだ時の光景が浮かんできた。そう言えばもうすぐ鳥海も初雪の便りが聞こえてきそうな時期なのだ。純白の千畳ヶ原もまた良い。


  
草原に光る木道  と  千畳ヶ原を振り返る


  
幸治郎沢  と  沢途中からの千畳ヶ原


折角だからとそのまま月山森まで足を延ばす。三ノ俣への道を無意識に捜している自分に気づき一人苦笑する。荒れてはいるがそれらしき道跡が確かにあった。少し進んでみるとハイマツの枝を切った跡も残っている。確かにここだと確信しそのまま戻る。この頂きも私のお気に入り、時間の無いときなどふらっと訪れ景色を眺めながらボケーッとするのだ。千畳ヶ原を一望でき、笙ヶ岳のシルエットも良い。視線を返せば本峰がデンと鎮座する。小一時間も眺めていると大抵の憂鬱はふっ飛んでいく。



月山森山頂から冬に登った天主森(頭が少しだけ見える)


駆け下り、そのまま進むと道は河原宿で合流する。こんな時間では誰もいるはずはない。後は八丁坂を下り登りとは別ルートの横堂方面に一旦下り、左に折れ仮橋を渡ると滝の小屋、工事の人影も無く駐車場にも車は無い。
久々に鳥海をゆっくり歩いた一日だった。

今回のコース略図