【中年登山隊、朝日で疲労宴】
                     higurashi 小百合ちゃんに身も心も捧ぐ・・・


古寺山からの主脈パノラマ

【日 程】2005年6月25(土)〜 26日(日)
【山 域】朝日連峰
【山 名】大朝日岳(1870m)
【天 候】晴
【メンバ】3人
【コース】6/25 古寺鉱泉 → 小朝日岳 → 大朝日岳(大朝日小屋泊)
(概 略) 6/26 大朝日小屋 → 龍門小屋 → 日暮沢下山

6/25古寺鉱泉(6:30)---(9:35)古寺山(9:58)---(10:57)小朝日岳---(12:30)銀玉水---(13:36)大朝日小屋
6/26大朝日小屋(6:39)---(7:43)西朝日岳---(8:50)龍門小屋(9:50)---(10:37)ユウフン山---(11:06)清田岩山---(13:23)日暮沢小屋



中年登山隊久々の再会は月山湖の駐車場、今回は車を日暮沢に一台デポし、古寺から入山するというA.TOM隊長の完璧な計画の元、大朝日経由龍門小屋泊にてA.TOM氏、中年登山隊隊長就任記念披露宴を行うべくhigurashiさんをはるばる北上からご招待申し上げた。会費は各自呑む分と食べる分持参という格安な披露宴である。

毎年この時期に朝日に入っているが、晴れたためしがないと言ったら、私は晴れ男だよとのA.TOM隊長のお言葉、そう、本当にこの日はピーカンである。
中年登山隊はお肌の曲がり角をとうに過ぎたので、皆日焼け止めクリームを塗るのに暫し勤しむ(そんなことをしても無駄なガングロ--いや通り越して緑か?--な隊員も一人おりますが・・・)

A.TOM隊長にとっては朝日は庭みたいなもの、higurashiさんは朝日が初めての経験、ということは大朝日は外せないだろうし、日暮れの急登を初めての人に登らせるのは酷だということで、一般的な古寺からのルートにしたという、とてもとても優しい隊長の計画である。
大朝日経由で、そのまま龍門小屋まで行くというのは少し無理があるのかな、という一抹の不安は心の片隅にあったのも事実であるが・・・
そんな心配をよそに中年登山隊は順調に古寺山まで登りついた。

  
左、古寺からの樹林帯を登る隊員     右、タムシバと古寺山

久々に見る連峰はやっぱり素晴らしくワクワクする。残雪をたっぷり残した山並みは青空にとても良く映え、流した汗が心地良い。ここで暫しの休憩。
higurashiさんは、ここのヒメサユリをとても楽しみにしていらしたのに、ここではまだ蕾、しきりに残念がっていた。代わりに、シラネアオイやハクサンチドリが、どうぞ私を見てくださいと言わんばかりに、とても綺麗に咲き誇っている。やはり大雪の影響で花はだいぶ遅れている様子、しかし、古寺山を出発し暫く歩くと開いたばかりのヒメサユリを発見、higurashiさんは初めて目にする小百合ちゃんにぞっこんの様子、歓喜の雄叫びの中カメラを取り出すとその場から全く動く気配が無い。隊長と二人、半分あきれ顔でその生態を観察する。

どうも彼は美人にとことん貢ぐタイプ、higurashiさん小百合ちゃんにぞっこんで、身も心も捧げてメロメロである。やっと写真を撮り終えたと思ったら、さあ帰ろうなんて言い出す始末である。

この後、彼は小百合ちゃんに生気をすっかり吸い取られ、ペースががくんと落ちた。もう思い残すことはないのであろう・・・(合掌)

  
ヒメサユリと彼女にぞっこんのhigurashiさん

もう帰りたいと嘆く隊員を必死でなだめすかし中年登山隊は銀玉水を目指す。雲一つない炎天下、喉が渇き一部の隊員から背負ったビールを消化しようと言う意見が上がるも、隊長に即却下された。このままでは本日中に龍門小屋まで辿り着くのは困難と判断した隊長は、渋々大朝日小屋泊に予定を変更した。この時点でやっと銀玉水に辿り着いた我々は、銘水を喉を鳴らして飲み干すと、先が見えたのかやっと元気を少し取り戻した。

雪渓はまだまだスキーが出来そうなほど綺麗に残っており、隊員は隊長命令でアイゼンを装着し滑落に備えた。
隊長の本音は隊員の安全よりザックの中身であることは容易に想像できたが、隊長の顔は真剣なので間違ってもそんなことは言えないのだ。

  
黙々と先を急ぐ隊長と、何故か余裕のhigurashiさん

大朝日山頂までビールはお預けの命令が出ていたので、中年登山隊は我先にと必死で雪渓を登り切った。

最後の雪渓で冷却用の雪をビニール袋に拾うやいな、大朝日の小屋へとなだれ込み、宴会用の特等席を確保すると同時に、山頂めがけてゼエゼエ息を切らして突進する馬鹿な様子を見て笑っていたのは誰だろう・・・(後で笑われた)

