【三ノ俣から天主森 ※敗退】
                           (山スキー)


左ピーク天主森、右ピーク月山森


【日 程】2005年3月6日(日)
【山 域】鳥海山
【山 名】天主森(1404m)
【天 候】晴のち小雪
【メンバ】単独
【コース】さんゆう→鈴木小屋→天主森途中→鈴木小屋→さんゆう
(概 略)


さんゆう(8:13)---鈴木小屋(9:36)---(11:15)天主森直下(11:25)---(12:00)鈴木小屋(13:10)---(13:32)さんゆう


2月中旬以降は諸事情により全く身動きがとれなくて、東北の山MLのオフミも泣く泣くキャンセルしてしまった。今日はオフミで楽しみにしていた三ノ俣コースを偵察がてら登ってみることにした。

予報では好天、けれど山頂方面は見えない。誰もいないスキー場をシール登行、先行しているテレマーカーのトレースを追う。前日も好天だったので踏み跡だらけでルートを見失う心配はない。

造林小屋のあたりで目指す天主森が見えてきた。天気は良く青空に景色が映える。久々のスキー登行は辛い。全くと言っていいほど一ヶ月体を動かしていないのだ。早々に大量の汗をかきアウターを脱ぎ薄手のフリース一枚になる。腕まくりし手袋も脱ぐが汗は止めどなく出てくる。



出だしは上々の天気目指す天主森もはっきり見える。

下部の雪は、スキー操作なんて出来そうもないほど固く凍っていて、下りが心配だ。積雪量は十分あるのだろうがそれでもブッシュが邪魔そうである。コースは切り通しを進めばよいので鈴木小屋までは迷う心配はない。途中賑やかなワカンのパーティーに道を譲って貰い快調に高度を稼ぐ。ラッセル無しの登行はやっぱり楽だ。

鈴木小屋の辺で先行のテレマーカー氏に追いつきコースを教えて貰う。切り通しの終点まで行ったら後は尾根伝いに進むと月山森が見えてくるとのこと。ここからは誰の踏み跡もない新雪を進む。新雪の下は案外固まっているのでそんなに沈むことなく進めた。それにしても樹林帯の登りは楽しいが、下りはブナの密度が濃く今回も難儀しそうだ。


  
鈴木小屋手前の切り通しと、1階部分が完全に埋もれた鈴木小屋

ほどなく森林限界を過ぎ純白の雪原が果てしなく続く、この辺が米沢頭か?
目指す天主森はすぐそこに見えるのだが、風邪気味の体調には辛い。それにしても月山森は遠いなあ・・・見上げるとため息が出てくる。
ここまで上がるとさすがに寒くてアウターと手袋を着ける。後頭がみょうに痛いと思って手をやると、帽子の縁回りの汗が凍っていて氷の鉢巻きをしたような感じ、耳も冷たくなってきたのですぐにフードを被る。
この辺は風の通り道らしく雪面はクラストしている。何とかシールが効く限界か。

初めてのコース、目の前に格好の良い天主森のピークが見える、勢い込んでまっすぐ急斜面に取り付く。結果的に見ればこれが敗退の原因、後で地形図をよく見たら尾根伝いに登った方が楽にピークに立てるようだ。
高度が上がるにつれ雪面が固くなってきた。薄く降り積もった新雪の下は完全な氷である。斜登行していると踏んだ新雪と一緒に滑っていく。さっきまで青空だった天候も一気に吹雪模様、一瞬ホワイトアウト何も見えない。自分が登っているのか下っているのかわからない感覚を初めて体験した。何となく時空が90度傾いたような感覚と言えばよいのか、人間の感覚とは面白いものだ。

もう本当に天主森のピークに手が届きそうなところで登行意欲がなくなった。目印にしていた黒い岩の上でスキーを脱ぎシールを外す。今日はこれまで、どっしり腰を落としておにぎり一個を食べながら休憩する。さっき道を譲って貰った人達が見えた。皆上を目指しているようだ。


  
切り通し最上部からのコース全容と庄内平野          森林限界上からの天主森ピークこの後天候が急変する。

いよいよ滑降、視界が悪く回りが真っ白だとおかしな感覚だ。雪面もクラストバーンオンリーならまだ良いが、吹溜まった新雪が妙なブレーキになり慎重に下らないと転倒しそうだ。(実際転倒した)それでもなかなか美味しい斜面である。先程のワカンパーティーと会ったところで止まり少し話をする。皆さんアイゼン持参で月山森まで行かれる様子、天主森のピークを踏んでこなかったことを言ったらしきりに残念がられていた。

まあ、雪山素人には無理は禁物である。以前、大場満郎さんが言っておられた。頑張ったらだめだと、彼曰く、こういう遊びは頑張って無理したら、必ずつけが回ってくるものだそうです。妙な説得力があったので以後私は遊びでは無理に頑張らないことにしている。

覚悟の樹林帯の下りでは大難儀し、切り通しの上端から鈴木小屋までは快感のパウダー、これだけで大満足じゃ・・・
小屋の二階の窓から入りお湯を沸かし昼食休憩、酒田からのお二人が後から加わり暫し談笑、彼等は小屋から切り通し上端までを三本滑って今日の予定は終了とのこと。様々な楽しみ方を山は受け入れてくれる。
それにしてもここは地元の人ばかりで庄内弁オンリー、東京弁が聞こえないのが妙に嬉しく落ち着く一日であった。
また天気の良いときに今度は月山森まで行ってみたい。



どこを見ても真っ白な中を滑り降りる。