【憧れの和賀岳へ】


薬師岳山頂から
左から薬師平、小杉山、小鷲倉、右奥が和賀岳


【日 程】2005年8月28日(日)
【山 域】和賀山塊
【山 名】和賀岳(1440m)
【天 候】曇後晴
【メンバ】単独
【コース】真木林道終点 → 薬師岳 → 小杉山 → 和賀岳 → 往路下山
(概 略)


真木林道駐車場(6:30)---(6:38)甘露水口---(6:56)ブナ台---(7:47)倉方---(8:22)薬師岳---(8:30)薬師平---(8:46)小杉山---(9:05)小鷲倉---(9:35)和賀岳(10:20)---(11:00)小杉山---(11:29)薬師岳(11:36)---(12:00)倉方---(12:36)ブナ台---(12:47)甘露水口---(12:53)駐車場


三時に突然目が覚めた。無意識のうちに体が山を求めているのだろうか、今日は日帰り山行、行き先は寝ぼけた頭で考えつつ、そそくさと準備し、こっそりと出発、途中10台近くの新潟交通の大型バスとすれ違う。前夜は大曲の花火大会、その帰りだろうか、帰ってから新聞で読んだら68万人の見物客だそうな、未だかつてそんな人混みに近寄ろうという気さえ起きなかったので見たことはないが、素晴らしいものなのだろう。大曲に近づくに従い駐車場の看板がひっきりなしに現れ、未だテントを張っている人達が大勢、圧巻は橋の上からの会場近くの河川敷、ゲッ・・・ここは某国の難民キャンプか・・・
その圧倒的なテントの数を前に私には笑うことしかできなかった。普段は人口4万の地方都市、この夜に限っては68万人の見物客が押し寄せる・・・

和賀岳は以前から非常に興味があった山である。日本有数の巨樹の森としても知られ、貴重な動植物が生息しているという。今回はその雰囲気だけでも楽しもうと向かった次第である。
真木林道の駐車場には八王子と宮城ナンバーの二台、この上には駐車スペースがないとの看板、素直に従う。
出発と同時にもう二台到着、甘露水口までは林道歩き、いきなりの急登、虫がうるさい。暫く葛折りの樹林帯の登りが続く、ブナ台辺りからボチボチとブナの木が、そんな特別太い木は見えない。
滝倉沢が最後の水場、冷たい沢水を力水に先を急ぐ。空はどんよりと曇っていて樹林帯は蒸し暑い。突然静寂を破ってキツツキのドラミング、びっくりした。

倉方から上は急登が続き登山道の刈り払いはされていない。水滴の着いた藪を進むとすぐにズボンと靴の中はびしょ濡れとなる。薬師岳までの間に先行者三人をパス。単独の方は、ラジオと熊よけの鈴をガンガン鳴らして歩いていた。何故こんな賑やかな山歩きをしなくてはいけないのだろう。個人の問題かも知れないが、せっかくの静寂を楽しみに来ている人もいるのだからもう少し考えて貰いたいものだ。この人は独り言もすごく、突然奇声を発したりするもんだから気味が悪く折を見て追い抜くと先を急ぐ。

  
薬師平からの小鷲倉 と 山頂直下からの和賀岳

あいにくの天気で先が全然見えない。刈り払いのされていない道はよく見ないとルートがわからない。
夏の花は盛りを過ぎ、アザミの紫色が白く濁るガスの中にひときわ目立つ。誰もいない稜線の草をかき分け先を急ぐ、それにしても静かだ。時折雷鳴のような轟音が響くが、多分航空機の音だろう。東北の山はこの静寂が良い。薬師岳より先はアップダウンもそれほど無く、天気が良ければゆっくりとした高原の散歩が楽しめる雰囲気だ。
視界のない中、殆ど休まず来たらヒョッコリ山頂に到着した。標高差約千メートルをおよそ三時間、ここでお腹が空いたので定番のカップ麺を(本当ワンパターンだなあ)ゆっくり食す。

暫くするとだんだん視界が開け始め、名も知らぬ峰々が姿を現す。高下岳は何となくわかったが、その他はよくわからない。どっしりとした和賀山塊、静寂の一時、一瞬田沢湖が微かに見えた。深い原始の森は多くの命の気配に満ち溢れ、そこに身を置くことの至福を感じる一時である。良い山だ、時間を忘れてしまいそうだ。

山頂は360度視界を遮るものがなく抜群の展望だ。しかしこの日は遠くの展望は得られなかった。ガイドブックには岩手山や早池峰山等も見えると書いてあったが残念である。
白く霞んだ緑の秋田平野の広大な展望が何故か妙に印象に残った。
一人展望を楽しんでいると後続が到着、東京からのご夫婦で300名山を目指してるとのこと、記念写真のシャッターを押して山頂を譲り下山開始、少しのんびりしすぎた。

  
広々とした山頂の様子 と 山頂から高下口(横岳)方面

お日様の力とは偉大なもので、ほんの少しの陽差しで往路あれほど濡れていた藪が殆ど乾いていた。視界も良くなり時折振り返りながら写真を撮り撮りゆっくり下る。小杉山では5人と鉢合わせ、その後数人と行き交う。
稜線の中程までブナの豊穣な森が伸び、その先は殆どやわらかな緑の笹原、熊が昼寝でもしていないかと目をこらすが、ここの熊はシャイなのか姿が見えない。天気がよいと緑が映え山がとても優しく感じる。
薬師岳山頂からの展望が一番、最近こんな景色に弱い、もうどっしり腰を下ろしてここで一晩過ごしたい気になるが気を取り直して下山開始、後は下るだけだ。

ソールの減った靴はとにかく滑る。難儀しながらゆっくりゆっくり下る。そろそろ替え時だろうが、何故かこの靴に妙な愛着があって十何年履き続けている。ミッドソールが一度完全に剥がれたが素人細工の接着でまだもっている。不思議な靴だなあ・・・

  
白く霞む秋田平野 と 綺麗な蝶