           山頂にて
         銀玉水の雪渓を登る隊員

大朝日岳山頂に到着するやいなビールを奪い取り"プシュッ”とやろうとしたら後から「こら待て〜!」の大絶叫、びっくりして振り返ると、隊員-2が、自分のビールまで呑まれてしまうのを恐れたのか、最近聞いたことのない断末魔の大絶叫であった。
そんな理不尽な事は誰も思っていないのだろうが、隊長と隊員-1の行動は、隊員-2の目から見てもそれほど鬼気迫るものがあったのだろう。
中年登山隊はビールを前にすると、理性や思いやりなんて概念は、朝日の谷底に葬り去る集団のようである。


気を取り直して三人で乾杯・・・

「ゴクゴクゴク・・・うめーっ!! ああ、生きてて良かったあ〜!!!」

全員見事に喉を鳴らして一気に飲む様は、アサヒのCMでテレビ放映されそうな、それはそれは見事なものであった。
後続の登山者達がポカンと口を開け、圧倒されて、いや羨ましげに呆れて様子を見ていた。

山頂からの展望もまずまずで、初めてのhigurashiさんは感極まってうっすらと涙を浮かべている。
私も久々の山頂の展望である。360度のパノラマをクルクルと何回も回って見ていたら目が、いや酔いが廻ってきた。
隊長のこだわり「ビールを呑むなら、朝日ではアサヒだけ(岳)」 に、何となく深い意味があるような気がしてきたのは私だけではあるまい。

今日の大朝日小屋は大盛況、隊長が管理人のOさんに冷たいビールを差し入れたので(ワイロではありません)機嫌がすこぶる宜しく、特等席で隊長就任疲労宴を楽しむことが出来た。
隊員の一人は、日焼けた顔がビールでさらに赤みを増し、何とも表現しようのない不思議な色に変色している。カ・カメレオンか・・・
おまけに死ぬ思いで担ぎ上げた葛巻ワインを、東京からの美女連に気前よく差し上げ、名刺まで手渡している(危ない、壊れかけている・・・)
中年登山隊はやっぱり美女とお世辞にめっぽう弱い。
その後楽しい疲労宴は延々と続き、いつ寝たのか記憶は定かでない。




明けて26日は昨日とは打って変わって強風濃霧の天気、小屋の熱気が暑くて目が覚めた。
外に張った某山岳会のテントが今にも飛びそうにゆらゆら揺れている。今日は昨日のつけが残って少し長丁場、6時半に龍門小屋目指して出発する。あいにくの展望だが花を愛でながら進む。
西朝日で団体さんと行き交う。稜線のヒナウスユキソウに感動し、もう一度龍門小屋に戻りたいと言っていた。

私の本当の目的はこれにあるのだ。ここからのウスユキソウの群落は本当に素晴らしい。花の時期もちょうど良く本当にベストのタイミングだった。
私の感覚だが、ちょうど良いウスユキソウの見頃は真っ白なイメージだ。初めてここを訪れた時もこんなイメージだった。それを求めて私の朝日通いが始まったと言っても過言ではないのだ。その時の光景にやっと十数年振りに巡り会えた瞬間である。心の中でガッツポーズをするが言葉や態度には表さず淡々と歩く。写真ではなく、しっかりと自分の目と心に焼き付ける。これが男の美学なのだ・・・

しかし、一番美味しいところでたまらずカメラを取り出してしまった。そして隊長とhigurashiさんにデレーッとした顔をしっかり見られてしまった。私もまた美女には弱いのだ。もし一人だったら半日そこを動かなかったことだろう・・・


  
ツガザクラ と ヒナウスユキソウ

通い慣れた龍門小屋で小休止、管理人のEさんが冷たいビールでもてなしてくれた。大感謝である。もうお帰りになられたのかと心配していたのだが、元気そうなお顔を拝見でき嬉しかった。彼の笑顔は朝日の魅力の一つでもあると思う。

天気の回復は望めそうもないので下山開始、ユウフン山で休憩後ふと後を振り返ると、Eさんが音もなく追いついていた。道を譲るとこれまた風のようにスウッと見えなくなった。何とも不思議な人だ。
連峰にはまるでラピュタのように雲がまとわりついており、雄大な姿を隠し続けている。どうも今日はご機嫌斜めらしい。また来るよと心の中で声をかける。

何とか無事下り終え最後は大井沢温泉で共に汗を流す。隊長は日焼けで腕を湯船に入れられず嘆いていた。誰かの結婚疲労宴、沖縄で大変だったという言い訳を認めてくれる寛大な会社が羨ましい、それとも・・・
A.TOM隊長の優しい心遣いとサポート、higurashiさんの楽しい宴会芸に感謝である。