【初めての宮様コース 鳥海山】
                    (山スキーでの山行)


宮様コース第4斜面と鳥海外輪

【日 程】2005年1月23日(日)
【山 域】鳥海山
【山 名】滝の小屋(1280m)
【天 候】晴
【メンバ】単独
【コース】大台野牧場→滝の小屋(宮様コース)往復
(概 略)


大台野牧場(8:45)---宮様コース入口(10:39)---(12:40)滝の小屋(13:25)---(14:30)大台野牧場


今年初の鳥海山湯の台コース、昨日テストした山スキーにシールを貼って大台野牧場を出発、積雪は1m程か。
昨日降ったと思われる新雪がフカフカしてスキーでは歩き辛い。早々に汗ばむ。天気は曇天、時々冷たい風に乗って粉雪が舞う程度、今の時期にしては良い方だろう。山頂方面は五合目から上は雲に隠れている。

夏道だったら車で一気に上の駐車場まで上がれるのだが、大台野牧場の丁字路(435m)からただひたすら登る。今日は途中までしか行ったことのない宮様コースを使い滝の小屋まで、調子が良ければもう少し上まで狙っての出発。しかし、寝坊して出発が遅すぎる・・・

雪に埋もれた車道を所々ショートカットしておよそ2時間、やっとの事で宮様コース入口(785m)ここから混み入ったブナ林の中を登る。のっけから急登だ。
キックターンと斜登行を繰り返し大汗をかきながらペンキマークや赤布を見落とさないように慎重にルートを選ぶ。

このコース昔々、故高松宮殿下が鳥海に山スキーにお出でになるため、わざわざブナ林を伐採して造ったと聞いているが、月日が経ちブナも背丈が伸びコース上に邪魔になるほど育ってきた。何年か前に歩くスキーで、先行者のトレース泥棒をして、第4斜面を望む辺りまで一人で遊びに来たことがあるが、遊びの山行であった。

それともう一つ、小生、冬山はやったことがなく本格的なスキー登山は今回初めての冬山素人である。スキーも若かりし頃にゲレンデでチャラチャラ滑っていたに過ぎない。無謀だとの声も聞こえてきそうだが、人生死ぬまで挑戦をモットーにしている身(嘘である)ここは一つ頑張ってみたいと思うのであった。もっとも、この記録を読んで、素人ができるならと、本当の素人が真似をして困ったことになっても、当方与り知らぬ事である。山では自己責任が原則也。

まあ、登る分にはルートを外して迷子にならない限り、特別危険はないと思われるが、それにしても山スキーというのは足かせみたいにずっしりと重いものである。日頃の不摂生がもろに露呈する。もし秋田の師匠あたりと一緒なら足手まといになること確実だろう。ここは一人こっそりと今後練習したい。

宮様コース第4斜面を過ぎると右手の沢を眺めながら伐採跡のないブナ林の登りが続く。所々の木立に赤ペンキマークがありルートを確認できる。森林限界の辺りまで来ると、夏道の駐車場にある「すごく立派なトイレ」の建物がすぐ近くに望まれる。向こうに行くには一沢越えねばならない。
もうこの辺で精根尽き果て一歩踏み出すのにも掛け声が必要になる。
一登りで少し視界が開ける。ここから上は文字通り白一色、純白の雪原が美しい別世界だ。

ここで時間はお昼を過ぎ戻ろうかと迷う。見上げると天気は回復傾向か外輪が時たま顔を出す。少し上にこんもりと丸いピークが見えた。せめてあそこまで行こうと10歩進んでは休みを繰り返し何とか到着、もう限界である。中年登山隊のメンバーに笑われそうだが、いたしかたない。

相当風が強い場所なのだろう。積もった雪が風に飛んで笹藪の葉がまだ顔を出している。雪はウインドクラストしているのか固く、所々アイスバーン状態、素人はこの辺が限界か・・・

それにしても滝の小屋はどこだろうと探すが一向に見えない。幸い斜度も緩くなったので夏の記憶を頼りに辺りを見回し少し左(西側か)に進路を変え暫く進むとやっと見えてきた。本当に本当にほっとした瞬間である。

幸い入口にも雪はなく、中に入りお湯を沸かし昼食とした。お湯が沸くまでシールを剥がしたり小屋の中を見て回った。二階の棚にはあちこちのパーティーの物と思われるデポジットの箱がびっしり並んでいた。そうか、この手があったのだ。

近くに住む者の特権として大いに参考にしよう。何たって夏道だったら車から15分で来れるのだ。それにしても小屋の中は寒い。試しに備え付けの寒暖計を覗くと氷点下6.5℃、まるで冷凍庫の中にいるようなものではないか。本当にこんなところに泊まれるんだろうか。小屋の中で凍死なんて洒落にもならない。くわばらくわばら。

時間は予定を大幅にオーバーしていたので大急ぎでカップヌードルをかき込む、満腹になると不思議なもので少し暖かくなったような気がした。昼寝でもと思ったが先を急ごう。
小屋を出て急いでスキーを着け、少し進んで振り返ると外輪が見えた。

・・・絶句である。
何と神々しく美しいのであろう。見慣れた無雪期の姿とは、これが同じ山かと思うくらい違う。純白の衣をまとったその気高い姿は、ここまで登って来た者でなければその美しさを語れまい。呆然と見入る。本当にただ呆然と・・・
また来よう。きっとまた、固い決意を胸に下山開始。

さて問題が一つ、私は新雪の滑走がすこぶる苦手なのである。何せ二昔前のチャラチャラスキーヤーだ。ピステンで綺麗に均した斜面を得意とする。
それでも森林限界から上はクラストしたバーン、結構スピードが出るが障害物もないので何とか下れた。

あれっ、人が・・・急停止し少し話す。酒田からの単独の男性でスノーシューを履き、ザックにはスノーボードがくくりつけてある。尊敬に値する根性である。私のトレースで随分楽をしたとおっしゃられた。初めてこのコースに来たと言ったら、案外しっかりしたトレースでしたよとお褒めの言葉を頂いた。彼はもう少し上まで頑張るとのこと。ではでは、とまた滑走開始。

はっきり言って樹林帯の下りはある程度予想していたが辛い。小枝をストックで払い、時に大木に抱きついて制動をかけ、深い新雪に転倒して起きあがるのにそれこそ七転八倒、最後は斜滑降、キックターンの繰り返しでやっとのこと車道に出た。ここからは簡単に下れるかというと、さにあらず。斜度が緩くてスキーが止まるのだ。ストックでこぎたくても雪が深く力が入らない。下りは地獄と秋田の師匠が言っていた意味が、ようく理解できた。

鳥海山荘の温泉を目の前にぶら下げ、くじけそうになる気持ちを騙し騙し、車に着いたときには本当に精根尽き果てた。太股の筋肉がピクピクと痙攣しそうであった。

でもまた来るだろうなあ・・・

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